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    Tsuruki Jun<鶴木遵>の原風景 《絶対零度》

    鶴木遵の本、新しい挑戦、趣味である競馬、将棋の駒、男の手料理、めだかやミジンコ飼育、犬猫のよもやま話、など四季折々に感じたことを発信していきます。

    2017 JC~東京・芝2400m H.ボウマン「教科書通りの正攻法競馬」 

             キタサンブラックキタサンブラック

    いつもの通り東京競馬場に着いたのは11時頃。
    人波にもまれながらスタンドを横切り、東来賓受付から8階ダービールームに向かう。
    と、いつものメンバーが揃っていた。微笑やかに挨拶を交わして着席。思うところがあってこの1週間タバコを止めていたが、タバコの買えない競馬場で頭の中がイライラするのを避けようと、駅で1週間振りに一箱買ってしまい、いざ出陣と心の準備は整えたが、買った後には、己の意志の弱さを悔やんでもいた。せっかく1週間も我慢していたのにと。でも止めるときに止められる自信を得たのだからと、都合良く自己納得してもいた。私の本質は、意志の弱い人間なのかも知れないが、あまりに禁煙にムキになるのも不自由だと感じるおおらかさを持っているのだ。

    ワイワイ言いながら、山暮らしの日常とは違う賑やかな部屋の雰囲気に、今日は軍資金が多少少なかったこともあって心から馴染めず、そんな心境からだったろうが、ついペースを乱して5Rから競馬に参加してしまった。これも柄にもなくタバコを止めていた影響だろうか?

    所沢までのレッドアローの中で、実は今日の9Rと10Rは新聞を広げて眼を通していた。閃いてもいた。
    共に馬連3点のボックス予想で、9Rは、ルメール、ムーア、デムーロの外国人騎手の揃い踏み、10Rはボウマン、戸崎、ムーアを調教欄から選び出していた。
    だからきちんと選んだレースだけに手を出したなら、いつものマイペースだったのだが、肝心のJCでは、ボウマンが乗って馬が走る気を示していたシュヴァルグランや、ルメールが調教で馬の気配を引き出していたレイデオロも、いつものように黒岩悠が馬を仕上げたキタサンブラックを外してみようと思っていたので、どうも平常心を失っていたのかも知れない。

    シュヴァルグランやキタサンブラックを今日は応援しないと決めたのは、どうもオーナーサイドの濃い目の顔が馬よりも先に浮かんできて、あまり幸運を独占するなよなという庶民の意固地だったろうし、レイデオロはダービー馬だがまだ古馬の一線級とは闘っていなかったので、それならここ2戦古馬にもまれる体験を重ねた負担重量53Kgのソウルスターリングに期待してみるかと思ったのだった。

    で、時間つなぎを兼ねて、つい5Rから手を出してしまったのだ。
    しかし競馬場当日のテーブルで直感するだけの推理では、結果は惨敗。デムーロを狙えば2度も彼が消え、穴狙いの横山武史を狙い撃つと7着8着、世界のムーアにすがると4着。8Rまで4連敗。それでなくても今日は多少軍資金の心配があったのに、全てが裏目にでた。

    結果、レッドアローの車内できちんと眼を通した9Rは、リズムを変えようと見した次第。ケンとは購入しないでレースを見守ることだ。
    見守ると、それが予想通りになるのも裏目のときの常法である。デムーロ、ムーア、ルメールの揃い踏みで、馬連は14倍ほどだった。

    こんな流れに顔は蒼ざめ始めたが、エエイ、ヤーッと清水の舞台から飛び降りるように覚悟を決めて、今朝の予想通りに10Rをパドックも見ないで馬連3点と3連複1点買いをした。もはや捨て身の攻撃態勢である。

    勝負の神様は、こんな私を見放さなかった。戸崎、ボウマン、ムーアの順にゴールインして、何と馬連が90倍、3連複は約40倍となったのである。大観衆が集う大レースの日は、人気が一方的に偏って思わぬ高配当となることがある。

    いやはやと表情に血の気を戻した私は、だから判らぬレースに手を出さずにおとなしくしていて、狙えるレースだけに参加すればいいのだと、改めて自省して、JCを迎えることになった。

    パドックをしっかりと見て、プラス分を(今宵の酒席分だけ残して)JCにつぎ込もうと決めた。おー、忍耐の果ての幸せなJC・・と、さっきまでの不安な気持ちはもはや吹っ飛んでいた。だから「捨て身」は意味があるのだ。

