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    Tsuruki Jun<鶴木遵>の原風景 《絶対零度》

    鶴木遵の本、新しい挑戦、趣味である競馬、将棋の駒、男の手料理、めだかやミジンコ飼育、犬猫のよもやま話、など四季折々に感じたことを発信していきます。

    2017 ヴィクトリアマイル・東京芝1600m~まさか、まさか、まさかは続くよ、どこまでも 

    埴輪馬

    このメンバーなら、現在牝馬のトップレヴェルにあるミッキークイーンがまさか2着をも外す結果になるとは思いもよらなかった。

    ミッキークイーンから、おばさん熟女となった7歳のスマートレイアーと、どうも本質的にマイラーではないようなルージュバックを外し、ソルヴェイグも府中向きではないと見極めると、これからの伸びしろが期待できる4歳のジュールポレールとアドマイヤリード、5歳なら格でクイーンズリングとレッツゴードンキを選べば推理は完璧と信じて疑わなかったのだ。

    1年半も前に田辺裕信が騎乗して府中マイルの2歳戦アルテミスSを後方から豪快に差し切ったデンコウアンジュの記憶はあった(負かしたのはメジャーエンブレムだった)が、それから一度も連に絡んだこともない現状と、最盛期からすると勢いを失っている印象の蛯名正義の騎乗では、購入意欲はそそられ無かった。

    結果、私の私自身への近未来への予言は、巷の怪しげな占い師のように、全て外れて無に帰すことになった。

    レッツゴードンキはスタート直後から引っかかって折り合いを失くし、ここのところの好成績を支えた直線イン攻撃からの差し脚を失い、ミッキークイーンは有馬記念5着から休養明けの道悪での阪神牝馬S勝利からの二走ボケとしか言いようがない凡走。デンコウアンジュ(2着)に外から完全に封じ込められる不様さをみせてしまった。デムーロ・クイーンズリング(6着)にいたっては馬群の中で私にはどこにいたのか一瞬判らないほどだった。

    せっかく、ルメール・アドマイヤリードが1着、幸英明ジュールポレールが3着に好走してくれたのに、肝心要の浜中俊ミッキークイーンが、まさかここまで走らないとは・・・。どうしようもない。

    何故と考えるなら、雨の影響を引きずった馬場なのか、レース全体の流れが前半5F60秒1のスローから、最後3Fが11秒1、10秒8、11秒9の33秒8という極端な流れになった所為なのだろう。

    良馬場だった1週前のNHKマイルCが、前半5F57秒8、上り3Fが34秒4であったのと比べれば、古馬牝馬によるヴィクトリアマイルの流れが異様だったことは明らかだ。しかし出馬表から、競馬ファンがこの流れまでもを推理するのは困難だろう。唯一ヒントがあったとすれば、典型的な逃げ馬がいなかったレースだったということである。恥ずかしながら、ミッキークイーンの存在に無条件に安心していた私は、今回そのことにピーンと触角を伸ばす感性をすっかり忘れていた。

    まだ体調が本当ではなかったから、粘りの推理ができなかったのである。鈍い私のまま、競馬に参加してしまったということだ。情けない・・・。

    この春、古馬G1ロードや3歳クラシック戦線を改めて見つめ直してみると、古馬キタサンブラックの活躍以外は、総じて「まさか、まさか、まさかは続くよどこまでもー♫」という結果が続いている。

    こんな流れは最後まで勢いづいてしまうものだ。
    オークス、ダービー、安田記念の残り3週間。ちょっと慎重になって出馬表を見る必要があるのかも知れない。

    浮かれることなく沈着冷静、もうひとつクールになりましょうね、競馬ファンの皆さん!
    私のような反省をすることは、決して建設的ではありませんから、ハイ。






    category: 競馬

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    2017 NHKマイルC~東京芝1600m 横山典弘・49歳の凄腕 

