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    Tsuruki Jun<鶴木遵>の原風景 《絶対零度》

    鶴木遵の本、新しい挑戦、趣味である競馬、将棋の駒、男の手料理、めだかやミジンコ飼育、犬猫のよもやま話、など四季折々に感じたことを発信していきます。

    書体への誘い 

    影水 虎斑 巻菱湖➀   94巻菱湖虎斑連盟  (名品:菱湖抜粋)

    先日、と言ってももう2ヵ月以上も前のことだが、こんなやり取りがあったことを想い出した。

    とある女流棋士と駒の話になったときのことである。

    その女流棋士は、「菱湖」が好きだと言った。

    だから私は、敢えて訊ねた。「誰のどんな菱湖が好きなんですか?」

    「エッ!?菱湖って色々あるんですか?」

    「スタイルの基本はあっても、誰が作るかによって微妙に味わいが違うんですよ。もっと言えば、菱湖の形だけをなぞったものから、菱湖の精神を込めて受け継いだものまで、実は千差万別なんです。同じ作者にしても、進化成長がありますから、いつ頃に作ったものかを知っておくと為になります」

    そう言いながら、そうなんだよなと、私は一人頷いていた。同じ書体の駒を、1組か多くて2組ほど手元に置いて大事に使うのが、ほとんど多くの駒ファンだろう。比較して書体を考えることなどあまりないし、おそらくその必要もないのだ。
    木地の好き嫌いは一目で判るが、書体というのは、イメージでしか捉えられてはいないようである。例えば「菱湖」なら、王と玉が特徴的だなどと。私も、最初の頃はそうだったに違いない。

    でも自分でどうにか駒の1組を作ってみようとしたときから、書体を見る眼が違ってきた。
    メジャー書体と言われる「錦旗」、「菱湖」、「清安」、「水無瀬」などにしても、基本の共通項はあるにしても、王将から歩の1枚に至るまで、それぞれに独特な配慮がなされているし、作り手もまたそこに何とか自分らしさを込めようともしているのである。

    最初の頃は、それぞれの書体の歩の違いを頭の中で思い浮かべるのにも戸惑ったが、下手くそでもいざ作るとなると、きちんと整理して覚えきる必要も生まれてくる。でも、作らなければ、無頓着でいられるのも確かである。

    だから今回「長禄」に挑んだときには、敢えて蛍光ペンとコピー用紙を用意して、取り敢えず書体を、特徴を意識しながら模写するところから始めてみた。やってみると、書体に込められた力感あふれた勢いやアクセントが伝わってきた。書体のポイントが、浮かび上がってくるようだった。

    この書体における「序破急」やみずみずしい「リズム」が解らなかったら、おそらく駒のことは語れないのだ。
    書体の模写は、ぜひとも皆さんにもお勧めしたい。筆よりも蛍光ペンの方が形を強調できて効果的だ。

    駒というのは、手元で何度も眺めたり、磨いたり、使ったりするものだから、名の通った駒師の作であっても、自分に合わない感性や瑕疵を見つけてしまうと、その瞬間からその駒への思いがいっきに冷めて飽きてしまうことがある。

    所謂、「化けの皮が剥がれる」ということなのだろう。いやいや、こんなことは人間でもあるではないか。善人とされていた近所の人間が、実はその裏で変質者のストーカーであったり、高邁な趣味人と褒められていた人間が、あざとい利ざや稼ぎの商売人であったり、バカ呼ばわりされてた変人がノーベル賞ものの学者であったりする例が。駒も同じである。本物は、時間の蓄積が加味されると化けて輝くが、「化けの皮が剥がれる」ものの方が圧倒的に多いのだ。

    名品の駒写真を見て、憧れたり能書きを垂れるよりも、まずは手元にある駒の模写をするか、1組の駒を作ってみることで、等身大の批評眼を養ってみることが、費用対効果の優れた大事な出発点となるはずである。

    幸運にも思いの外の掘り出し物が手元にあることを知れば嬉しい発見となるし、決意して入手した名のある名工の作がそれほどでもなかったと知れば、次にはより慎重に作品を眺めるようにもなる。

    最初に戻れば、誰が、いつ、どんな風に作った「菱湖」なのかを知ることを学ばなければ、新鮮な世界は見つからないのではないかと思えてならないのだが、どうだろう?・・・。

     奥野作菱湖 R氏所蔵   DSCN1305.jpg  (名品:菱湖抜粋②)







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    category: 将棋駒

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