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    Tsuruki Jun<鶴木遵>の原風景 《絶対零度》

    鶴木遵の本、新しい挑戦、趣味である競馬、将棋の駒、男の手料理、めだかやミジンコ飼育、犬猫のよもやま話、など四季折々に感じたことを発信していきます。

    2017 日本ダービー制覇・東京芝2400m~強力な逃げ馬不在のスローペース 

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    何とか私自身の出走体制を整えて、東京競馬場には11時過ぎに着いた。
    府中本町駅構内から、スタンド32番柱近くの受付まで、場内外はやはりダービーの日だからか混み合っていて、人混みをさばくのにもストレスを感じるほどだった。

    何とか受付を済ませて、ダービールームへ。14号室は「ワンアンドオンリー」室だった。そう言えば、今日の最終レースにワンアンドオンリーご本尊は、久々に鞍上に横山典弘を得て出走予定である。

    喫煙室でひと呼吸整えてから部屋に入ると、いつもの知った顔が勤勉にもすでに専門紙を広げていた。10Rのダービーまではおとなしくしていようと決めていたので、挨拶だけ交わして私はゆっくりとお茶を飲みながらテーブル席に座っていた。

    そう決めたのも時間をかけて、ダービーの流れと展開を考えようとしていたからだった。
    狙いの推理は、決まっていたが(皐月賞のときに記した馬たちだ)、最終追い切りを見てからも、皐月賞を速いペースで逃げたアダムバローズのような存在が、どう考えても見当たらず、だとすると最近流行の緩い流れから、ホームストレッチでのヨーイドン!という単調な勝負になってしまうとしか思えなかったのだ。
    とすれば、中団より後方のポジションの馬たちには勝利の出番はないということになる。

    じっとそのときを待つ間に、何度も出走馬表を眺めたが、良馬場のダービーは、皐月賞とはまるで違うレースになるだろうとしか考えつかなかった。

    8R。1000万条件(2勝馬)の特別戦青嵐賞。ダービーと同じ芝2400mである。前半5F61秒で流れ、決着タイムは2分23秒8。2勝馬の特別戦としては、それなりのタイムが計時された。となれば、3歳の頂点のG1戦なら、通常ならこの決着タイムを下回ることはないだろう。しかし逃げ馬が見当たらないのは確かだった。

    もうひとつ予感を得たことがある。レースレコードが生まれた皐月賞の上位馬は、眼に見えない疲労消耗をしているのではないかということだった。走り過ぎた後には、生き物である以上疲労によるコンディション低下は避けられない。化け物なら別だが・・・。2002年1分58秒5という当時驚異的なレースレコードで皐月賞を勝ったノーリーズン(ドイル騎乗)が、ダービーでタニノギムレットに8着に惨敗した記憶が鮮やかに甦ってもきた。たぶん今年の皐月賞1~3着馬は負けるのではないかと推理した。

    私の狙い馬は、皐月賞のときと同様に、レイデオロ、スワーブリチャードあとはアドミラブルにサトノアーサーだった。でもスローに流れたら、アドミラブルとサトノアーサーには明らかに不利となるだろう。何とか体調を維持してアルアインが好位から強気に攻め上げたら、締った馬体には魅力があるだけに気が引かれるが、皐月賞を勝ったばかりの若い松山弘平が、ダービー制覇に気合を入れるしたたかなベテラン騎手を凌いで強気な勝負根性を見せつけられるかというと、どうもそうは思えなかった。

    パドックを見終えたとき、レイデオロとスワーブリチャードの気配に何となく威圧感を覚えなかった私は、すぐにゴンドラ席に行き返し馬に注目しようとした。
    本馬場入場して、大歓声がうごめく中、ルメールがレイデオロと強めのギャロップに入ったとき、その発する気配に大丈夫だと安心した。スワーブリチャードも四位洋文の誘導に落ち着いたギャロップを見せた。四位洋文も勝負に出るなと感じた。

    そのとき隣の13号室にいたノースヒルズのオーナー前田幸治とひょんなきっかけから会話をした。ゴンドラ席の前田幸治は私の隣のテーブルに座っていたのだ。
    ついでだからと私は聞いてしまった。
    「今日のカエデはどうでしょうか?」
    「いや、今日はクリンチャーでしょう。何といっても前に行ける馬だから」
    そうか、それがオーナーサイドの見極めなのかと、私は知ることができた。

