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    Tsuruki Jun<鶴木遵>の原風景 《絶対零度》

    鶴木遵の本、新しい挑戦、趣味である競馬、将棋の駒、男の手料理、めだかやミジンコ飼育、犬猫のよもやま話、など四季折々に感じたことを発信していきます。

    久々の再会~それもまた=人生 

    JT

    若い頃、いろいろとパフォーマンスをやった記憶がある。私自身は裏方役だったが。

    例えば、渋谷109の前に変な糞爺がいる。そこにフル装備の偽警官が笛を吹きながら、道玄坂方面から現われて取り締まろうとするが、何と糞爺とと警官は意気投合して二人で仲良くラジオ体操を始める。エッ!?事件かと一瞬思った通行人甲や乙は、いったい何が起こるのかと期待するが、警官と糞爺の予定調和のラジオ体操を見て、心をもっと悩ませるという展開となる。言わば実験劇のパフォーマンスだった・・。

    と思えば、ずっと稽古場で、夢野久作「一足お先に」という作品を、台本に起こして徹底的な稽古を続けたこともある。主人公新藤と病室で相部屋となった大連帰りの青木というキャラを、何とかものにして欲しいと稽古三昧の日々を送った。

    私の前で109の変な警官と病室の青木を演じたH.Gという役者は、当時まだ新人で、実に慇懃無礼な男でもあり、磨けば面白い男だったと思う。稽古で追い詰められて、ある日、手首を少し切って洗面器に血を溜めて残して、本人はそのまま晴海埠頭辺りをバイクでドライブ。稽古場に顔を見せないから、どうかしたのかと思ってアパートを訪ねると、血だまりの洗面器が部屋の中央に鎮座していて、驚いた私は松沢署に連絡。優秀な刑事から事情を聴かれていたところに、本人が何事もなかったように帰宅して、事無きを得たが、こちらにしたら、そりゃあもう大変な体験をした。

    後日、ご本人は、手首は腱が発達していて、そんなに簡単には切れないもんだと豪語したが、こちらとしてはバカヤロウというしかなかった。今から25年以上も前の話である。

    その後、私は原因不明の脊髄を病み、芝居の現場を離れざるを得なかったが(結果的にはそれが良かったのかも知れない)、H.Gは、その後も何とか続けて、久米宏のニュースステーションで、一時期再現ドラマに使われるようにもなっていった。私自身の手術後に、たまたまそれを見て、頑張ってるなと安心した記憶もある。

    しかしH.Gは、ディレクターに面白い奴と可愛がられたものの、その後は出演した日曜日の夜8時の番組(当時紳介と渡辺徹のバラエティ)が視聴率4%で打ち切り、7時半の西田敏行が司会する番組も視聴率3.5%で打ち切りと、あいつが出ると打ち切りとなるというような負の神話を作って、結局はそのままひっそりと引退したのだった。

    私は、心の底で、今どうしているのかなと、たまに気にかけていたのだが、私自身が病に倒れてからは互いに消息不明で、連絡の取りようがなく、今日に至っていた。

    そのH.Gから、先週突然メールが来たのである。このブログにである。

    山の生活だから、このブログを始めた頃にようやく光回線が開通したのだ。それまでは原始的なアナログ回線で原稿を送るのが精一杯だったのだ。それに気づかぬ大手出版社の編集者とは疎遠にもなっていた。が、H.Gは、私の本をたまたま入った書店で手にして、私がまだ生きていることは知っていたようである。

    25年以上も消息が知れず、ようやく連絡が取れたと思って喜んでみたときには、H.Gは、症例が10万人に一人という珍しい病に侵されていた。耳下腺癌だった。埼玉医大、防衛医大、そしてまた埼玉医大と原因が判明するまで盥回しにあって、2年前に手術した。最初は、顔面神経麻痺の症状が現れ、おかしいと思っている内に、ようやく原因が耳下腺癌と判明したのだという。

    先週、私は別件で打ち合わせの帰りに、西武池袋沿線に住んでいるH.Gと会った。歩くとふらつくので杖をついていたが、車の運転はできるという。左に出来た耳下腺癌を手術して、正面から顔を見ると、多少顔が左に歪んでしまう印象があったが、話をしている内に、互いにかつてのことを想い出して、妙に懐かしかった。

    私より若いから、一人娘がまだ中1なので、これからの心配は尽きないのだろうが、私も病に見舞われてきた体験もあるから、敢えて慰めは言わなかった。明日をも知れぬ不安な状況の中で、型通りの慰めを言われても、ほっといてくれとしか言いようがないことを、私はすでに身を持って体験していたからだ。

    だから別れ際に一言、「こんな体験をしたことは、見方を変えれば人生の大きな財産だから、せめてノートに日々自分が感じたこと、乗り越えようとしたことなどをメモしておけよ。そうすれば、頭は鋭敏になって衰えないからさあ」と、言い置いてきた。

    これからは、機会があれば連絡を取って、私はH.Gと会うことになるだろう。それもまた良しだ・・。
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    category: 日々流動

    thread: 異化する風景  -  janre: 学問・文化・芸術

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