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    Tsuruki Jun<鶴木遵>の原風景 《絶対零度》

    鶴木遵の本、新しい挑戦、趣味である競馬、将棋の駒、男の手料理、めだかやミジンコ飼育、犬猫のよもやま話、など四季折々に感じたことを発信していきます。

    刺激の連鎖 

    20140611 H 淇洲 龍王 彫 ②

    刺激が連鎖するというのは、よく言ったものだ。

    その昔、東京宝塚劇場で小道具のバイトをしたことがある。宝塚雪組の公演で、麻美れいと遥くららが主演だった。ビルの5Fぐらいの高さに登って、幅50cmほどの上下可動式のブリッジに渡り、豆電球のホタルを飛ばしたり桜吹雪を乱舞させたりしていた。どちらかというと高所恐怖症の気があるので、踊り場からブリッジに渡るのが緊張するほど怖かったのだが、渡ってしまえばそれなりに楽しかったことを憶えている。

    御存じの通り、宝塚というのは女の園のエンターテイメント劇団だ。初日からしばらくは、出演者たちにもそれなりの緊張感が漲って、誰もが溌剌としている。が、千秋楽に近づくと、少しづつ疲労が重なって、それが、傍にいても見て取れるようになる。昼夜の公演が続き、唄い、舞い踊り、芝居を演じるのだからそれも当然だろう。そんなある日、出演者の中の一人が生理に見舞われる。と、何か緊張の糸が切れたように、翌日からいっきにそれが全体に広がって、出番前にそこかしこにお腹を抑える出演者が目につくようになって、幕内全体にモアッとした重苦しさが伝わったのだ。勿論、客席にはそんなことはいささかも気付かれなかったが。あのとき私は、緊張した集団の中では、生理が連鎖するものだと知った。

    何でこんな昔のことを想い出したのかというと、あるギリギリの地点では、たぶん緊張と刺激は連鎖するものだということを記したかったのである。

    第3の新人、3番弟子のHさんの登場で、私を含めて私の周りにはある種の緊張感が走ったようだ。第1作の彫りを確かめて、ある種の刺激が生まれている。

    2番弟子の杉並のM君から、昨日の夜にメールが届いた。近況報告だったが、そうしたくなったのも大阪のHさんの登場が大きいのだろう。最近作の根付写真も添付されていた。
                                                 M 根付

    同時にHさんの初作の彫りに驚いたことと、自分自身は第4作の「与志於迦書」彫駒が、彫りの仕上げの最終段階に来ていて、まもなく漆を入れる予定と報告されていた。「与志於迦書」というのは、駒師吉岡由進の手になる楷書体の新書体である。と言っても、書体が出来上がったのはもう数年前になるのだが。さて、どんな駒が仕上がるか楽しみにしておこう。

    このM君、勉強のために手元に名駒を集める収集癖の情熱は、いまだ盛んで、遂に今度は静山作の「錦旗」盛上げ駒をも購入してしまったようだ。眼を養うのは必要だが、ちょっと急ぎ過ぎな印象もある。でも今度見せてくれるそうだから、それはそれか。いやそれでもやはり余計なおせっかいだが、過去の名工作品も良いけど、本当に手に取って見てみたいのは、駒作りをするあなた自身の作品だよと、敢えて愛ある憎まれ口を叩いておこう。

    刺激の緊張は広がるのだ。かくいう私も、ここ2・3日、ひどい肩こりに見舞われている。
    何故か?それも3番弟子Hさんの出現に起因する。1番弟子清征が、すでにこのHさんと電話で話をしていると聞きつけて、連絡を取ったのだ。そのときいろんな話になって、(初作であれだけできるならという刺激を受けたからか)、私も駒木地を一組手に入れて彫ってみようかなと思わず口にしたところ、

    「ぜひやってみて下さい。それなら、以前に何枚かを彫った菱湖の一組が手元にあるんですけど、それで良かったらプレゼントしましょうか」
    「エッ?甘えちゃっても良いのかなあ」
    「いいですよ。甘えちゃってください。何枚かは彫りましたけど、字母紙も貼ってあるし、木地も知り合いの三重に工房のある木地師Kさんの30年程前の木地ですから、締まっていて彫りやすいと思いますよ」

    たぶん私は、清征から挑発を受けたのかも知れない(苦笑)。でも、駒作りに本格的に戯れるいい機会だと思って、心から感謝した。
    翌日には一式が届いて、それからは時間を見つけては、せっせと戯れている。私にはもったいない程のしっかりと引き締まった島黄楊柾目の木地で、嬉しくなってくる。と同時に、数枚は清征がすでに彫ってあるから、困ったときのヒントは豊富にあるのだ。
    私がこんな気持ちになったのも、また清征が手元にある一組をプレゼントしてくれる気持ちになったのも、きっと刺激を受けたからだろう。お互いの立場で、駒のことをもう一つ知って、さらに前に行きましょうとの呼び掛けであったに違いない。

    今、肩こりに見舞われながらも、すでに私はいくつかのことを発見している。
    ともすれば初心者は、彫るのではなくホジクッてしまいがちなこと。
    彫台を持つ左手親指で印刀を押し出す感覚。
    印刀を当てる角度の重要性。
    文字を良く眺めて、自らの物として、その一つの文字をパーツに分ける感覚。
    気持ちがだれると、即、彫りがいい加減になる現実、等々・・・・。

    このチャレンジがどうなるかは、まだ予想もつかないが、何とか踏ん張って、私もトントン錆で埋めてみる処まではやってみるつもりだ。それには、龍王、龍馬、そして桂馬の、私にとって大きな関門を乗り越えなくてはならないが・・・・。

    それにしても、それなりに集中すると、眼が疲れてクシャクシャする。ひょっとしたら駒作りの最大の難関は、眼との闘いにあるのかも知れない・・・・。










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    category: 将棋駒

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