    スタート時間が迫ってくる。急いでマークシートに記入する。レイデオロからスワーブリチャードを本線にして、他に馬連3点。ついでにダービーだからと3連単。1,2着馬にレイデオロとスワーブリチャードを入れて、3着に、アドミラブルとサトノアーサーに、これも何かの縁とちょっと邪な気持ちでクリンチャーを入れてみた。(いえ、まだ人間ができていないもので・・・ハイ)

    スタートして、前半5F地点まで、レースを作ったのは横山典弘マイスタイルだった。それも明らかなスローペースで。この大胆不敵なしたたかさが横山典弘の技量である。

    結局、前半5F63秒2。5F目には何と13秒台にペースは落ちていた。
    横山典弘の攪乱戦法に、好位2,3番手辺りの騎手たちは手も足も出なかったが、ルメールは違った。スローのタメ殺しになっては敵わないとばかりに、2コーナーを廻ってバックストレッチに入るや否や中団後方から一気に2番手に進出。この動きを大画面で知った大観衆からどよめきが沸き起こった。

    通常なら、こんな騎乗で活路は開けず結局馬群に沈むセオリーがあるのだが、何せ今日横山典弘が作ったペースは、考えられないほどのスローな良馬場での5F63秒2。

    それをやすやすと許してしまった好位勢の不甲斐無さとは対照的に、このルメールの攻撃的な騎乗こそ、自信に溢れた好騎乗だった。
    このとき四位洋文スワーブリチャードは、好位のインでじっと待機策を保った。動いたのは4コーナーを廻る地点だった。まるで2007年64年振りに牝馬のダービー制覇を決めたウォッカの騎乗を再来させるかのように、インから外に出た。

    すでにルメール・レイデオロは先頭に立つ勢いだ。最内で今日のダービーを攪乱した横山典弘マイスタイルが粘っている。

    ここからの3Fは、 11秒5、10秒9、11秒4。熾烈な攻防が続いた。

    レイデオロは迫るスワーブリチャードに3/4馬身差を保ってゴールイン。牡馬クラシックの勝利がなかった調教師藤沢和雄にダービー制覇の栄誉をプレゼントした。

    渾身のここ一発騎乗に徹した四位洋文スワーブリチャードは2着。
    ゴール寸前に外から追い上げたデムーロ・アドミラブルが3着。粘ったマイスタイルが4着。好位からスローでも強気に攻められなかったアルアインは5着に終わった。中団からレースをしたサトノアーサーは見せ場もない10着惨敗だった。

    しかし決着タイムは、良馬場で2分26秒9。オークスのソウルスターリングよりも2秒8も遅い決着が、本当の意味でその真価を試されるのはこれからのレイデオロの活躍にかかっている。かつてダービーより早い決着タイムでオークスを制したのは、かの名牝ジェンティルドンナだった。改めてソウルスターリングにも着目である。

    目黒記念を終えて、府中に向かいいつもの宴。
    ここしばらく体調を崩していて久し振りに競馬場に姿を現した作家古井由吉に、国民を蹂躙し続ける現政権を許し続ける「民衆の狂気」を新作で描いてくださいとお願いしたり、同席した文春と新潮の編集者に、中吊り広告の問題を煽るようにからかったり、ダービーの反省や悔しさを酒の酔いに任せて愚痴ったりして、楽しく過ごした。

    実は、今日の最終12R。ほとんど検討もしていなかった目黒記念で調子に乗って穴狙い。せっかくの嬉しいダービー制覇のプラス分の半分を失くしてしまっていたのだが、それでもダービー的中の満足感は大きく、酒の酔いに脚をふらつかせながらも心地好く家路についたのだった・・・。
                         
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    category: 競馬

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    2017 オ-クス・東京芝2400m~やっぱり強かった 

    DSCN2462 - コピー(絵:ノグチアキラ)

