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    Tsuruki Jun<鶴木遵>の原風景 《絶対零度》

    鶴木遵の本、新しい挑戦、趣味である競馬、将棋の駒、男の手料理、めだかやミジンコ飼育、犬猫のよもやま話、など四季折々に感じたことを発信していきます。

    4月5日再会~駒師出石&清征① 

    4月5日(土)午後1時半。池袋東口に立つ私の携帯が鳴った。

    最初は清征からだった。「池袋に到着しました」と。清征は、朝1番に東三河を出て、すでに午前中に奥山工房に寄っていろいろと奥山治具を紹介してもらい、ついでに葛飾にも出向き盤駒やまだ紹介されずにしまってある木地をその目で確かめてきていた。せっかくの上京だから、地図本を片手に積極的に動いて回ろうとする意欲は理解できる。何せまだ30代の若さなのだから。

    私自身は、「篁輝」彫埋めを届けてくれた清征とは、実は初対面だったが、何通ものメールをこれまでに交わしていたこともあり、何となく雰囲気は掴んでいて、池袋駅前の群集の中に現れたその姿を見た瞬間に、ああこの男が清征なんだろうなと判った。手を挙げると、すぐに笑顔が返ってきた。

    「初めまして」と改めて挨拶をしていると、携帯がまた鳴った。10時の飛行機で上京した由進だった。
    「今、池袋に着きました」との声が聞こえてくる。「東口で待っています」と答えてみたが、なかなか現れない。

    しょうがないから、二人でたぶんこっちから来ると思われる方向へ歩いた。

    と、そのとき横断歩道を渡って来る由進の姿が見えた。歩道の先には、喫煙コーナーがある。私はピーンときた。10時の飛行機からモノレール、山手線と、由進はタバコが吸えず、ニコチン禁断症状が出ていたのだ。だからすばやく、まずは一服と相成ったのだろう。

    「先に一服とは、さすがですねえ」と、私が苦笑いを浮かべると、由進は明らかに照れた表情を浮かべた。

    ならば、喫煙コーヒータイムにしようということになり、近くの喫茶店に立ち寄った。カタカナ名のコーヒーショップは、都心だと喫煙者は疎外されているが、今では絶滅危惧種となった昔風の喫茶店なら堂々とどのテーブルでもタバコが吸えるのだ。ロータリーの正面左の2階にあるその昔風の喫茶店は、ウェイトレスも昔のお嬢さんが揃っていて、レトロそのものだった。

    オーダーを終えると、早速の駒談義が始まる。旅行バッグの中から、由進が根付を取り出して私にプレゼントしてくれた。
                  
                 DSCN1270.jpg   DSCN1271.jpg(出石作江戸安清の歩)

    手に取ってじっくり眺めて見ると、当時の江戸職人の凄味ある風情が漂ってくる。

    「良いじゃないですか、これ。で、私たちの安清と兼成はいったいいつできて来るんでしょうねぇ?」

    清征もにこやかに頷いた。そう、私たち二人は、「江戸安清」と「水(無瀬)兼成」を、もう1年半も待っている仲間なのだ。相当待ちくたびれている。この間、「怒涛流」「中将棋」「康光書」、将棋世界と、次々に進化を遂げる駒師出石の精進の姿を知っているだけに、ただただ我慢して待っている。

    「いやぁ、本当に時間が・・・」
    「だから、お酒を飲む時間も節約してくださいよ」
    「いやぁ、ははは・・」

    ときに、まじめな技術論を清征と交わすが、たいがいはこんなジョークめいたやり取りで時間が過ぎて行く。今現在の由進の課題は、目止めの方法論の完成である。如何に駒木地の表面に目止め材を残さず駒を作るか?同時に滲みを回避するか?何とか誤魔化さずに克服する方策はないのか?・・・。駒を作らない私にはそれほどの事かとつい思えてしまうのだが、この話題の間、由進と清征の表情には笑いはなかった。

    彫駒とも彫埋めとも違う盛上げ駒の木地表面に、異物である目止め材を残さず仕上げたい。駒ファンに汚れのない駒木地の成長を楽しんでもらうためにも、何とかその対処法を見つけたい。一方では、児玉龍兒が拭き漆の方法で一つの解法を示している。が、過去の名工の作品のように、拭き漆の策を用いずにやり遂げることはできないものか?

    このテーマは、意識的な同時に意欲的な駒師にとって、残された大きな課題であると由進は認識している。目止め材が盛上げの漆を弾いてしまうことさえもある。だから何種もの目止め材に食紅を混ぜ、仕上げの実験も行っている。だが、食紅の赤は、まだ100%完全には取れてはいない・・・。

    こんな話題を約1時間。そして私たちは粋鏡庵に向かった。






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    category: 将棋駒

    thread: 極私的将棋駒の快楽  -  janre: 学問・文化・芸術

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