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    Tsuruki Jun<鶴木遵>の原風景 《絶対零度》

    鶴木遵の本、新しい挑戦、趣味である競馬、将棋の駒、男の手料理、めだかやミジンコ飼育、犬猫のよもやま話、など四季折々に感じたことを発信していきます。

    6月29日宝塚記念~阪神2200m 

    埴輪馬

    ゴール前から、横山典弘の顔には笑みが浮かんでいた。

    ゴールイン後には、その笑みは、「いやいや、これは・・・」という何とも言えぬ満足感と、呆れたような苦笑いに変わっていた。

    シーズン上半期の掉尾を飾る梅雨の季節のG1宝塚記念。12頭の出走馬だったが、中距離の実績馬が揃って、例年以上の中身の濃いレースとなることは、見守る誰もが予想し得たことだったろう。ただしそれは、梅雨の季節の雨の気まぐれが影響しなければという条件付きだったのだが・・・・。

    案の定、週末の天気は荒れて、どんな馬場になり、それがレースにどんな魔性の顔を見せつけるかということは、ゲートが開くその瞬間まで誰もが正確には掴み切れてはいなかったろう。

    水を含んで力のいる馬場。そして阪神のゴール前に急坂のあるコース。切れ味を発揮して実績を積み上げた馬たちにとっては、最も呪わしい鬼門とも言うべき状況が訪れていたのである。

    となれば、そんな馬場を底力で克服することを最も得意にするのは、鞍上に横山典弘を迎えたゴールドシップだと、競馬の経験値が高いファンならすぐに思い当たる筈だったが、それを絶対の結論とするには、昨年春以来の、気分を害すと自分でレースをいとも簡単に捨ててしまうような、気ままな気分屋ゴールドシップの姿を思うと、いかに天才肌の横山典弘の騎乗であろうとも、また騙されてしまうのではないかという疑心暗鬼を無条件に拭い去る訳にはいかなかった。それでも多くのファンが1番人気に押し上げたのは、逆にゴールドシップの余りに人間的な個性を支持したのだろう。

    騎手横山典弘にも、見様によっては気分屋の雰囲気はあったかも知れない。勝負にならないと見定めたときには、どちらかと言えば、馬のためにしゃかりきになって無理はしないタイプの騎手である。しかし勝負になると踏んだときには、いかにも動物的な感性で馬を導く天才的な勝負感を持っている。似たタイプには四位洋史がいるが、現在のNo.1は横山典弘である。武豊の論理性合理性とは異質な才能だ。

    その横山典弘とゴールドシップのコンビ結成は、圧勝か惨敗のどちらかしかないのは自明である。それが、レース前のハラハラ感となって、見守るファンの共通認識に高まっていた。

    レースの上り3F33秒の瞬発力ある切れ味を誇る馬たちは、世界のジェンティルドンナ、未冠の雄ウィンバリアシオン、2冠の踊り子メイショウマンボ、あわやのJC惜敗牝馬デニムアンドルビーと揃ってはいたが、今日の馬場に泣かない馬がどれかと言えば、それは走ってみなければ判らない状況としか言えなかった。重い馬場を本当に得意とすると断言できる馬は、この中にはいなかったが、気が向けば底力で走り切るゴールドシップだけは馬場には泣かないと言い得た。

    だから、G1レースの権威が保たれるためには、ぜひとも条件の揃った横山典弘ゴールドシップの圧勝劇を期待するしかなかったのである。

    ゲートが開いて、福永祐一ヴィルシーナが、前走ヴィクトリアMの復活を再現して逃げる態勢を作った。

    横山典弘ゴールドシップは、他馬と同じタイミングでゲートを出たが、そのまま後方に下がり、歓声の上がるスタンド前で馬がまた行く気を見せて好位に上がってきた。出たり入ったりする競馬は本来は勝負の負けパターンなのだが、横山典弘はあくまでも馬の気に任せる騎乗に徹していた。

    前半5Fは62秒4。やはり馬場の所為なのだろう、スローペースだった。

    気分を害されずに、言わば我儘を通して走るゴールドシップは、3コーナーを廻ると勢いを増して前に行こうという意志を見せ始めた。他馬と競争していることなどは超越して、満たされた気分で走る快楽に身を委ねているようだった。

    そんな人馬を見て、ふと私は思った。これは、父ステイゴールドの血の為せる技なのか?それとも母の父メジロマツクィーンの血の為せる技なのか?と。いやいや、どちらも激しい気性の馬だったなぁ・・・と。

    第4コーナーを廻って先頭に立ち、そのまま刻まれたゴールドシップの圧勝劇。

    2分13秒9。上り4F47秒4、3F35秒6。この決着タイムには、今日の宝塚記念の特徴が見事に刻まれている。やはり底力が必要な馬場であり、切れ味勝負の馬たちは、馬場に脚を取られて泣かされたのだ。そして高速馬場のレースではゴールドシップは気分を害すが、こんな時計の掛かって力が必要な馬場なら、ゴールドシップの独壇場なのだと。

    レース後の勝利インタビュー。横山典弘は言った。
    「今日はゴールドシップがちゃんと走ってくれました・・・大外8枠がいい枠でした・・・史上初の宝塚記念連覇?メジロライアンのときと同じくらい嬉しい・・・」

    宝塚記念は、ゴールドシップの為にあったようなG1レースとなった。多分これから先、私の記憶の中の絵日記には、こう記されていくだろう。2014年宝塚記念は、動物的な感性の天才が、狂惜しく我儘な天才に乗って、鮮やかに圧勝したレースだった。勝負の女神は、そんなコンビの為に力の要る馬場を演出して準備してもいたのだと・・・・・。





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    category: 競馬

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