    5月20日土曜。午前中に金魚の水替えをして、ひと汗かいたところで関西風の薄口醤油味のきつね蕎麦を作って楽しみ、2時過ぎからは京都の重賞平安Sを見た。

    いろんなことをしながらも、さて明日のオークスは?という命題を頭の中で巡らせていたから、平安Sで体力を消耗するのは避けようと、直感で閃いた枠連2-5-8の3点ボックスでいいかと決めて、GCのTV画面を眺めていたら、5枠川田グレイトパールと2枠武豊クリソライトで決まり、枠連でも15倍の配当でひと安心。4歳牡馬グレイトパールはダート界の新星とも言える走りを見せてくれた。

    さて、この間私は何度もオークスの出馬表を見続けていたのである。
    ここ数戦のG1戦を見ていると、はっきりとした主張を持つ逃げ馬がいるかいないかで、レースの様相は極端に変わっていた。相応の力を持つ逃げ馬がいればレースは流れるが、逃げ馬不在の場合にはスローペースから残り4Fのヨーイドンのレースになっている。

    では、このオークスでどの馬が逃げて流れを作るのか?と考えると、どう考えても判らないのだ。好位を守りたい馬は多くいるが、明確な逃げ馬がいない。
    ここ一発の攪乱戦法を狙って先頭に立つ馬が現れるだろうが、しかしペースは上がらないはずだ。結局、先行馬群がひと固まりになって4コーナーを廻り、そこからは早めの直線勝負になるだろう。折り合って、ヨーイドンと瞬発力を発揮する馬が勝ち負けの勝負をするはずだ。たぶん中団より後ろのポジションの馬たちには、勝ち抜くチャンスはない。

    このように考えると、折り合いに心配がなく、鋭い末脚を発揮するルメール・ソウルスターリングが、明日東京の良馬場で桜花賞のような敗戦(3着)を再び演ずるとは思えなかった。

    桜花賞は明らかに馬場の悪いコンディションだった。おそらくここでソウルスターリングに勝ち負けを挑んだ馬たちは、何らかの疲労残りもあるだろう。ベストの状態が桜花賞だったとすれば、その体調のベクトルは下さがりになっていても不思議はない。
    同時に、桜花賞を目標にして、ここまでマイル戦以下の距離を使ってきた馬も推理から除外してもいいだろう。3歳牝馬の東京の2400mという距離の克服は、その場しのぎではできない壁があるはずだ。

    となれば、今年の2着候補は、桜花賞組ではない別路線から、距離適性のあるはっきりとした末脚発揮の魅力を持つ馬を選べはいいはずだ。そんな馬なら、ソウルスターリングに追いすがれる可能性が高い・・・。

    土曜日に、そう結論付けた私は、それからは迷わなかった。

    ゲートが開いて、逃げたのが戸崎圭太フローレスマジック。2番手に四位洋文ミスパンテール。通用するかしないかは別にして、このポジション取りは騎手の意志に裏付けられた一発勝負だったろう。

    結局、前半5Fは61秒7のスローペースとなった。
    3コーナーを廻って残り4Fの攻防が始まる。11秒6、11秒3、11秒2、11秒6。有無をも言わさない究極のヨーイドンの勝負が繰り広げられた。

    それからのことは、敢えて私が記すこともないだろう。好位から抜け出したソウルスターリングの独壇場だった。辛うじて追いすがったのは、和田竜二モズカッチャン。さらに2馬身半後ろで3着にようやく届いたのは、後方から追い上げたデムーロ・アドマイヤミヤビ
    だった。

    桜花賞の好走組は振るわず、戸崎や四位の一発勝負も花開かず、昨年のチェッキーノと同様にフローラSの勝ち馬モズカッチャンが2着を確保して、2017オークスは幕を閉じた。

    ルメールは、ソウルスターリングの母スタセリタでフランスオークスを勝ち、その仔ソウルスターリングで極東日本のオークスをも手中に収めた。走破タイムは2分24秒1。この時計は、かの名牝ジェンティルドンナの2分23秒6に次ぐオークス歴代2位の記録だった。

    とにもかくにも、ここ数戦のG1戦で、推理の感性を狂わせがちだった私自身は、何とか推理の感覚を取り戻せたような気分で、ほんの少しだけ安心できたような気がする。

    強い馬が強さを誇って勝ち抜く競馬に美しさを見出そうとするのは、おそらく私だけではないだろう。
    その美しさこそ、見知らぬあなたとこんな私を結ぶ同時代の共有感覚であると信じているのだが、果たして・・・。