    JCのパドック。シュヴァルグランもレイデオロも落ち着いて歩いていた。キタサンブラックは、私の眼には大雨の天皇賞のときの方が気配は良かったと思えてならなかった。あの日も、できることなら外そうと考えていたが、気配の良さに外せなかったのだ。そのときよりも少ししぼんで見えた。
    私がこれまでの好みで選んでいたのは、多少気負いを見せていたソウルスターリングにサトノクラウンとわずか2勝で総賞金4億7千万を稼ぎ出したサウンズオブアースだった。外見的には不調な様子は見受けられなかったが、ゴール前に最後に力まで振り絞った秋・天皇賞の疲労はサトノクラウンには残っていたのだろう。サウンズオブアースは生涯のピーク期をもう過ぎてしまっているのかも知れない。ただこれはレースを終えての結果論で、パドックでは判らなかったというのが事実である。

    スタートして、武豊キタサンブラックが先頭に立つ。キタサンブラックはこれまで前半3Fを37秒台で乗り切っていったときに絶賛すべき力量を発揮してきた馬だ。しかしこの日のレースでは前半3F35秒2。キタサンブラックにはオーバーペースだったと思う。37秒で他馬を委縮させる威圧感を生み出したことが、実はキタサンブラックの強さの秘訣だったのである。

    かつて騎手岡部幸雄はかのシンボリルドルフの全盛期の頃、
    「競馬はね、他馬を完膚なきまでに負かすことが必要なんだよね。次には何とかなると思わせてしまったらダメなんだ」
    と、私の取材のときに答えてくれたことがある。春の宝塚記念での敗戦は、秋・天皇賞馬の威厳をも、あれは歴史的な重馬場だからこそできた僥倖と思わせてしまっていたのかも知れない。

    道中、武豊キタサンブラックは息を入れる余裕を持てなかった。
    2番手から、柴山雄一ディサイファが突っつくように絡んでいたからだ。楽をさせなかった2番手のこの動きは、先頭を走る馬にとっては必要以上にプレッシャーとなる。いかに強い名馬であっても生身のサラブレッドだからだ。

    昨年のJCでは、前半37秒2の流れを作って最後の3Fを34秒7で仕上げたキタサンブラックだったが、今年は前半35秒2の流れで最後は35秒3に失速した。

    ゴール前で3番手から追い込んだボウマン・シュバルグランは34秒7、5番手辺りから馬群を抜けたルメール・レイデオロは34秒6を計時していた。1秒にも満たない僅かな差が、勝負を勝者と敗者に分け隔つのだ。

    しかし敗者となったとしても、あの大雨の不良馬場を克服して今日もなお3着を確保したキタサンブラックの勝負根性は絶賛すべきだろう。ラストレースとなる有馬記念は中山の6つのコーナーを廻る。必然的に究極のハイペースは生まれにくいことになる。かつてオグリキャップの復活劇もスローな流れが生み出した。前半37秒のキタサンブラックにとってイージーな流れが生まれたら、おそらく結果はついて来るだろう。

    それにしてもボウマンの騎乗は素晴らしかった。道中インの4番手辺りをいとも簡単に確保して、直線で狙いすましたように抜け出してきた。まるで教科書の様な世界レヴェルの騎乗だったと言える。

    これまでのJCの歴史を紐解いてみると、勝利した外国人ジョッキーは、全て1流ジョッキーである。JCは、世界の1流ジョッキーでなかったら勝てないレースとも言えるのだ。今年、ボウマンと出会えた私たちは、競馬の大きな財産を得たのである。


    闘い終わって日が暮れた後、いろんな流れがあって、この日は4人で西国分寺の駅前で乾杯をした。あまりの大観衆がいっきに岐路に向かった時間で、競馬場近くの店はどこも満員御礼状態で入れず、それでも今日の競馬を語り尽きたいと願う4人(それは西国分寺から武蔵野線で秋津にむかう私と、中央線で帰れる桂文生師匠と女優李麗仙と文春の編集者Fの4人だった)は、知恵を使って西国分寺駅で途中下車してみたのである。
    これが大正解で、駅近くの満足できる酒場を見つけ、それから2時間半ほどの宴を十分に楽しんで、今日のJCを振り返った。

    10Rの配当で、JCは個人的に好きな馬を好きなだけ応援した私だったが、それでも少しのプラス分が残って、とても爽やかな気分で酔いに任せながらいつもの山暮らしに戻ったのである。











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    2017 マイルCS~京都芝1600m またもやミルコ!!神様、仏様、ミルコ様! 

