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    Tsuruki Jun<鶴木遵>の原風景 《絶対零度》

    鶴木遵の本、新しい挑戦、趣味である競馬、将棋の駒、男の手料理、めだかやミジンコ飼育、犬猫のよもやま話、など四季折々に感じたことを発信していきます。

    J Cの日、大内九段とのダイアローグ~喫煙室にて 

      由進作 勝運駒

    R..ムーアの怒涛の活躍に驚かされた昼下がり。

    同じテーブルの大内九段と眼が合ったそのとき、どちらかということもなくごく自然に、
    「行きますか?」
    「行きましょう」
    と、互いに意志が通じ合って、そのまま向かったのは、喫煙室。タバコが吸えないのが、喫煙者には逆に不健康なのだ(?)

    火を着けて、その煙を吐き出しながら私が言った。
    「先生、旭日双光章という勲章をいただくと、普段の生活に変化が現れるんですか?」
    「いやいや、何にも変わりませんよ」と答えて、目を細めて微笑する大内九段。
    その後は、競馬を小休止して、いろんな話になった。

    途中で将棋駒の話になると、決まって大内九段は、私に聞いてくる。
    「由進さんはお元気ですか?」
    「いや、しばらく連絡を取ってはいないんですけど、元気でしょう」
    「春になったら、あれ行きましょうよ」
    「あれですか」
    「そうです。四国巡礼。でもここ1か月前から原因不明で脚が痛くて、弱くなってますからね、由進さんが勧めてくれたあのミニ88か所巡り」
    「確か、四国山公園の2Km歩いて88か所が全部巡れるという便利コースですよね」
    「うん。それなら1時間ですからね」
    出石(由進)作の大内書『怒涛流』が完成してから、大内九段の駒師出石への信頼は大きくなっている。期待した通りの仕上げで、その腕前を発揮してくれたからだ。だから、こうも言った。
    「東京に出てきたときには、私の処に泊まってくれたらいいんですよ」
    「それは由進自身が恐縮してしまいますよ」
    「ハッハハ・・そうでしょうかねぇ」
    「由進さんも将棋世界に紹介されて、その腕は全国に紹介されたんです。作品の価格も公認されたということですからね。これから私が駒をお願いするときには、その腕前をさらに足した価格でお願いしなければなりません。それが駒師を育てるということでしょうから」
    「でも本人はこれまで通りでと言いますよ」
    「いや、それじゃあいけません。由進さんには、駒師としてもっと伸びて欲しいですからね。人というのは、精進してステップアップすると、見える風景も周りに現れる人物も変化していきます。そのときに,さらに脱皮するために、これまでをどう整理していくかということは大事なことなんですよ。それが成長なんですからね」
    「春の新橋での大内コレクション展示即売会は盛況でした?」
    「私も74歳ですからね。これまでに集めた棋具の一部を、お好きな方にお譲りしようと考えたんです。あのときね、影水の駒も出していたんですが、半値に値切ろうとした方もいました」
    「信じられない」
    「この際お譲りしようかとも思いましたけどね、いやいやこの方が、私が大事にしてきた駒を次にどうされるかと考え直して止めました。何となく気が合わない感じがしましたから」
    「まあ展示即売会となるといろんな人が来るでしょうから」
    「そうですね。でもこのままだと腕のある作者がどんどんいなくなってしまうようで心配です・・・」

    話はまだまだ続いた。もはや孫弟子となる若手棋士藤森哲也4段や梶浦宏孝新4段のことを語るときなどは、いかにも楽しそうだった。未来への可能性を秘めた若さというのは、どうやらすでに人生のひと仕事を終えてきた年長者に、楽しい夢を与え得るものなのだろう。そして伝統や文化はまた新たに積み重なっていくのである。

    アッという間に次のレースの時間となり、私たちは喫煙室を離れた。
    J Cが終わったとき、私は、戻ったのは「賽の河原」だったと思い知らされることになろうとは、そのときには明るい近未来を夢見て気づく由もなかったのだった・・・・。(まあ、賢者の愚行はとかく世の中には多いことなのだよ、諸君!!・・・?・・ああ・・・)






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    category: 異化する風景

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