    埴輪馬

    月曜の午後から、急に体調を崩し、一晩我慢していたがどうにもならず、昨日は月に一度は必ず通っている主治医のもとに駆けつける状態になってしまった。病名は記さないが、かつて手術を受けた個所のひとつ(生まれてからこれまで私は6回身体にメスを入れている)が、明らかに再発の症状が出てしまったのである。

    適切な投薬を施し、おそらく1週間ほど様子を見ればいまの症状は治まってくるだろうとの診察だったが、ちょっと我慢しなければならない痛みがあるので、精神的にはきつい。「安静にして、疲れやストレスを避けましょうね」と言われたが、そういうことなら、はっきりとした原因には心あたりがないわけではない。

    日曜の夕方から、私は大きな失意と落胆に見舞われていたからだ。網の中に仕留めた黄金の魚を、引き上げる寸前に自分で網を裏返しにして逃がしてしまった漁師の心境、初めてのキスに燃え上がる気持ちで顔を近づけ合ったそのときハックション!とクシャミをしてしまった惨めなほどのいたたまれなさ・・・。こんなとき絶望的な疲労感やストレスを感じ取らなかったら人間ではないだろう・・・。

    NHKマイルCを迎えた先週末。いつものように録画しておいたGCの「今週の調教」を確かめて、自分なりのチェックを終えると、私は重要なヒントを掴んだ喜びにほくそ笑んでいた。

    リエロテソーロの最終追い切りを見て、心が騒いだのである。
    古馬オープン馬ラルーズリッキーと併せた追い切りで、騎乗者吉田隼人はゴール板を過ぎても手綱を緩めずそこから1Fほどびっしりと追い切ったのだった。この調教手法は、馬の状態把握を具体的にできる騎乗者の判断に任せきった勝負がかりの追い切りと言える。古い話だが、かつてミホノブルボンの3冠を阻止したライスシャワーに乗った的場均(現調教師)が、ここぞというときに見せた追い切りの必殺技だったのを憶えている。それを今回、吉田隼人がやってのけたのである。勝負に対する意欲と意志が漲っていた。
    リエノテソーロは、昨夏洋芝の札幌競馬場で2連勝。その後地方の門別、川崎でダート戦を2連勝して3か月休養。復帰戦の3月アネモネSで0秒2差の4着でNHKマイルCに挑もうとしていた。まだ本当の実力を大きな芝のレースでは現していない状態で、デビューから4連勝した馬なのに、言わば盲点となって人気も期待も上がってはいなかった。
    その馬が見せた勝負がかりの最終追い切りだったのである。

    2度見直した最終追い切り画面から、私が選んだ相手馬は、これまでのトライアルのプロセスや桜花賞皐月賞で、私が関心を寄せた馬たちの状態から、ルメール・モンドキャノン、田辺アウトライアーズ、デムーロ・カラクレナイ、横山典アエロリットを選んだ。どの馬も、最終追い切りでも私には好気配に映った。

    競馬に参加するとき、私は、最終追い切りの状態(これはタイムではなく、騎乗者に促されて走っているのではなく、自ら自然と走る気を見せている気配を確かめる)、次にレースの流れや展開を推理し、その次には騎手自身の勝負への意志を読み、同時にこれまでどんな相手と闘いどんな結果を残してきたかという格を考える。

    私にとって競馬の推理の根幹は、追い切り、展開、意志、格なのだ。3連単によほどのことがない限り手を出さないのは、3着には勝負を捨てて漁夫の利で突っ込んでくる馬がいる場合が多いからで、Win5は難易度が高過ぎるし、結局勝負に挑んだ1着2着馬の価値を重視すると、馬連やあるいは枠連が私には合っているのだ。

    このNHKマイルCで、唯一不安だったのは展開だった。先行して活路を開いた皐月賞男松山弘平がボンセルヴィーソで前を行くに違いないとは思ったが、あとはどの馬がどこにいるかという全体のイメージは、正直掴めなかったのである。「それは騎手がきちんと考えて騎乗するだろう」と騎手の手腕に任せるしかない状況こそが、大混戦とされた最大の要素だったろう。言い換えれば、明確にレースを支配するだけの軸馬という存在が不在していたことにもなる。

