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    Tsuruki Jun<鶴木遵>の原風景 《絶対零度》

    鶴木遵の本、新しい挑戦、趣味である競馬、将棋の駒、男の手料理、めだかやミジンコ飼育、犬猫のよもやま話、など四季折々に感じたことを発信していきます。

    駒を言い表すことの難しさ 

     静山 清定

    最近つくづく思うことがある。

    駒を、言葉によって、どう言い表したら、それぞれの駒が本来持っている魅力を、自分以外の他者により正確に伝えられるのか?ということだ。

    自分だけの世界で、その出来具合を、感覚的に好きか嫌いかで判断するなら、感じているものを感覚的に押さえているだけで良いのだが、それを他者と共有しようとすれば、結構難しいことになる。

    好みというのは、万人がそれぞれの感覚と自分だけの思いを込めた言葉で、それこそ多種多様に感ずるものだ。世に言う、いい男やいい女などは、蓼食う虫も好き好きという具合で、他人からすれば、エッ?何でこのカップルなの?なんていう場合もある。それと同じだ。

    だがそれを他者に伝えるには、やはり言葉によって、それなりに判り易くこなしてみないと理解は得られない。結構難しいのだ。

    例えば駒には、駒木地の微妙な重さ、硬さ、差し味、同時に手入れされた味わいやそれが醸し出す色合いなどという質感があり、その上でもっと重要な駒師の技、意地、表現衝動といった創作手法における表現が込められている。それを自分以外の他者と共通言語で共有し合うためには、いい加減なあるいは過剰な知識を振りかざしてもダメだろうし、経験値の高さで語れば説教にも取られかねない。

    本来は、「判った奴だけが判る」世界が存在するのだが、最初からそれを言っても、今の時代では大向こうを敵にしかねないし、不親切と断罪されてしまうだろう。だからなかなか難しい。

    今年になって、新鮮な駒を表現する発言に接した。

    「銘駒図鑑」を主催する宮田梅水の試行的発言だった。彼は、駒における知性、知によって成立する引き締まった秩序に<美>を見出そうとしたのである。

    それは、初期の頃に、駒を絵に見立てて、1枚の駒、余り歩を含めた42枚の全体の中に絵としての<美>を感じ取って「絶対美感」を説いた果てに行きついたものだったろう。

    私自身も、駒に興味を持ち始めてから、思わず目を止めて(目を止まらせられて)魅入ってしまう駒の中に、何となく作り手の意欲的な知を感じていたから、共感は大きかった。

    「駒には知の顔がある」

    彫駒であれ盛上げ駒であれ、駒の中に駒師という作家が内包している知を、技の中から人間味として表れている知を、正しく感じ取ろうとする姿勢は意味ある試行であることは間違いないだろう。それは、流通する価格に左右されることなく、駒作家の本質を見極めようとする試行だからだ。同時にそれは、既成の権威で身をまとったようなまがい物を淘汰する姿勢とも言える。

    宮田梅水はさしあたり、侘び寂を表出する「井戸茶碗」という言葉を参照して、必要十分条件を満たした駒を「井戸駒」と命名して分類しようと図ったが、「絶対美感」を原点とする彼の出自から考えるなら、絵画的な分類の方が相応しかったのかも知れない。

    写実主義の巨匠レンブラントを龍山、そしてそれに続く奥野とすれば、前期印象派として影水や木村、静山や初代竹風を通過して、現在の駒世界は後期印象派が鬩ぎ合っている状況だろう(もしいればという話だが・・それでも絵画からすれば100年は遅れているのだ)。これからシュールリアリズムが生まれて来るか否かは定かではないが、誕生したら興味深い。

    その意味では、NHKでも全国に紹介された(私自身も着目してきた)駒師由進は、後期印象派として字母に独自の感性を埋め込み続けながら、誰を真似するのでもなく由進だけの世界を創り上げようとしている。

    その駒世界の魅力を確かに伝えるためにも、宮田梅水の試行をも大いに参考にして、より判り易く適切でインパクトある言葉を見つけなければならないだろう。

    でもたぶん、由進のこれからの作品が、私の中から自然と言葉を引っ張り出してくれると、そう楽観しているのだが、果たして・・・。

    錦旗 yosisinn  kisyuu_s.jpg  70minase 兼成 由進作


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    category: 将棋駒

    thread: 極私的将棋駒の快楽  -  janre: 学問・文化・芸術

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