    由進作 左馬・幸運駒②

    11月19日。先週のエリザベス女王杯に続く快晴の京都競馬場。
    マイル路線を目標とする馬たちが揃ったが、私の結論には少しも迷いがなかった。

    このブログに眼を通してくれている方なら、私自身がエアスピネルとイスラボニータをずっと応援していたことをご存じだろう。
    それに、3歳の皐月賞2着馬ペルシアンナイトと、京都での適性実績が少しばかり気になるがサトノアラジンも抑えておこうと決めていた。武豊の路上キスや調教中の負傷が影響したのか、エアスピネルは直前にR.ムーアへの騎乗交替となってもいて、それでどんな走りを見せるか大いに興味もそそられていたのである。軸はこの馬だ!

    どう考えても、何のアクシデントもなかったなら、最後の直線ではムーア、デムーロ、ルメールの揃い踏みの叩き合いになるだろう。そこに川田将雅が差し届くかどうか。好位からエアスピネルとイスラボニータ、ペルシアンナイトはミルコの必殺技のイン攻撃か。サトノアラジンは直線いっきだろうが、坂のない京都ではトップギアに上げる勝負の瞬間をよほど的確に掴まないと追いすがれないだろう。午前中からレースの瞬間を楽しみにして過ごしていた。

    ところがである。昼前に急用の連絡があり、どうしても出かけなくてはならなくなった。できるものならトボケタイとも思ったが、浮世の義理でそういうわけにもいかない。とりあえずGCのレース録画を予約して、パドックも生(ナマ)で見られないなら、ほんの少しだけ購入しておいて、もし運良く間に合うようなら急いで家に帰って買い足すことに決めて、後ろ髪を引かれる思いで着替えて外出した。
    結局、用事は夕方過ぎまでかかり、家に帰りついて録画画面を見た。

    直線、ムーア・エアスピネルが抜け出し、ゴール前にイン攻撃から抜け出して来たデムーロ・ペルシアンナイトが迫って、エアスピネルが最終最後に脚勢を弱めた瞬間に差し切っていた。エアスピネルは強い競馬をしたが、G1にはほんの僅か届かなかった。
    ゴール前の攻防は見応えがあったと思う。

    この結果に、何故、よりによって今日、浮世の義理を果たしに出かけなくてはならなくなったのかと恨めしく、つくづく自分の運気の弱さを感じた次第である。タラレバだが、あのまま午後にゆっくりとレースを見守れたなら、納得できる勝負ができたのに・・・。ほんのチョイ抑えになってしまった・・・。誰を恨むのでもなく、ただただ運気の弱さを嘆くばかり・・・。

    まあ、こんな日もある。それもまた競馬の日々だろう。それにしても・・・。

    それにしてもはまだある。結果からすると、3歳馬は、ペルシアンナイトが勝ち、上り馬サングレーザーが3着、桜花賞馬レーヌミノルが4着で、5着はイスラボニータだったから、掲示板には3頭が名を連ねた。古馬がだらしなかったのか、3歳馬が強いのか、結論はもう少し後にしたい。

    今週末は、JC。ネクタイを締めて、いざダービールームへと、向かう予定である。
    急用が生まれたとしても、今週末はすっとぼける予定である。






    category: 競馬

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    2017 エリザベス女王杯(京都・外回り芝2200m)~秋晴れの爽やかな空の下なのに・・・ 

    埴輪馬

    3頭が凌ぎ合いを示してゴールインした瞬間、私は声を上げた。
    「オイッ⁉」っと。
    「オオッ!!」でなかったのが、儚く辛いあるがままの現実だった・・・。


    10月のG1戦の晴れ舞台がずっと大雨に見舞われていたこともあって、この日京都で行われたエリザベス女王杯が爽やかな青空の下で開催されたのは、久し振りに幸福感を覚えるほどだった。

    集ったメンバーも3歳から5歳世代と、7歳のスマートレイアーまでの現時点での最強アマゾネスたちが揃って、秋晴れの良馬場でのスピード決戦を予想した多くのファンたちもまた、それぞれに大きな夢を抱いてレースを迎えようとしていた。実際、この出走馬たちなら好きなどの馬からでも馬券での応援は可能と思わせる様相だったのである。(別の視点から言えば、だからこそ難解という意味もあったのだが・・・)

    いつもの通りGCの最終追い切りを見て、最初の段階で、その気配に魅かれたのは、ルージュバック、ミッキークイーン、スマートレイアー、クロコスミア、モズカッチャンとヴィブロスの6頭だった。出馬表に黄色のマーカーでサッと印をつけたのだから、直感そのものは正しかったはずだ。