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    category: 競馬

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    祝7000勝~大井・騎手的場文男 

    DSCN2459.jpg(絵:ノグチアキラ)

    昨日17日、大井の60歳還暦騎手的場文男が、川崎の重賞<川崎マイラーズ>を勝利し、障害通算7000勝を達成したというニュースが流れた。
    1973年のデビューから45年目、およそ半世紀を費やして積み重ねた記録である。
    ちなみにJRA騎手武豊は、1987年のデビューから31年目となる現在(5月14日まで)のJRA通算勝利数は3893勝だ。週2日のJRA開催と比べて、騎乗機会が多い南関東公営であったとしても、生涯かけての7000勝の価値は重過ぎるほど重い。

    大井では7不思議の一つに、まだ的場文男が<東京ダービー>を勝っていないことがあるという。2着は9回もあるのだが、7000勝騎手が大井のダービーを何故か勝ってはいないのだという。勝てるだけの馬、確勝と噂された馬に騎乗するチャンスは2着のとき以外にもあったのだが、ダービーまでに故障などを発症して出走もかなわなかったのである。でも、生涯で見果てぬものがあるという飢餓感が、的場文男の騎手人生を延ばす原動力となったと言えなくもないのではないか?

    私自身が、的場文男を最初に身近に感じたのは、1993年だった。
    秋、中山オールカマー。絞りに絞って、私は、逃げる中舘英二ツィンターボから的場文男が乗るハシルショウグンへの1点勝負に賭けたのである。
    このとき3/4馬身差の3着が単勝1.8倍の1番人気的場均ライスシャワー、3着が柴田政人ホワイトストーン、5着が角田晃一シスタートウショウ・・・。今から思っても強いメンバーが揃っていて、迷ったなら推理が迷路にはまる様相で、ここは負けても納得とファンの心意気を保つしかなかったのだ。
    直線、5馬身ほどの差をつけて高速の逃亡を図るツィンターボをめがけて、的場文男はハシルショウグンヲを追った。中央のG1馬相手に怯まなかった。そして2着を確保してくれた。確か、この2頭の組み合わせは50倍を超えていたという記憶がある。
    的場文男のしぶとい騎乗は鮮烈に私の中に刻まれた。

    まだ続きがある。この年の暮れ、年末進行の原稿を無事入稿して一息ついていた29日、私は、編集長らから大井の東京大賞典に行こうと誘われたのだった。同行者の顔が効いてゴンドラ席で観戦できる幸運な機会だった。3日前の26日、有馬記念で田原成貴トウカイテイオーの復活劇を目の当たりにして、少し財布の中にも余裕のあったこともあって、ハイな気持ちで大井に向かったことを覚えている。
    この日、大井に着くまでは、ずっとオールカマーの恩もある的場文男ハシルショウグンからと決めていたが、ゴンドラ席から返し馬を見た瞬間、「あれ?!ハシルショウグンはあんな馬だったのだろうか?」と、ふとあのオールカマーの状態に一息と感じて、断腸の思いで返し馬で弾けていたホワイトシルバーとタイコウストームの組み合わせの枠連勝負に変更した。おそらく歴戦の疲れがハシルショウグンには残っていたのだろう。1番人気で10着だった。私がおさえた5-8の枠連は万馬券となった。
    93年の大晦日。TVから流れる除夜の鐘の音をゆったりとした心で聞いたことは、今でも忘れられない想い出である。でもこんな年の暮れはめったにあることではないのも確かなのだが・・・。

    止まれ、何よりも今は、60歳の現役騎手的場文男の7000勝達成こそを祝うのだ。

    でも、しかし・・・。まだ大井には、上には上がいた。あの「鉄人・佐々木竹見」である。
    1941年生まれの75歳。1960年にデビューして2001年7月に引退するまでに積み重ねた勝利は、何と7151勝。