    パドックに現われた馬たちを眺め終えたとき、私は自分が選んだ数頭の馬たちの気配がいいのは理解した。馬場入場から返し馬。その時点でもまだ結論は変えなかった。

    締め切り時間まであと数分。リエノテソーロから均等に4点流しでいいかと思ったその瞬間、私に欲という悪魔が忍び寄って来たのである。

    最終最後に、私は1週間前の春・天皇賞のスタートを想い起してしまった。想い出さなくてもいいのに、敢えて想い出してしまったのだ。初コンビとなった横山典弘のゴールドアクターのスタートの瞬間をである。痛恨の出遅れ。結果的にレースには絡めずに終わってしまったあの瞬間を。

    8枠16番のアエロリット。大外枠からターフに出て、今までのように好位を確保してゴール前にもうひとつ伸びるのは牝馬にはシンドイだろうなぁ・・・。桜花賞もスタートでは出して行かなかったし・・・。選んだ馬たちの中で、最も不利なのは8枠のアエロリットではないだろうか?・・・。ならばリエノテソーロから内の馬たちを厚めに買う方が収穫も大きいのではないのか・・・。

    締め切りまでのほんの短い時間の間に、私は欲に走ってしまったのである。桜花賞でも応援していたアエロリットを切り捨てる形で・・・。

    ファンファーレが響いて、最初にターフに飛び出したのは横山典弘アエロリットだった。
    好スタートから馬場の良い外目を好位の後ろに下げて追走して、直線を迎えるともはや先頭に立とうとする勢いだった。

    そこにやはり好位の後ろの馬群から吉田隼人リエノテソーロが伸びてきた。勝負気配の最終追い切りだけではなく、専門紙に載った武井調教師のコメントでは、金曜日に東京競馬場のダートコースで1周半の調教、土曜日にはパドックなどを事前のスクーリングしたようだ。厩舎挙げての万全の勝負気配だったのである。

    しかし、そのリエノテソーロを、アエロリットはゴールまで寄せつけなかった。
    横山典弘がレースで育て、2歳下の義弟となる元騎手だった菊沢隆徳調教師が自ら調教に乗って育てたアエロリット。競馬一家横山ファミリーの申し子のような存在の馬である。

    勝ちタイム1分32秒3。大混戦と言われたが、結果は上り3Fこそ33秒台が計時されなかったが、11秒台のラップが続いた緩みのない流れの故であり、ハイレヴェルの闘いであったことは間違いない。こんなサバイバルゲームのような展開では、中団より後ろに控えた馬たちには出番は巡って来なかった。

    アッ・・・何と、また・・・グァーン・・・ズシーン・・・・。初心を忘れてフォーカスを絞り、その結果、欲張り過ぎて最大最高のチャンスを逃してしまった私の心の中の騒然とした叫びである。

    やはり信じ切ったものは救われるのだ。しかし途中で猥雑な疑いを抱いてしまった者は、無限奈落に堕ちていくことになる。桜花賞、春・天皇賞も横山典弘を応援していたのに、3度目の正直の格好のチャンスに疑いの気持ちをを沸き起こしてしまった。あげくの果て、病院通いの身になってしまったのである。

    1着と2着馬との配当の高さを知れば知るほど、悔しいまでの悔恨が募るが、全ては自業自得、感性の扉をもうひとつ開けなかった自分自身の愚かしさに嫌悪感まで湧いてくる。ああ・・・。

    でもやっと今朝は、主治医から処方された薬が効いてきたこともあり、おおらかな心持も戻ってきた。
    「先週末の結末からすれば、これで全ての悪運は尽きたのだ。底さえ打てば、これからはもう上昇の良運しかないじゃないか」
    などとポジティブシンキングをしている。度し難い奴というのが、そうだ、私の本性なのかも知れない。