    でも6頭の選択は、私には多過ぎる。レースの時刻までにもう少し絞りたい。

    出馬表の内から、和田竜クロコスミア。最終追い切りで、馬自身が走る気を見せて、抜群の手応えある気配を発散していた。2枠4番から、今の和田竜二が前を行く騎乗で持たせてくれたなら大きな可能性があると読んだ。10月14日の稍重の馬場での上り33秒7の逃げ切りは印象的だったこともある。このときドバイ以来の復帰初戦だったヴィブロスを負かしたのだ。それに騎乗者に決まった和田竜二が、最近は前に行く戦法で確実に実績を挙げているのも心強かった。思えば、和田竜二は、テイエムオペラオーの3歳春の毎日杯で最後方からのごぼう抜きを決めて、馬共々スポットライトの中に浮上したのだが、今では先行タイプの騎乗で粘りある姿を示している。これなら初騎乗でも安心以上に勝負掛りと見なせるというものだ。

    M.デムーロ・モズカッチャン。その名は地味だが、オークス2着に粘ったしたたかさや、落鉄に見舞われた重馬場での秋華賞3着で示した安定感は、新種牡馬ハービンジャー産駒の出世頭にまで這い上がっている。騎乗するデムーロの強引なまでのしたたかさとのマッチングも効果大であるに違いない。

    浜中俊ミッキークイーン。左前脚の靭帯を痛めなかったら、本来ならこの馬こそが最強牝馬だと、私は今も思っている。春のヴィクトリアマイルの敗戦は、どう考えても腑に落ちないが、その後は宝塚記念で自ら3着を確保して力に衰えのないことを証明してもいる。人気が多少でも下がるようなら絶好の狙い目だし、最終追い切りの気配も私の眼には十分に力を発揮できる状態に感じた。

    R.ムーア・ルージュバック。追い切りの気配はとてもいい状態を誇示していた。最後に抜け出したときには、貫録さえ伝わってきた。ただ個人的には、今回は世界のムーアではなく、前走オールカマーで好位からルージュバックの新境地を開拓する騎乗を果たした北村宏司に乗って欲しかったのだが・・・。これまで戸崎圭太が苦労の騎乗を重ねてきただけに、いかに世界のムーアと言えども、不利とされる大外枠で初騎乗のルージュバックを勝たせることができるのかと、少しばかり不安を覚えたが、しかし神がかる世界のムーアなのだからと、そんな気持ちを抑えた。デットーリ、ムーア、モレイラは、今や世界の騎手の神様だからだ。

    土曜の夜までに、私はルメール・ヴィブロスとスマートレイアーを推理の枠から外した。
    ヴィブロスは、私の眼には前走府中牝馬Sのときの最終追い切りの方がより気迫があったように思えたし、主戦の武豊から川田将雅に突如乗り替わったスマートレイアーには、勝負運の流れの悪さを感じてしまったのだ。
    それにしても我らがスター武豊だ。また路上のキスでマスコミの餌食となった。あげくの果てに調教中の落馬負傷があったようだ。私の記憶の限りでは、写真誌に撮られたのはこれで3度目である。最初はもはや30年近く前で、現在の奥さんと若きスタージョッキーとの熱愛シーンだったが、最近は数年前に六本木の路上で、今回は京都の路上だという。お相手は、トレセンに来る女性キャスターらしいが、たとえ過度のお酒が入っていたとしても、こんな風にてごろに路上チューをこなしていると、単なる変態中年扱いになってしまいかねないのが、私には心配だ。スターはスターとして世をうっとりとさせる様な美しきキスを交わすべき存在なのだと思えてならないのだが、どうだろう?いや、武豊も実は普通の中年のオヤジ人間で、もはや自分の中にはない若さを補給するために、手っ取り早く若き女性との熱き路上キスを求めているのだとしたら、それもまた哀しい男の性(さが)にも感じてしまう・・・。

    ともあれ、私はこの時点で4頭に絞っていたのだ。そしてペースは流れるとも推理してもいた。
    だから日曜の朝までの浅い眠りの中で、うつらうつらとしながら、
    「ならばやはり軸馬は、ミッキークイーンにしよう。良馬場ならこれ以上に大荒れする可能性は低いだろうし、多少人気を下げている今回なら絶好の狙い目となるはずだ。人気を落とした実力馬というのは、経験上ロングショットの宝庫となっているではないか」
    結果からすれば、うつらうつらするのではなく、ぐっすりと眠ってしまえば良かったのかも知れない。

