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    Tsuruki Jun<鶴木遵>の原風景 《絶対零度》

    鶴木遵の本、新しい挑戦、趣味である競馬、将棋の駒、男の手料理、めだかやミジンコ飼育、犬猫のよもやま話、など四季折々に感じたことを発信していきます。

    私を変えた駒 一乕(いちとら)作 安清書 彫駒 

    一乕作 安清書 彫駒①
    一乕作 安清書 彫駒②

    思い起こせば、去年の3月、この駒を手に入れるまで、私はとりわけ将棋の駒に関心があった訳ではなかった。

    高校生のころ、私が伯父から教えてもらったのは、囲碁であり、木谷一門の勢いや故藤沢秀行のセンスに打たれた故もあって、その後もずっと囲碁を嗜みとしていたのだ。

    しかし私の病の所為で、遅くに生まれた息子が中学に入る前から、息子と将棋を指す楽しみを覚えた。私自身は囲碁を打ちたかったのだが、息子は囲碁には余り興味を持たず、何故か将棋を指したがった。将棋本を読むことは厭わなかったが、囲碁の本は積んでおくままだった。

    ならば将棋を指そうと決めたのだ。あまり人とは接しない山の暮らしだから、相手が息子であっても、とても大事だった。そもそも相手がいなければ、勝負は始まらないからだ。

    最初は、町のリサイクルショップで購入した天童楷書の廉価品を使っていた。それで疑問すら持たなかった。盤もヒバの2寸盤だった。長く親しんだ碁盤や碁石にはこだわりを持ってはいたが、将棋の棋具については、それで十分満足だったのだ。

    3年ほど経って、お互いに、何とか人並みに指せるようになったとき、ようやく自然と盤駒に眼が向くようになった。とは言え、何を求めていいのかは少しも判らない。将棋本しか情報はなく、歴史に残る名工の作品など見たこともなかった。見たこともなければ、評価の仕様もない。

    すでに盤は、桂の3寸盤に変わっていたが、駒は以前のままだった。

    そんな3月のある日、たまたま見たオークションで、一乕作安清書の彫駒と出会ったのである。

    今でも何故だか判らないが、とにかくそのとき、これだ!と確信したのだった。これを落として手元に置かねば何も始まらないと。まるで突然に雷に打たれたような、そんな興奮を覚えていた。

    駒が手元に届いたとき、私は再び雷に襲われた。それまで道具と思っていた駒が、アーティスティックな作品なのだと思い知らされたのである。一乕がどんな駒師なのかは何も知らなかったが、こんな作品を残した男がいると思うだけで、さらに興奮が高まっていった。

    その瞬間から、私は勤勉な駒の勉強家となった。
    駒師一乕を調べると、初代大竹竹風や金井静山を知ることになったし、さらには明治以降、天才とか近代駒師の元祖と呼ばれる龍山、さらには奥野一香、そして木村文俊や影水の存在も、いっきに学び覚えていった。それ以後、いったい何枚の駒写真を見続けたろうか。

    私と息子の将棋盤は、卓上盤ではあったが、この一乕の駒を並べて勝負するために、たちまちのうちに本榧3寸盤に代わった。大きな手術の後遺症もあって、正座は勿論、長い時間じっと座っていられない今の私には最善の選択だったと思う。それでも、その後に脚付き5寸の品のある榧の盤も買ってしまうアホだったが・・

    将棋の駒には、駒の芸術的世界が確かにある。だからこそ小さな5角形の黄楊の駒の中に、その存在理由を賭ける男たち。商売を乗り越えて、生き様を露わにして、同時に競争者を駆逐する勢いで駒に自らの命をも賭すように表現に挑む男たちに、私の関心は自然と高まったのだ。

    その後、奥野駒も影水の駒も、実際に手にとって見る幸運な機会も得たが、見れば見るほど、知れば知るほど、駒に表出される創り手の呻きが届いてくるように思えてならなかった。何とかこの駒師の世界を、原稿作品にしたいとまで、実は私の心を高めていたのである。

    そんなある日、私は、意を決して一人の現代駒師と出会った・・・

    この続きは、後日ということにします、ハイ。


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    category: 将棋駒

    thread: 極私的将棋駒の快楽  -  janre: 学問・文化・芸術

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    コメント

    Re: Re: 一帍の駒

    > I.Iさん
    > 一乕の彫駒のお問い合わせいただき、ありがとうございます。
    > ただ、ブログに書いたように、私もこの彫駒には、偶然にオークションで出会ったのです。
    > その後、拙い知識で調べましたところ、どうやら一乕の彫駒は、今となっては珍しいもののようです。
    > 確か酔棋さんのサイトでも、酔棋さんご自身が、「彫埋め駒は診たことがあるが、まだ彫駒は見ていない」
    > と記されていました。
    > そんな事情ですので、入手方法は判りません。お役に立てませんが、もし私の駒写真でよかったら、連絡先を教えていただければメールでお送りしますし、何かのご質問にもお答えできるかもしれません。
    > それにしても、一乕の盛り上げを安清・錦旗と2組お持ちとは羨ましい限りです。他の書体はないですから。
    > これからもこのブログを覗いて見てくださいませ。よろしくお願いします。    

    Jun.Tsuru #- | URL | 2012/01/14 15:41 - edit

    Re: 一乕の彫駒のこと

    I.Iさん
    ブログでのお答えにしておきます。
    すでに一乕作安清と錦旗の盛り上げ駒をお持ちだとのこと、憧れです。
    私が所有する安清彫駒は、おそらくサイズ的には、I.Iさんが所有されている駒と同サイズでしょう。現代駒からすると、少々小振りで、そのために逆に指しやすい駒です。現代駒が、いつごろから、どういう理由で、大きい駒形になったのかは、正直言って、今の私には正確には判りませんが(おそらく高値で売りぬく盤駒商の意向でしょう)、古駒と称される名工の駒は、実に指しやすいものであるということは、この一乕作彫駒と出会った事で理解できました。初代竹風の錦旗彫駒も持っていますが、同様です。
    私がこの駒を手にして以来、オークションで一乕作の彫駒に出会ったことはありません。幸運だったといえますが、その後、ある意味でマイナーな駒世界に足を踏み入れてしまったことを思えば、本当は不幸の始まりだったのかも知れませんが・・ただ私はそんな流れを受け入れております。
    板目交じりで、杢交じりの彫駒は、いい味が出ております。(ブログ写真より実物の方が魅力的です)いつか機会を得て、実物を見ていただきたいと願っております。
    ただ、私は、ご所有の安清と錦旗で勉強されたほうが、棋力向上には、弘法が筆を選ぶという意味ではよろしいかと思いますがどうでしょう?

    Jun.Tsuru #- | URL | 2012/01/17 20:47 - edit

    弘法は筆を選ぶ

     鶴木さんのご意見に従い、現在所有の駒で、
    将棋の勉強をしてまいります。
     ありがとうございました。

    伊駒伊織 #- | URL | 2012/01/19 08:15 - edit

    Re: 弘法は筆を選ぶ

    伊駒さん
    これからも、このブログをよろしくお願いします。
    忌憚のないご意見を下されば、励みになります。
    これから先、もし一乕作安清彫駒を手放すことがありましたなら、
    真っ先にご連絡しますから(苦笑)
    家人からは、どうせ箱にしまっておくだけなんだし、本当に欲しい方に
    お譲りすればいいのになんて、あっさり言われてもいるんです(トホホ・・)
    これを機会に末永いお付き合いをお願いします。     鶴木

    Jun.Tsuru #- | URL | 2012/01/19 08:49 - edit

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