    昨日のインタビューで、7000勝騎手的場文男は、「次には佐々木竹見の勝利数を目標とする」と語ったようだ。
    そうだ、まだまだ老けるのは早い。引退はいつでもできる。その日までは、這いつくばってでもゴールを目指せ!大井の雄、騎手的場文男!!
    フレーッ、フレーッ、ま・と・ば・・・・。

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    2017 ヴィクトリアマイル・東京芝1600m~まさか、まさか、まさかは続くよ、どこまでも 

    埴輪馬

    このメンバーなら、現在牝馬のトップレヴェルにあるミッキークイーンがまさか2着をも外す結果になるとは思いもよらなかった。

    ミッキークイーンから、おばさん熟女となった7歳のスマートレイアーと、どうも本質的にマイラーではないようなルージュバックを外し、ソルヴェイグも府中向きではないと見極めると、これからの伸びしろが期待できる4歳のジュールポレールとアドマイヤリード、5歳なら格でクイーンズリングとレッツゴードンキを選べば推理は完璧と信じて疑わなかったのだ。

    1年半も前に田辺裕信が騎乗して府中マイルの2歳戦アルテミスSを後方から豪快に差し切ったデンコウアンジュの記憶はあった(負かしたのはメジャーエンブレムだった)が、それから一度も連に絡んだこともない現状と、最盛期からすると勢いを失っている印象の蛯名正義の騎乗では、購入意欲はそそられ無かった。

    結果、私の私自身への近未来への予言は、巷の怪しげな占い師のように、全て外れて無に帰すことになった。

    レッツゴードンキはスタート直後から引っかかって折り合いを失くし、ここのところの好成績を支えた直線イン攻撃からの差し脚を失い、ミッキークイーンは有馬記念5着から休養明けの道悪での阪神牝馬S勝利からの二走ボケとしか言いようがない凡走。デンコウアンジュ(2着)に外から完全に封じ込められる不様さをみせてしまった。デムーロ・クイーンズリング(6着)にいたっては馬群の中で私にはどこにいたのか一瞬判らないほどだった。

    せっかく、ルメール・アドマイヤリードが1着、幸英明ジュールポレールが3着に好走してくれたのに、肝心要の浜中俊ミッキークイーンが、まさかここまで走らないとは・・・。どうしようもない。

    何故と考えるなら、雨の影響を引きずった馬場なのか、レース全体の流れが前半5F60秒1のスローから、最後3Fが11秒1、10秒8、11秒9の33秒8という極端な流れになった所為なのだろう。

    良馬場だった1週前のNHKマイルCが、前半5F57秒8、上り3Fが34秒4であったのと比べれば、古馬牝馬によるヴィクトリアマイルの流れが異様だったことは明らかだ。しかし出馬表から、競馬ファンがこの流れまでもを推理するのは困難だろう。唯一ヒントがあったとすれば、典型的な逃げ馬がいなかったレースだったということである。恥ずかしながら、ミッキークイーンの存在に無条件に安心していた私は、今回そのことにピーンと触角を伸ばす感性をすっかり忘れていた。

    まだ体調が本当ではなかったから、粘りの推理ができなかったのである。鈍い私のまま、競馬に参加してしまったということだ。情けない・・・。

    この春、古馬G1ロードや3歳クラシック戦線を改めて見つめ直してみると、古馬キタサンブラックの活躍以外は、総じて「まさか、まさか、まさかは続くよどこまでもー♫」という結果が続いている。

    こんな流れは最後まで勢いづいてしまうものだ。
    オークス、ダービー、安田記念の残り3週間。ちょっと慎重になって出馬表を見る必要があるのかも知れない。

    浮かれることなく沈着冷静、もうひとつクールになりましょうね、競馬ファンの皆さん!
    私のような反省をすることは、決して建設的ではありませんから、ハイ。






    category: 競馬

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    2017 NHKマイルC~東京芝1600m 横山典弘・49歳の凄腕 

    埴輪馬

    月曜の午後から、急に体調を崩し、一晩我慢していたがどうにもならず、昨日は月に一度は必ず通っている主治医のもとに駆けつける状態になってしまった。病名は記さないが、かつて手術を受けた個所のひとつ(生まれてからこれまで私は6回身体にメスを入れている)が、明らかに再発の症状が出てしまったのである。