    的中馬券は、複勝やワイド以外は、ただ1点である。1点ならば限りなく合理的に1点に近くまで絞り切るべきと、枠連からの競馬に慣れた私には思えてならないのだ。メジロマックイーンの頃に馬連が定着してからは、自らに3点までを許すようになったが、どうもその癖が今でも離れない。だからごくたまに記念馬券しか3連単や3連複に手を出さないし、その場合でも2点か4点までを心掛けるようにしている。多点買いは、結局は続かないものだと割り切っているのだ。3連単マルチなど当たっての配当は高くても私には別世界の買い方だ。競馬は単勝を当てるのが基本だと意地を張っているし、強い馬が3着に負けることを期待するのは、邪な気分になって自分が嫌になる。嫌になってまで競馬を見るつもりもないのだ。


    ゲートが開いて1コーナーまでに逃げるポジションを確保したのは、1枠1番を利した藤岡康太クインズミラーグロだった。和田竜クロコスミアは2番手を確保した。浜中俊ミッキークイーンは中団の外。ムーア・ルージュバックはその直後にいた。

    この時点で、不安なことがあった。クインズミラーグロの逃げではペースが上がらないのではないかということと、ルージュバックのこの態勢ではおそらく上位進出はないだろうということだった。ルージュバックにはスタート直後に多少無理をしてもポジション取りをして欲しかった。

    案の定、前半5Fは62秒のスローペース。2番手で折り合っているクロコスミアや5番手ほどのインでやがての抜け出しの機会を虎視眈々と狙うモズカッチャンには大きなアドヴァンテージとなっていた。

    となれば残り4F(800m)の勝負処からのサバイバル戦となることが予想された。

    その通りの展開となった。

    和田竜クロコスミアが4コーナーを廻って先頭を確保。外からミッキークイーンが勢いをつけて追い上げる。直線中ほどを過ぎて、デムーロ・モズカッチャンが一瞬を捉えて仕掛け、いっきの瞬発力を発揮した。ミッキークイーンは豪快に外から伸び続け、クロコスミアは粘った。

    3頭が揃うようにゴールイン。ゴール前は、激しい闘いとなった。

    画面に向かって、「オイッ⁉」と叫んでみたものの、それは空しい抵抗に過ぎなかった

    GCのTV画面を見守った私には、すでにミッキークイーンが届かなかったことを確かめていた。
    ミッキークイーンから3点に流した私は、またも大きな縦目の敗戦を喫してしまったのである。

    京都や阪神を主戦場とする関西の一流騎手たちが、これまで伝統的に先達から習い教え込まれた騎乗の美意識がある。それは、馬の個性に乗って一瞬の究極なる仕掛け処を逃さず、ハナ差・頭差の微差で差し込むという美意識である。馬の力とゴールまでの距離と相手馬の力量を把握して、トップギアに入れる一瞬のときを見事に捉える。それは故武邦彦や福永洋一に伝わり、河内洋や田原成貴、武豊にも伝授された美意識である。現役騎手で言えば、勿論デムーロはイン攻撃から実践しているし、四位洋文やおそらく川田将雅にも伝わっている。彼らは、人気があろうとなかろう(それは世間が決めることである)と、勝負を賭けた場面で、馬にきちんと勝負させることを知っている騎手たちなのだ。ただ体当たりの騎乗をするレベルではないのは自明である。

    だが浜中俊にはまだもうひとつこの意識が弱いのではないか?限りなく近づいているにしても、本当の自信を掴みきっていないのではないだろうか?もしこの日、動き出しとギアを挙げる動作をもうほんの一瞬早めていたなら、おそらくトップギアに乗るのもわずかに早まって(ほんの20mほどのことだが)、外から差し切っていたように私には感じられてならない。いや、もしとかタラればは、グッと我慢しておくべきなのかも知れないが・・・。でもプロ存在としては大切なことなのだが・・・。

    爽やかな秋空の下、「オイッ・・⁉」という落胆で終わったエリザベス女王杯だったが、最終追い切りを見終えての着眼点には、どうやらまだ狂いはないようだ。その眼をかすませるのは、やはり私自身の利欲なのかも知れない・・・。的中の喜びを求めて、まだまだ何かを守ろうとしているのかも知れない。まずは捨て身になっての攻撃だけが、結果として喜びにつながることを再確認すべきなのだろう。

    そうか、捨て身か・・・。いい言葉である。





    category: 競馬

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    2017秋・天皇賞(東京芝2000m)~やっぱり雨の中 