    だって、これから、ヴィクトリアマイル、オークス、ダービー、安田記念と眼の前には大きなチャンスが続くのだから。そこに、山があったら登る。海があったら潜る。据え膳を食わぬは恥じ。と、粋で依怙地で意地っ張りな庶民の心意気で、生きてる限り前に進むしかないだろう。
    それでいい。


    PS:日曜日は本番前のエキササイズで、特別戦の9Rをベルキャニオンから馬連、10R をミツバから枠連でホップ・ステップと仕留めていました。最後のジャンプが、痛恨の欲張りだったということです。残念無念この上ないのですが、なので結局実質のマイナスは、したたかにもほんのわずかな観戦料程度で、病発症の原因は、やはり気持ちの落胆だったと思います。ご心配をおかけしました。




    category: 競馬

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    2017 春・天皇賞~京都・芝3200m 強烈なる3分12秒5!! 

    uma ime-ji 2

    3分14秒4。1997年春、田原成貴マヤノトップガンが、横山典弘サクラローレル、武豊マーベラスサンデーとの3強の闘いの中で計時したレコードタイムである。この記録は、当時しばらくの間は破られない驚異的なタイムと信じられていた。最後の直線で爆発させたマヤノトップガンのいっきの差し脚は不敵の凄味に溢れていた。

    3分13秒4。2006年春、「空駆ける馬」と称えられた武豊ディープインパクトが上り33秒5の余裕の力を見せつけて、新しいレコードタイムを更新した。このとき3馬身半差の2着に健闘した横山典弘リンカーンも3着馬に5馬身の差をつけて従来の記録を上回ったが、如何せん闘った相手が悪過ぎたというしかなかった。

    3分12秒5。2017年春、武豊キタサンブラックが2番手で先行して計時したレコードタイムである。上り4F47秒7、3F 35秒5という流れを確かめると、最後に弾けたというよりも、松山弘平ヤマカツライデンの前半5F58秒3という玉砕的なハイペースを、ハロン12秒(100mを6秒)平均で不屈に粘り抜いて刻んだレコードタイムだった。敢えて言うならば、およそ30年前の岡部幸雄シンボリルドルフのような強さを見せつけたということだろう。闘った相手のレヴェルを考えるなら、この崩れない粘りもまた驚異的だった。

    キタサンブラックは、ブラックタイドの産駒である。
    ブラックタイドは、ディープインパクトの全兄であり、04年のスプリングSを勝ち(この時点で5戦3勝)、おそらく皐月賞(16着惨敗)で脚部不安に見舞われなければ、その後2年の屈腱炎による休養もなく、1流馬としてのキャリアを積み重ねたはずの馬だった。2年後に復帰を果たしたが、その後は未勝利で競走馬としてのイメージは、「愚兄賢弟」の証明としか思われなかったのだった。

    しかし面白いことがある。ディープインパクトの産駒では、昨秋の菊花賞でサトノダイヤモンドが勝ち抜いたが、春・天皇賞を含めて3000mを超える距離での活躍馬はいない。2400m、2500mまでの華麗な産駒成績が嘘のようである。

    それに比して、ブラックタイドの産駒キタサンブラックは、ただ1頭だけで菊花賞を勝ち、春天皇賞もレコードで2連覇を達成した。その母の父サクラバクシンオーが競馬を知る者にはどうしてもマイル以下の短距離馬というイメージが重なるだけに、キタサンブラックの果てしなく粘り抜くステイヤーとしての特性が、さてどこから生まれて来たのかということは、血の摩訶不思議な結果としか言えない。

    それにしても、キタサンブラックは強かった・・・。サトノダイヤモンドの3着は、やはり外枠15番と距離適性だろう。同世代同士の菊花賞とは違い、春・天皇賞はより適性のある古馬たちとの闘いだったから、そうとしか思えない。

