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    Tsuruki Jun<鶴木遵>の原風景 《絶対零度》

    鶴木遵の本、新しい挑戦、趣味である競馬、将棋の駒、男の手料理、めだかやミジンコ飼育、犬猫のよもやま話、など四季折々に感じたことを発信していきます。

    眼の保養~粋鏡庵にて vol1. 

    DSCN1001.jpg   DSCN1002.jpg(龍山安清・盛上げ駒)

    台風一過の17日、かねての約束通り、私と群馬M市のIさんは、午後一番に練馬の某駅改札口で待ち合わせて、粋鏡庵に向かった。せっかくの機会だからいい写真を残しておこうと、写真家石山勝敏にも声を掛けていたが、朝起きたら、突然歯茎の腫れと激痛に見舞われ、医者の治療を受けてから遅れて来るということになった。

    「ごめんください」と玄関チャイムを押すと、すぐに粋鏡氏が現れ、
    「やあ、よくいらっしゃいました」と、笑顔で彼の書斎に迎え入れてくれた。

    群馬まで日帰りする(本当は怖い奥さんに内緒で来たので、残念ながらあまり遅くまではいられなかったのだが)Iさんは、それからの2時間半、眼を皿のようにしてフーッと溜息を吐き続けた。
    「完成まで1年待ちなのなら、まずは私の手元にある由進=出石作の駒を見に来ませんか?」とのお誘いで、Iさんは意を決してやって来たのだが、他にも多くの名駒、名盤、名駒台、名駒箱に手に触れて接して、感極まっていたのである。Iさんの気持ちは十分に私にも理解できた。

    私が、まず眼を奪われたのは、冒頭にに載せた龍山安清の盛上げ駒。スキッとした柾目であるが故に、龍山の漆使いが明確で、龍山が描いた安清書体の世界が漂ってくるようだった。何よりも、まるで昨日完成したかのような保存状態の良さで、漆もほぼ完成時のままだから、そうか彼の時代の龍山の作った駒とはこういうものだったのかと、教え語りかけてくれる駒だった。

    隣でIさんが、由進=出石の駒をじっと見ている。錦旗・水無瀬兼成・巻菱湖・淇洲・安清・恒圓・中将棋・・全て由進の盛上げ駒であり、現在の由進=出石の盛上げの筆使いがはっきりと表現されたものだ。誰が何と言おうと、由進の駒を知る人たちにとってその手腕は、もう率直に認めざるを得ない高みを示している。

    しばらくじっと見つめていたIさんは、他の駒も手に取って見始めた。影水・雅峰・秀峰・掬水・如水・・。Iさんは、一堂に会した駒たちを次々と見られる幸せに酔っていた。その表情を見ていると、今にも涎が零れ落ちて来そうな気配だ。

    そのとき粋鏡氏が言った。「とにかくいろんな駒を見てみると、それぞれの良さが判るでしょうし、Iさんが1年待っている由進=出石作の駒の魅力もはっきりとしますでしょ?2年前に初めて由進作の駒を手にしたときに、私は由進さんに言ったんですよ。あなたの駒師としての技量は、もう完成している。後はいい経験を積むだけだと。その通りになりました」

    Iさんは黙って頷いていた。NHKの「おはよう日本」を偶然に見て、それがやがて製作を依頼することにもなった自分自身の経緯を、本当に良かったと納得しているようだった。

    その後は、駒木地の話となり、粋鏡氏から「本当に良い木地は、木地師が手元にしまい込んでいるものだから、高価でなかなか手に入るものではありませんよ」とも教えられたが、そのときIさんが怖い奥さんの待つ自宅に帰る時間となった。(奥さんの名誉のために記しておきますが、怖いと言っても性格が怖いのではなく、気を許してほって置けば、今のIさんが駒のことで何をし始めるか判らないから、怖くあらねばならないのです。本当はIさん自身が怖いと、私は思っているのですが・・。今日の上京も、奥さんに内緒でしたし・・だから早くに帰らないとバレるとIさんは心配しているんです。まあ大方の駒ファンなら経験があると思いますが・・)

    「またいらして下さいね」と、粋鏡氏から声を掛けられて、Iさんは名残惜しそうに駅に向かった。

    その間に、私はもう一つの面白い作品を見た。

    DSCN0965.jpg  DSCN0968.jpg  DSCN0966.jpg   雛駒版一式 彫蜂須賀 盛上げ雅峰(左は雅峰作無剣、右が雛駒水無瀬)


    確か2005年に復元された雛駒の一式である。そもそも東京M家に所蔵されていたものを、新たに復元していた。

    書体は、影水水無瀬。彫は、蜂須賀芳雪が担当し、盛上げは、平田雅峰である。以前、初代竹風の雛駒の項で、いっしょに根付を並べて、蜂須賀作の雛駒があったら魅力的と記したが、すでにあったのである。それも雅峰とのコラボで、雛駒とは思えぬ手抜きのない作品が。

    「うーん、欲しいなあ・・」

    かなわぬ夢と思いながらも、心でそう呟いた私だった。そのときIさんと入れ替わるように、石山勝敏が撮影機材を持って現れた・・・。


    ☆この項、さらに続く。粋鏡氏の手元に集められた名品の世界をお楽しみに。




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    category: 将棋駒

    thread: 極私的将棋駒の快楽  -  janre: 学問・文化・芸術

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