                       DSCN2458 - コピー
    台風21号が北上し列島を抜けたかと思ったら、また週末に台風22号が通過した。週内からはずっと雨模様が続き、秋・天皇賞のスピード決着は望むべきもなかった。
    関東では、土日にかけて雨脚は強まり、これはまた菊花賞と同じようなパワフルな競走馬魂が試されることになると、誰もが確信したに違いない。今や世界競馬の頂点に駆け上がっている日本競馬の巨大グループが、主として日本の競馬のために生産する名馬たちは、日本の軽い馬場に即応したスピードタイプの馬たちが多いから、秋華賞、菊花賞のような力とそれに耐えるだけの強靭な精神力が試されるような馬場になると、果たしてどの馬にスポットライトが照らされるのかが曖昧模糊とならざるを得ないのが、競馬ファンが直面する現実なのだ。

    東京競馬場には11時ごろに到着した。西玄関受付から7階に上がり、しばらく椅子に座ってじっとしていた。大雨の中、競馬場に駆けつけるのも体力と気力が必要で、気儘勝手な山暮らしの身にはきついものがある。

    雨は午後にはさらに強まる気配が濃厚で、途切れることなく馬場に降り注いでいる。それでもこの日、6万4千人のファンがどこやらから集ってきていた。これだけの豪華メンバーが揃えば、ライブで見たいと思うのは当然だろうし、雨が煙る不良馬場の秋・天皇賞などずっとなかったから、記念すべき記憶となる価値もあったろう。的中すれば喜びに包まれた記憶ともなるだろうし・・・。

    何となくピーンと来た6Rの松岡正海ローレルジャックの単勝を買ってみただけで、9Rまでは競馬新聞と窓外に広がる馬場の状況を眺めながら時を過ごしていた。9Rの1000万条件の特別戦精進湖特別は、天皇賞と同じ2000mの距離で行われる。このレースをきちんと見守ったなら、今日の天皇賞のある種の傾向も判るというものだ。

    結果は、何と2000m2分10秒1の決着で、上り3Fは38秒を要していた。良馬場の強い馬のスピード決着なら、2200mの時計である。すでに10秒以上時計のかかる水飛沫の跳ね上がる不良馬場となっている。天皇賞までに後1時間15分もあり、雨はさらに降り注ぐだろう。

    GCの最終追い切りをいつものように録画して見直したりしていた。ひと目で気配の良さを感じたのはサトノクラウンだった。M・デムーロが前走毎日王冠で勝ったリアルスティールを降りてまで手綱を取るのも心強かった。後はこれまで楽しませてくれたネオリアリズムやグレーターロンドン、ヤマカツエースに私なりの勝負気配を感じていた。問題は、キタサンブラックである。これまでの調教過程を競馬新聞の一覧表で見ると、黙って買いなのだが、映像で見たキタサンブラックの走りが何となくスーッと伸びているようには思えず、もっさりとした走りに思えてならなかったのだ。それが嫌だった。

    パドックを眺めて、私の眼に抜けてよく思えたのは、サトノクラウンとキタサンブラックだった。
    ルメールの騎乗するソウルスターリングの気配にも注目してみたが、あの桜花賞3着の敗因が緩い馬場だったとされていたことを想い出すと、やはり食指が動かなかった。
    ネオリアリズムの+16Kgの馬体増も気になったし、リアルスティールのシュミノー騎乗も気懸りだった。グレーターロンドンには勝負気配を感じたが2週続けての下河辺牧場の生産馬の勝利と言うのも出来過ぎの印象があったし、ヤマカツエースにも同じ池添謙一が騎乗したオルフェーブルのパワーには及ばないだろうとも思えた。また迷いの迷路に紛れ込んでいたのだろう。

    この大雨に見舞われた馬場状況なら、重馬場の巧拙など実はもはや無関係で、試されるのは、競走馬の気高い闘う気力と精神力なのだと、ふと私の中の「賢い私」は気づいたのだが、私の中の「愚かな私」は、どうせサトノクラウンとキタサンブラックで決まるのなら1番人気だろうし、そもそも1番人気の1点勝負できるほどの人生を送っているのかい、あんたは?と悪魔の囁きを魅力的に囁いてもいた。
    で、結局、ひ弱で愚かな私は悪魔の囁きに乗ったのだ。人生には正論よりも、目先の利欲に走らせる悪魔の囁きが愛おしい場合があるのだ。サトノクラウンからキタサンブラックとの組み合わせはほんの僅かな保険にして、最終追い切りで選んだ馬たち3頭を厚めに馬連4点を購入した。

    ファンファーレが降り注ぐ雨の中に響いた。
    そしてゲートが開いた。ガシャーン!!