    えっ?私の成績?ハッハッハ・・・。

    いえね、皐月賞の悔しい敗北の後、マイラーズCで、ルメール・イスラボニータと武豊エアスピネルの馬連1点勝負で一息ついていましたが、またそれを吐き出す結果となりました。情けないことです。
    マイラーズCでは、直線で外から横綱相撲をせずに馬群を突き抜けさせたらイスラボニータはまだまだ捨てがたい馬だと判っていましたし、ペースが流れたらエアスピネルの力は紛れることはなく発揮してくるし、ブラックスピネルのペース攪乱戦法は連続では実現しないと判断していたことも幸いしました。久し振りに騎乗が戻った松岡正海(ここのところ騎乗に芯が入ってきていますし)のヤングマンパワーが気になりましたが3着でホッとしました。

    で、春・天皇賞は、菊花賞のセイウンスカイや、かのリンカーンを好走させた横山典弘の、何かやってくれるのではないかという手腕に期待して、初騎乗となるゴールドアクターに再度期待してみましたが、イラついていたのかゲートで立ち遅れて、レースの流れにも乗れずに、この時点(スタートの瞬間です)で、敗戦の覚悟を持ちましたよ・・・。
    ゴールドアクターも切れて弾ける馬ではないので、この出遅れが横山典弘の作戦なんだとは思えませんでしたし・・・。

    競馬という勝負は、資金が潤沢なら、有無を言わせず狙い澄ましたここ一発勝負です。
    それほどでもない資金なら、ホップ・ステップ・ジャンプの3段跳びに挑まなければいけないんですが、この3段跳びが難しいのです。ホップ・ステップまでは普段の学習を怠らなければ通過できるんですが、最後の決めとなるジャンプで決め損なうことが多いんです。こんな現実は十分理解しているんですが、そこに山があるから登りたくなるように、週末に競馬のビッグレースがあるからつい何とか仕留めてみたくなるわけで・・・。

    ともあれ、2017年春・天皇賞もまた凄いレースだったと脱帽しています。
    でもね、この私には、玉砕的逃亡をしたヤマカツライデンを除けば、結果的に2番手とそれを4番手からマークに徹していた馬のほぼ「行った、行った」となる単調な組み合わせは、丁々発止の騎手の手腕に期待するだけに、とても応援しづらい結果だったと負け惜しみを記しておきます。だって天皇賞の後、香港遠征のネオリアリズムで魅せたモレイラの騎乗に痺れましたから、ハイ。



     

     追記: 今朝この文章を書いたとき、どうやら私はポカンとしていたようです。抜群のスプリンター「サクラバクシンオー」と書いたつもりで、「サクラユタカオー」とキーボードを打って、ご丁寧にもユタカオーの短評まで記していました。            
    いやはやとんでもないアホでした。(たぶん春・天皇賞の負けがポカンとさせてしまっていたのでしょう)                 ある方が、私のポカンとしていた錯覚をコメント欄から指摘して下さり、正気になり正しく訂正しました。どんな文章においても、第3者の眼による「校正」の大事さを再確認した次第です。本当にありがとうございました。この場を借りてお礼を申し上げます。








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    2017 皐月賞・中山芝2000m~やっぱりな 

    由進作 左馬・幸運駒②

    何となく先週末は慌ただしかった。
    土曜の午後に、11Rのメインレース扱いとなった中山GJをTV観戦。もはや障害馬として大成した印象のある石神深一オジュウチヨウサンに何の不安も感じられず、勝つのはこの馬だと決めて応援した。オジュウチョウサンの特徴は、ただただジャンプが好きで、ジャンプすると普通の馬は消耗するのが常なのだが、この馬だけはジャンプをすると逆に元気バリバリになるのだという。平地レースでの実績はなかった馬だが、障害馬として新境地を開いた。特筆すべきセールスポイントがひとつあれば、幸運に出会えるというドリームを掴んだ馬だったのだ。それが、昨年の中山GJから6連勝、その勝利には暮れの中山大障害と今年の中山GJが含まれているのだから素晴らしい。

    この日、一昨年の中山大障害馬で昨年の大障害でも2着を確保した林満明アップトゥデイトとの馬連が、2倍を切るオッズだった。何となくだが、どうもこの組み合わせでは今日の中山GJは決まらないと思えてならなかった。いや、それほどの根拠はなく、競馬は勝負事だと考えると、2着には別に勝負に絡もうとする馬がいるのではないかとそう閃いたのだ。