    適切な投薬を施し、おそらく1週間ほど様子を見ればいまの症状は治まってくるだろうとの診察だったが、ちょっと我慢しなければならない痛みがあるので、精神的にはきつい。「安静にして、疲れやストレスを避けましょうね」と言われたが、そういうことなら、はっきりとした原因には心あたりがないわけではない。

    日曜の夕方から、私は大きな失意と落胆に見舞われていたからだ。網の中に仕留めた黄金の魚を、引き上げる寸前に自分で網を裏返しにして逃がしてしまった漁師の心境、初めてのキスに燃え上がる気持ちで顔を近づけ合ったそのときハックション!とクシャミをしてしまった惨めなほどのいたたまれなさ・・・。こんなとき絶望的な疲労感やストレスを感じ取らなかったら人間ではないだろう・・・。

    NHKマイルCを迎えた先週末。いつものように録画しておいたGCの「今週の調教」を確かめて、自分なりのチェックを終えると、私は重要なヒントを掴んだ喜びにほくそ笑んでいた。

    リエロテソーロの最終追い切りを見て、心が騒いだのである。
    古馬オープン馬ラルーズリッキーと併せた追い切りで、騎乗者吉田隼人はゴール板を過ぎても手綱を緩めずそこから1Fほどびっしりと追い切ったのだった。この調教手法は、馬の状態把握を具体的にできる騎乗者の判断に任せきった勝負がかりの追い切りと言える。古い話だが、かつてミホノブルボンの3冠を阻止したライスシャワーに乗った的場均(現調教師)が、ここぞというときに見せた追い切りの必殺技だったのを憶えている。それを今回、吉田隼人がやってのけたのである。勝負に対する意欲と意志が漲っていた。
    リエノテソーロは、昨夏洋芝の札幌競馬場で2連勝。その後地方の門別、川崎でダート戦を2連勝して3か月休養。復帰戦の3月アネモネSで0秒2差の4着でNHKマイルCに挑もうとしていた。まだ本当の実力を大きな芝のレースでは現していない状態で、デビューから4連勝した馬なのに、言わば盲点となって人気も期待も上がってはいなかった。
    その馬が見せた勝負がかりの最終追い切りだったのである。

    2度見直した最終追い切り画面から、私が選んだ相手馬は、これまでのトライアルのプロセスや桜花賞皐月賞で、私が関心を寄せた馬たちの状態から、ルメール・モンドキャノン、田辺アウトライアーズ、デムーロ・カラクレナイ、横山典アエロリットを選んだ。どの馬も、最終追い切りでも私には好気配に映った。

    競馬に参加するとき、私は、最終追い切りの状態(これはタイムではなく、騎乗者に促されて走っているのではなく、自ら自然と走る気を見せている気配を確かめる)、次にレースの流れや展開を推理し、その次には騎手自身の勝負への意志を読み、同時にこれまでどんな相手と闘いどんな結果を残してきたかという格を考える。

    私にとって競馬の推理の根幹は、追い切り、展開、意志、格なのだ。3連単によほどのことがない限り手を出さないのは、3着には勝負を捨てて漁夫の利で突っ込んでくる馬がいる場合が多いからで、Win5は難易度が高過ぎるし、結局勝負に挑んだ1着2着馬の価値を重視すると、馬連やあるいは枠連が私には合っているのだ。

    このNHKマイルCで、唯一不安だったのは展開だった。先行して活路を開いた皐月賞男松山弘平がボンセルヴィーソで前を行くに違いないとは思ったが、あとはどの馬がどこにいるかという全体のイメージは、正直掴めなかったのである。「それは騎手がきちんと考えて騎乗するだろう」と騎手の手腕に任せるしかない状況こそが、大混戦とされた最大の要素だったろう。言い換えれば、明確にレースを支配するだけの軸馬という存在が不在していたことにもなる。

    パドックに現われた馬たちを眺め終えたとき、私は自分が選んだ数頭の馬たちの気配がいいのは理解した。馬場入場から返し馬。その時点でもまだ結論は変えなかった。

    締め切り時間まであと数分。リエノテソーロから均等に4点流しでいいかと思ったその瞬間、私に欲という悪魔が忍び寄って来たのである。

    最終最後に、私は1週間前の春・天皇賞のスタートを想い起してしまった。想い出さなくてもいいのに、敢えて想い出してしまったのだ。初コンビとなった横山典弘のゴールドアクターのスタートの瞬間をである。痛恨の出遅れ。結果的にレースには絡めずに終わってしまったあの瞬間を。