    そのとき一瞬立ち上がるような仕草を見せて。武豊キタサンブラックが出遅れた。前扉に突進してぶつかった瞬間にゲートが開いたようだ。
    隣りの観衆から悲鳴のような溜息まじりの言葉が響いた。「何だ!出遅れてるじゃん・・・」
    このとき、私はキタサンブラックの叔父ディープインパクトのまさに落馬寸前だったスタートの一瞬を想い出していた。「あのとき、それでもディープインパクトは楽勝した・・・」と。
    でも悪魔の囁きに乗った「愚かな私」は、シメシメとほくそ笑んでいた。

    キタサンブラックの中団からの競馬に変化があったのは、3・4コーナーである。
    3コーナーを過ぎると武豊キタサンブラックはするするとインから上昇を開始した。このとき馬自身が勝負を察して前に前にと進んで行ったのか、あるいは武豊の絶妙な指示があったのか、本当の処は騎手ではない私には判らない。
    しかし言えることは、4コーナーを廻って直線を迎えたときには、武豊キタサンブラックはインから2番手に上がっていたのである。

    ホームストレッチからの武豊の騎乗は、まさに絶妙、名人芸だった。馬をしたたかに追って示すムーアやモレイラ、デムーロやルメールの「剛」の名人芸とは違って、武豊のそれは、日本の競馬を熟知することから生まれる「柔」の名人芸だった。

    まずは、先に早めに仕掛けた田辺グレーターロンドンをクロスして抜き去り、その上で、また追い込む姿勢を露にしていたデムーロ・サトノクラウンをもクロスして、クロスしながら抜き去る馬たちにプレッシャーを与え、結局この大雨の中の馬場のいちばん良い処を確保していた。

    ゴール前、前をよぎられたサトノクラウンは、それでも体勢を立て直して再度伸びてきたがクビ差届かなかった。底から2馬身半差で3着となったのは岩田レインボーライン。どちらかと言えばパワータイプのステイゴールド産駒だった。さらに5馬身遅れて4着がリアルスティール。2分8秒3。秋・天皇賞史上ダントツに遅い時計だったが、レースの余韻は強烈で味わい深かった。
    この結果からしても、キタサンブラックとサトノクラウンの気高いまでの勝負根性が判るというものである。

    台風22号のもたらした大雨の中、私たちは3つのことを改めて思い知らされるように確かめたのだと思う。

    勝負するサラブレッドは、やはり敬うべき孤高な存在であること。
    騎手武豊の完成された「柔」の名人芸。(かつて騎手だった父武邦彦もそんな存在だった)
    騎手M・デムーロのスィッチが入ったときの勝負強さ。

    それらは、雨の中の貴重な記憶として私たちの心に残っていくだろう。

    雨はさらに勢いを増してきてはいたが、今日を終えた東京競馬場は闇に包まれようとしていた。
    大雨で電車が止まるのを心配して、まっすぐに帰る予定だったが、この日隣り合わせに座っていた噺家桂文生師匠が、何と天皇賞の3連単を的中して、嬉しくてうずうずとしていた。ならば近場で生ビールでもと、皆がそそくさと帰る中、度し難い3人組で近場の飲み屋を探して歩き始めると、府中本町に向かう通路の下では、何軒ものもつ焼き屋が人を集めて営業していた。

    通路の下にテーブルが並んで、雨の中でも濡れずにオープンスペースで楽しめるようになっている。これまで立ち寄ることはなかったが、たまにはこれも粋じゃないですかと、3人がその気になってくつろいでしまった。生ビールやレモンサワーに焼トンや煮込みに枝豆。それで十分だった。会計は、3連単の的中者・文生師匠が胸を張って「今日は任せて」と担当してくれて、私たちは、今日の天皇賞や今日の騎乗の名人芸から、世の中の名人芸にまで発展した話題で盛り上がって、結局2時間コースとなったが、帰りの電車に不都合はなく、何とか家に帰り着いたのだった。

    だから競馬は面白い。今日の満足感は、そうとしか言えないのだ。









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    2017菊花賞(京都・芝3000m)~水飛沫と泥だらけの勝利 

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    先週は、週内に1日ほど雨が上がっていただけで、後は本州直撃の台風21号の影響で雨が続いていた。

    結局、菊花賞当日も雨また雨。気になって、朝早くに投票に行き、午後からGCを見たが、芝のレースは水飛沫が舞い上がる状態で、6F(1200m)のレースでさえ、普段の良馬場からすると約6秒ほど時計がかかっていた。ここしばらくを振り返っても、これほどまでに悪化した芝のレースは想い出せなかったほどである。

    実に悩ましかった。脚ひれをつけたような重馬場得意の馬が浮上するのか?いや、ここまで悪ければ、血統的にパワフルな血が保証された馬が浮上するのか?いやいや、もはやどの馬さえも同じ条件となって、結局はこれまでそれなりの力を示してきた馬が改めて脚光を浴びる結果となるのか?・・・はっきりとした見極めなど、私ごときには全てが五里霧中で、何も思い浮かばなかった。