    で、私は、内から平沢健治タイセイドリーム、難波剛健サンレイデューク、高田潤ルペールノエル、念のために林満明アップトゥデイトの馬連4点でレースを見守ることにした。

    アップダウンの激しい4250m(そこに大竹柵と大土塁がある)。しかしオジュウチョウサンの飛越は実に安定していた。石神深一の騎乗も、自信が漲って馬と一体化していて、実に堂々としていた。結果は楽勝の勝利。

    3コーナー過ぎから勝負を賭けて来たのは、難波剛健サンレイデュークで、林満明アップトゥデイトが離された3着。4着は平沢健治タイセイドリーム、5着は高田潤ルペールノエル。
    私は、1着馬から2、3、4、5着の馬の馬連を買っていたことになった。私にしては珍記録だった。

    夕方からは、私用をあれこれ片づけて、ついでに皐月賞の最終追い切りを確認して過ごし、翌朝は5時過ぎに目覚めて、新聞に眼を通しもした。

    朝8時半のレッドアローに乗った。今日は、気分を変えて所沢までにした。各駅に乗り換えて隣の新秋津で下車。武蔵野線の秋津まで歩いて、生まれて初めて秋津から船橋法典に向かった。東京競馬場のある府中本町までなら何度も乗っているのだが、秋津から船橋法典に向かうことはこれまで一度もなかったのである。路線図を見ると、まるで外環道に沿ってグルッと近郊を田舎巡りをするかのようで、何となく躊躇っていたのだ。半円形を思い浮かべると、A地点から反対のB地点まで、円周に沿って行くよりも直径を進む方が距離が短く感じるのは人情だ。

    でも考えようによっては、座って65分なら、いろんな乗り換えを考えると楽かもしれない。それでも初めての道中は何かと気を使うので、ゆっくりと眠っている訳にはいかないのは、私自身の性格だろう。

    結局、いつもの都心を抜けるコースと比べると15分ほど早く中山競馬場に着いた。
    そのまま真っ直ぐに「優駿」の部屋にたどり着く。すでに矢野誠一御大が到着していたので、今朝の武蔵野線の道中を話すと、
    「いえね、その昔府中で(桂)文生としこたま酔っ払って、そのまま何故か府中本町に行ったら、東京行きの電車があって、コリャァしめたともんだと乗ったはいいけど、東京までが実に長い道中で、文生はすぐに寝ちまったから覚えてないだろうけど、こっちは大変な思いをしたんだよ」
    と、苦笑しながら言われた。よくよく考えると、東京競馬場にいたのに、深夜の武蔵野線でグルッとひと回りして、何と中山競馬場経由で東京駅に向かったのだから、正気の沙汰ではなかったろう。酔っぱらっていたのが良かったというもんだ。

    8R。1000万条件の鹿野山特別芝2000m。前半5F60秒3のペースで勝ったのはルメール騎乗のテオドール。2着の田辺裕信カラビナとの馬連は持っていた。勝ちタイムは1分58秒7。古馬の1000万条件でこの時計なら、本番皐月賞は、1分58秒か、58秒を切るぐらいの決着となるだろうと予想した。あとは皐月賞まで、ジッとおとなしくしていようと決めた。

    この皐月賞で応援する馬を、私はすでに決めていた。最初に考えたのは、皐月賞に至るトライアル戦の中で最も印象に残るレースだったのはどれだろうか?ということだった。

    2つのレースが浮かんでいた。東京の共同通信杯と阪神の毎日杯。四位洋文スワーヴリチャードと松山弘平アルアインである。ここからどの馬に行くかが勝負の分かれ目だろう。加えたのは、ホープフルSの勝ち馬でルメールの乗るレイデオロと田辺裕信のアウトライアーズだった。
    ここまで3連勝の牝馬ファンディーナは闘った馬のレヴェルを考えると今日は無視できたし、アルアインを選ぶなら同じ池江厩舎のペルシアンナイトはいかにデムーロ騎乗だったとしても盲点になってしまったし、スワーヴリチャードに共同通信杯で負けた武豊ダンビュライトにも、ずっと乗っていたルメールが騎乗しないという理由で眼が行かなかった。

