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    Tsuruki Jun<鶴木遵>の原風景 《絶対零度》

    鶴木遵の本、新しい挑戦、趣味である競馬、将棋の駒、男の手料理、めだかやミジンコ飼育、犬猫のよもやま話、など四季折々に感じたことを発信していきます。

    旅の終わり~大内九段訪問 

    無事に今回の上京の最大イベントであるTV対局を終えた翌朝、由進と私は連れ立って神楽坂の大内九段を訪ねた。

    遅くまで飲み明かした前夜は、結局、東京の最高級ホテルと噂される(?)粋鏡庵ホテルの和室で熟睡させていただいた。フルコースの朝食までも御馳走になった。ありがたきかなである。

    朝、粋鏡庵ホテルを出発した直後、問題が発覚した。由進は、昨日の対局に全神経を取られていたのか、何とこの日届ける予定の一組の「怒濤流」の駒を、横浜の実兄宅に置いた旅行バッグの中にうっかり忘れてしまっていたのである。

    さてどうする?

    「宅急便で送れば明日にはつきますよねぇ・・」
    「でも、せっかくですから今朝持っていった方が・・これから横浜に回ってから神楽坂に行きましょうか?」
    「いやそれも・・ちょっと待って下さいよ」
    と、由進は携帯電話を手にして、
    「あっ、兄貴。あのさぁ、今日何か予定がある?・・うん、そう。じゃあ、オレと一緒にスカイツリーに行かないか?兄貴、まだ行ってなかったろ?」
    電話から届く実兄の答えを聞くと、
    「オレ、神楽坂にいるからそこまで来てよ。ついでにバッグの中にある駒を持って来てくれない?そう、それ。じゃあ、神楽坂で待ってるから」
    と、電話を切った。
    隣にいた私は、由進の顔を見てニヤリと笑みを浮かべながら言った。「お上手ですねぇ」

    由進の三歳上の実兄は、現役の頃は横浜の消防士で、趣味は落語。好きが高じて、定年退職して時間ができた今では、高座着を身にまとって、ボランティアで老人ホームなどを訪問して落語を一席演じてもいるのだという。「笑えば、人は元気になる」と断言する男らしい。最近、肺の調子を悪くして、元気バリバリには歩けないが、楽しいことなら何でもやってみる意欲は失ってはいない。だから初めてのスカイツリー行きの言葉に乗ってきたのだ。

    10時に大内九段宅に着くと、
    「やあやあ、遠路遥々よくいらっしゃいました」
    と、明るい笑顔で迎えてくれた。
    挨拶もそこそこに、昨日の対局の話になった。棋譜を手にした大内九段は、フンフンと呟きながら頭の中で駒を動かした。全てに目を通して、
    「由進さん、なかなかやるじゃない。いやぁ、ここまで指すとは、正直思ってなかったなぁ」
    「54桂は見えたんですけど、42龍が見えなかったんで・・・」
    「いや、結果はともかく、たいしたもんです。相手は佐藤九段でしょ?」
    「ハイ」
    「控室は大騒ぎでしたよ」と、私が報告した。
    それを機に話題が変わり、
    「で、駒は?」
    「あと30分ぐらいで届きます」
    大内九段が怪訝そうな顔をした。由進が説明した。
    「いえ、横浜から兄貴が持って来てくれることになって・・」
    そのとき由進の携帯が鳴った。
    道順を伝えると、何と大内九段が席を立って迎えに出てくれた。

    初めて会った由進の実兄は、落語好きが顔にも表れていて、どことなく面白そうな雰囲気を持っていた。
    じっと駒を見て、大内九段が言った。
    「いやいや、作る度に良くなってますねぇ、由進さん」
    「ありがとうございます」
    「将棋世界に載った駒も良かったし・・これは稽古用に使わせていただきます」
    そのとき、チラッと大内九段の手にある駒を見ながら、実兄が言った。
    「家にも弟の駒があるんです。確か5作目の駒だったかな。それとこの駒を見比べると、なんか別の人が作ったような感じがしますよ」
    全員の口から笑いが漏れた。

    それから話は盛り上がって、実兄は小噺を披露した。喋る植え木に声を掛けると、植え木が応える。でも、中に何も答えない植え木があった。よくよく訳を確かめると、それは、くちなしの植木だったとさという小噺だった。

    これに刺激を受けたのか、大内九段が得意の詩吟を披露した。「宝船」。響き良く心地良い詩吟が奏でられた。

                  DSCN1292.jpg

    やはり楽しい時間はすぐに過ぎていく。昼前に大内宅を出て、駅で私は、スカイツリーに行く由進兄弟と別れた。
    由進は、この後横浜に滞在して12日に八幡浜に帰る予定である。
    5日からの1週間の上京。多くの人と会い、多くの人に愛された1週間。飲み干した酒もほぼ日本酒5升に達したろう。
    今回、私は改めて由進の別の顔を見ることもできた。4日間も行動を共にしたからだ。明日からは、少しは仕事に戻らねばならない。それにしても、面白く楽しい日々だった・・・。

                     チ 由進 怒濤流(由進=出石作怒濤流)






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    category: 将棋駒

    thread: 極私的将棋駒の快楽  -  janre: 学問・文化・芸術

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