    勝負事と言うのは、いちど迷い始めると、迷いが迷いを呼んで、さらに見通しのきかぬ濃い霧の中に突き進んでしまうものである。
    それほどのどの馬も体験したこともない馬場状態だった。

    木曜の深夜に録画したGCの最終追い切りを、何度か見直して、私なりに各馬の気配をチェックしていた。最初に選んだのは、内からウィンガナドル、クリンチャー、アダムバローズ、サトノアーサー、ミッキースワロー、キセキ、アルアイン。追い切り時計ではなく、それなりに馬自身が走りたいような気配を示している馬たちを選んだ。でもこれでは多過ぎる。
    パドックを見て、レースまでに軸馬を決め、4頭ほどまでに絞ろうと決めた。

    しかし窓の外は雨が続いていた。雨は、台風21号の北上と共にレースが近づくにつれて雨脚が強まってもいた。

    迷いは大きくなった。常識的には、先行馬有利という気持ちに振れてくるのはやむを得なかった。中団後方の様なポジションからホームストレッチで差し切るというイメージは持てない。せめて4コーナー5・6番手辺りにまで来ている馬でなければ・・・。

    日曜の午後は、ずっと迷い悩んでいた。こうなったらダービー上位馬だけを選んでみようかとか、人気薄の先行馬のロングショットかもとか、どう考えても人気上位の一筋縄では決まらないだろうとか、芝の6Fで6秒ほどかかっているなら果たして菊花賞の決着タイムはどうなるのだろうかとか・・・雨の神様はどの馬を選ぶのだろうかとか・・・。ウーン、最後は神頼みの世界にまで行ってしまっていたのかも知れない。

    最終最後に選んだのは、ここまでまだ勝負強さにいまいちひ弱さを見せていたサトノアーサーの変身を期待し、先行できるクリンチャーとウィンガナドルとアダムバローズと皐月賞馬アルアインに決めた。デムーロ・キセキには最後まで気が魅かれたが、この時点で、秋G1が、スプリンターズSがデムーロ、秋華賞がルメールで決着していたので、この菊花賞が再度またデムーロとなると出来過ぎの仕組まれたお芝居の様な気がして、敢えて外してみようと決めた。(だからヘタなんです、今の私は・・・)

    3分18秒9。ラスト3Fの上り40秒0。まるで70年前の1940年代の菊花賞の様な決着タイムだったが、ゴール前で魅せたデムーロ・キセキの爆発力は、雨の中に佇む観衆の心を魅了するものだった。

    いやそれ以上に、先行馬クリンチャーを敢えて中団後方に待機させ、2周目坂の下りから勝負を賭けた藤岡佑介はすばらしい騎乗をやってのけたと思う。4年前のフランス長期遠征がようやくG1のステージでものを言ったのだろう。騎手としてこれからの自信を持ち得るレースだったと思った。
    同じ意味で、すでにテイエムオペラオーと共に天下を制した経験を持つ和田竜二の騎乗も、人気薄ポポカテペトルの未知なる才能を十分に引き出していた。

    G1戦でのデムーロとルメールの1着交代劇は出来過ぎだと疑ってしまった私の愚かさは、つまり決定的な過ちだったのである。
    結局、強い者はどこまでも強いと認めるしかないのだろう・・・。

    週末は、招待席が確保されている秋天皇賞だ。もし真ん中より外枠だったら、今度はお決まりのルメールの番だと考えてみるのも正しい態度なのかも知れない。しかし私の疑い深さも、もはや治らない性格でもあるし・・・。だから競馬は難しいし、面白いのかも知れない。うん、たぶんそうだろう。

    菊花賞の日の夜、選挙の結果が伝わった。国民の半数以上が信頼を置かない国権主義のポリティカルパーティが数の上では圧勝する結果だったが、その模倣勢力ではないリベラルが(まるでこの日のクリンチャーのように)目に見える形ではっきりと姿を現す結果となった。これだけは、今まで誰もやれなかった。不肖なる前原党首の結果的な功績だろう。

    この時代、もはやイデオロギー対立ではなく、リベラル(個人・市民と民主主義)か国権主義かの選択だけが問われているのだ。初めてこの対立軸が明確になった第1歩という位置付けと、その上でいかに闘うかという視点が明らかになったという意味においては、相当に有意義な選挙だったと思っているのだが、どうだろうか・・・。しがない私は、戦争よりも競馬も楽しめる平和を望んでいるいっかいの小市民でありたいのだが・・・。








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