    皐月賞の直前に画面に流れた単勝オッズを見て、
    「ファンディーナが2.6倍で、アルアインなら22倍だよ。どちらを買うかは自ずと決まるんじゃないでしょうかねぇ」
    などと口にしたが、私自身は単勝は買わなかった。最終的に四位洋文に期待して、アルアイン、レイデオロ、アウトライアーズの馬連3点。武蔵野線初体験の気疲れからか、私の中の閃きの扉の鍵は今日は開けられなかったのである。

    1着松山弘平アルアインの勝利のポイントは、堂々と好位から正攻法の競馬に挑んだことである。そうできた裏付けは、毎日杯の好タイムでの勝利があったればこそだったろう。
    2着デムーロ・ペルシアンナイトは、何といってもインをするすると上がっていった3コーナー手前からの、デムーロによる忍者騎乗の成果だったと思う。
    それにしても池江厩舎のワントゥフィニッシュの結果とは・・・。何となく狐につままれた気分だった。

    1か月後の日本ダービー。私は今日選んだ馬たちに今日出走を回避した2億円馬サトノアーサーを加えて、推理に挑もうと思っている。

    いつものメンバーで法華経寺に向かう帰り道。並んで歩く文春の編集者F氏に、
    「あの原稿は面白かったですよ。カンカン・・という音色が今も頭に残ってるんですよ」
    と言われた。暮れに、書き上げたばかりの原稿を読んで下さいと渡していたのである。そのひと言だけで、今日中山に来て良かったと思えた。昨日の中山GJと今日の8Rの多少のプラスを、おまけをつけて吐き出した(いやJRAに預金してしまった)が、私にとっては、もう少し生き抜く希望となる一言だったのである。

    それからの2時間。いつもの茶店で春の宴に酔い、下総中山から隣の西船橋に戻って、また武蔵野線を旅して帰った。
    何と所沢からは、いつもより1時間早いレッドアローに乗れてしまった。

    次は、春天皇賞だ。雪辱のチャンスにしようと決意を新たにしている。







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    まさか・・嘘!・・ショボーン・・2017桜花賞・阪神芝1600m 

    由進作 勝運駒

    シリアや北朝鮮での情勢が不可解であろうと、現職総理ファミリーへの行政の忖度が不愉快な理不尽さに満ち溢れていようとも、あるいは教育勅語が現在の法に反して教育の現場で正当化されようとしていようとも、この桜花賞のソウルスターリングだけは黙って信頼できる存在だと信じ切っていた。

    パドックに現われたソウルスターリングは、いかにも気品に満ちて、まさに宝玉の輝きを放っていた。それは他馬を圧する風情としか思えなかった。抜けていたのだ。

    週内から、多くの競馬ファンと意を同じくして、私は勝つのはソウルスターリングだと決めていた。2歳牝馬チャンプとなった阪神JFでも、また桜花賞トライアルチューリップ賞でも、ただ1頭次元の違うホームストレッチでの弾ける印象的な脚力を見せつけていた。それもこの桜花賞と同じ阪神の芝1600mの舞台でである。この時点では、疑う方が邪道というしかなかったのだ。

    週末から当日にかけて降り注いだ雨が、桜花賞というレースにこれほどまでに影響を及ぼすなどということにも、厳粛な結果が出るまで私自身は考えが及んではいなかった。ソウルスターリングの母にフランスで乗ったこともある騎手ルメールが、血統的にも重馬場は大丈夫と競馬マスコミの取材に答えていたし、ちょっと気懸りだった私も、当日7Rに行われた1000万条件のマイル戦を見て、直線内からスーッと上り35秒3の脚で抜け切って勝った川田アナザープラネットのその勝ち方に、重い馬場の影響は思ったよりは少ないのかも知れないなと安心してしまっていたのだ。まさかソウルスターリング自身が苦にするとは・・・想定外のドラマとしか言えない・・・。