    8枠16番のアエロリット。大外枠からターフに出て、今までのように好位を確保してゴール前にもうひとつ伸びるのは牝馬にはシンドイだろうなぁ・・・。桜花賞もスタートでは出して行かなかったし・・・。選んだ馬たちの中で、最も不利なのは8枠のアエロリットではないだろうか?・・・。ならばリエノテソーロから内の馬たちを厚めに買う方が収穫も大きいのではないのか・・・。

    締め切りまでのほんの短い時間の間に、私は欲に走ってしまったのである。桜花賞でも応援していたアエロリットを切り捨てる形で・・・。

    ファンファーレが響いて、最初にターフに飛び出したのは横山典弘アエロリットだった。
    好スタートから馬場の良い外目を好位の後ろに下げて追走して、直線を迎えるともはや先頭に立とうとする勢いだった。

    そこにやはり好位の後ろの馬群から吉田隼人リエノテソーロが伸びてきた。勝負気配の最終追い切りだけではなく、専門紙に載った武井調教師のコメントでは、金曜日に東京競馬場のダートコースで1周半の調教、土曜日にはパドックなどを事前のスクーリングしたようだ。厩舎挙げての万全の勝負気配だったのである。

    しかし、そのリエノテソーロを、アエロリットはゴールまで寄せつけなかった。
    横山典弘がレースで育て、2歳下の義弟となる元騎手だった菊沢隆徳調教師が自ら調教に乗って育てたアエロリット。競馬一家横山ファミリーの申し子のような存在の馬である。

    勝ちタイム1分32秒3。大混戦と言われたが、結果は上り3Fこそ33秒台が計時されなかったが、11秒台のラップが続いた緩みのない流れの故であり、ハイレヴェルの闘いであったことは間違いない。こんなサバイバルゲームのような展開では、中団より後ろに控えた馬たちには出番は巡って来なかった。

    アッ・・・何と、また・・・グァーン・・・ズシーン・・・・。初心を忘れてフォーカスを絞り、その結果、欲張り過ぎて最大最高のチャンスを逃してしまった私の心の中の騒然とした叫びである。

    やはり信じ切ったものは救われるのだ。しかし途中で猥雑な疑いを抱いてしまった者は、無限奈落に堕ちていくことになる。桜花賞、春・天皇賞も横山典弘を応援していたのに、3度目の正直の格好のチャンスに疑いの気持ちをを沸き起こしてしまった。あげくの果て、病院通いの身になってしまったのである。

    1着と2着馬との配当の高さを知れば知るほど、悔しいまでの悔恨が募るが、全ては自業自得、感性の扉をもうひとつ開けなかった自分自身の愚かしさに嫌悪感まで湧いてくる。ああ・・・。

    でもやっと今朝は、主治医から処方された薬が効いてきたこともあり、おおらかな心持も戻ってきた。
    「先週末の結末からすれば、これで全ての悪運は尽きたのだ。底さえ打てば、これからはもう上昇の良運しかないじゃないか」
    などとポジティブシンキングをしている。度し難い奴というのが、そうだ、私の本性なのかも知れない。

    だって、これから、ヴィクトリアマイル、オークス、ダービー、安田記念と眼の前には大きなチャンスが続くのだから。そこに、山があったら登る。海があったら潜る。据え膳を食わぬは恥じ。と、粋で依怙地で意地っ張りな庶民の心意気で、生きてる限り前に進むしかないだろう。
    それでいい。


    PS:日曜日は本番前のエキササイズで、特別戦の9Rをベルキャニオンから馬連、10R をミツバから枠連でホップ・ステップと仕留めていました。最後のジャンプが、痛恨の欲張りだったということです。残念無念この上ないのですが、なので結局実質のマイナスは、したたかにもほんのわずかな観戦料程度で、病発症の原因は、やはり気持ちの落胆だったと思います。ご心配をおかけしました。




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