    ほぼ絶対の軸馬が決まっていれば、その絶対の牙城に対して、負けを覚悟の上で一瞬のスキを突こうとするのは、やはり経験と実績と勝負度胸を自らに育んだしたたかな騎手だろう。それしかないというのが、第77回桜花賞への私の自己納得できるアプローチだった。

    ならば結論は容易に出る。横山典弘、四位洋文、池添謙一、川田将雅を相手に選んだ。今の武豊は、ここ一発勝負よりはキタサンブラックを正攻法で勝たせる騎手だと思い、また好きなローエングリン産駒のフィリーズレビューの勝ち馬カラクレナイは、騎手田辺裕信には魅力はあったがデムーロが乗らなかったという理由で選ばず、またそのデムーロが選んだアドマイヤミヤビは、1分33秒2の好タイムで勝ち上がったクィーンCが結果的に仕上がり過ぎていたのではないかと判断して選択から外した。それが結論だった。

    前半34秒7のペースで過ぎて、残り1000mから勝負処の3コーナーに向かう辺り。私自身の推理は正しかったと思えてならなかった。

    中団外のいつも通りの場所をルメール・ソウルスターリングが確保して、それを射程に入れてマークするように、直後に四位ミスパンテール、その直後のインに武豊リスグラシュー、それをさらに見るように横山典弘アエロリットが、まるで絶対者の一瞬の綻びを待つように虎視眈々と取り巻いていた。4番手の好位から池添謙一レーヌミノルは、後方の馬たちを意識する様子もなく堂々と自分の世界を築いている。

    このとき私は自らの推理が的中したと信じ切っていた。自分の中の推理の扉を再び明けたと楽観までしていた。

    しかし・・・。

    大きな落とし穴が待ち受けていたのだ。大どんでん返しの戦慄が沸くような・・・。

    4コーナーを廻ってホームストレッチ。残り300m辺りの地点から池添謙一レーヌミノルが正攻法で先頭に立とうとする。外からルメール・ソウルスターリングが追い出しを始める。ここまでは大正解だった。

    しかし追い出され始めたソウルスターリングの脚勢が弾けない。もどかしくもがいているようで、これまでのゴール前の姿からすると別の馬のようだった。坂でもがき、坂を上り切っても弓を引くような瞬発力は影を潜めたままだった。

    1馬身ほどのレーヌミノルとの差は、結局は詰らず。ゴール寸前に武豊リスグラシューが馬群を縫って追い上げ、首差ソウルスターリングをも交わしていた。4着は田辺裕信カラクレナイ、5着は横山典弘アエロリット。共に後方から差してきた。

    ゴール直前に、私はGCのTV画面に向かって
    「どうした!?せめて耐えきるんだ!!」と、声を上げそうになったが、それも空しいと感じて、無言のままだった。自分の馬券よりも、絶対者(馬)と信じ切っていた存在が、この本番桜花賞で馬脚を現して唯一の弱点を見せたことに、大きなショックを感じていたのである。

    勝者池添謙一レーヌミノルは、ソウルスターリングの幻影に怯えることなく正攻法に徹して掴んだ勝利だろう。それがこのコンビのここ一発勝負であったはずだ。同時に何よりも味方したのは、天が配剤した今日の馬場だったと言えるのかも知れない。

    ソウルスターリングを含めて、今日私の狙った人馬たちは、勝負処の騎乗姿を改めて確かめてもその主張は通していた。ただただ運に恵まれなかったのは、降雨の影響を受けた重い馬場という理由だったろう。そう思う。

    時に勝負の神様は、気まぐれな心を見せつけるものだと、その無情な残酷さを感じざるを得なかった。ああ・・・。

    今週末は、牡馬クラシック皐月賞。中山に行く予定なので、何とか気まぐれな神様ともお友達になりたいと願っているのだが・・・。

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