Admin New entry Up load All archives

    Tsuruki Jun<鶴木遵>の原風景 《絶対零度》

    鶴木遵の本、新しい挑戦、趣味である競馬、将棋の駒、男の手料理、めだかやミジンコ飼育、犬猫のよもやま話、など四季折々に感じたことを発信していきます。

    NHKマイルC~5月5日東京芝1600M 

    130505Ki01.jpg   130505Ki02.jpg写真:石山勝敏



    2013505NHKマイル3 (写真:GCTV画像より)



    ゴールイン直後、力強く右手を突き上げた後は、柴田大知の頬は涙に塗れて止まなかった。

    涙、涙の勝利が、逆に爽やかだったのは、おそらく柴田大知の人柄なのかも知れない。

    通算勝利200勝も同時に達成されたが、実は遅過ぎたぐらいなのだ。柴田大知ほど競馬サークルの人間関係にもまれて、育った騎手もいない。しかし最底辺からも、諦めずに粘り通して、ここまで這い上がってきたのである。持ち前の腕すらも発揮することも許されない最底辺にいても、自らの手綱の腕を疑わず、本当に騎手である自分が好きだったろう。柴田大知は、自分を信じ切って甦ったのである。

    ’96年、柴田大知は、美浦栗田博憲厩舎から騎手デビューを果たした。この年、師匠栗田博憲調教師の精力的な支援もあって、年間27勝。関東新人騎手賞をも獲得した。弟未崎(2年前に引退現調教助手)と共にふたご座生まれの双子騎手と騒がれたほどだった。当時、ゴール前で息子の追っかけをしている母親の姿を垣間見て、私自身は少し冷めた目線で見守っていた記憶がある。

    翌’97年も年間29勝。騎手の出だしは順調だった。師匠栗田博憲は、手塩にかけて弟子を育て上げようとしていた。柴田大知に一流の騎手たる人生を歩むように願っていた。

    しかしこの年の暮れ、柴田大知の早すぎる結婚問題を機に、濃密だった師匠と弟子の関係に亀裂が入った。師匠の大反対に刃向うようにして、柴田大知は結婚を強行したのである。

    真剣に弟子を育てようとしていた師匠だけに怒りは収まらなかった。そのまま厩舎を破門。まだデビュー間もない柴田大知は、フリーとなって出直さなければならなかった。

    競馬サークルは狭い。師匠に破門された若手騎手をそれでも起用する調教師は少ない。3年目を迎えた柴田大知は、すぐにその影響をまともに受けるようになった。年間10勝騎手になった。それが5年間続いた。柴田大知にとって、それは最初の落ち込みに過ぎなかった。

    ’03年頃からは、明らかに騎乗数も減り、年間5勝するのがやっとという状況に落ち込んだ。’06年からの3年間は、未勝利だった。騎手は、レースに騎乗できなければ、その腕を発揮することもできない。何とかせねばと追い込まれた柴田大知は、’05年からは障害戦にも騎乗機会を求めた。チャンスがあれば、そこで牙をむいて勝利に食らいつく男に少しづつ鍛えられて行ったのだろう。でもそうしなかったら、引退の瀬戸際に追い込まれていたのだ。自ら変わらざるを得ない。

    そんな柴田大知を、勝負の神様は見捨てなかった。ようやく2年前の7月、東北大震災で開催の遅れた中山グランドジャンプにマイネルネオスの騎乗機会を与えられ、障害G1を手にした。あのときも涙に塗れた。

    この勝利が、柴田大知の騎手人生を大きく変えるものとなった。
    マイネル軍団の信頼が高まり、騎手としての支援を受けるようになったのである。騎乗機会は、活躍に比例して増えて行った。’11年15勝、’12年38勝。

    柴田大知の手綱は、ここ一番の勝負になると、条件戦でも特別戦でもあるいは重賞でも、確実に上位を確保するようになっていった。そしてそのことによって、また騎乗機会が増えた。レースに乗ることも叶わなかった、あの10年間を想い出すと、今でも身震いするような感覚に襲われるが、しかし今ならとにかく前に進もうと1歩足を踏み出せる。騎手の幸福とはそんなものかも知れない・・・。

    5月5日。中団後方外にポジションを確保した柴田大知マイネルホウオウは、3コーナーから少しづつ前に進出した。

    第4コーナーを廻って、残り400m。柴田大知は、一心不乱に馬を追った。

    2013505NHKマイル2 (最外:柴田大地マイネルホウオウ)


    闘っている相手は、他馬ではなかった。今までの自分から、もうひとつ違うこれからの自分になるために、懸命に追った。追って、追って、追いまくった。

    ふと気づくと、すべての馬たちを抜き去っていた。どうして勝てたのかなんて考えなかった。ただオレは勝った!!と確かめた。

    その瞬間、柴田大知の腕は、大観衆に向かって高々と突き上げられた・・・。



    32013505NHKマイル (柴田大知:男の涙)

    関連記事
    スポンサーサイト

    category: 競馬

    thread: 演劇的競馬論  -  janre: 学問・文化・芸術

    CM: 2 TB: 0   

    コメント

    鶴木さんが表現する騎手の世界が大好きです。

    後藤 #65fpICiI | URL | 2013/05/07 18:11 - edit

    Re: タイトルなし

    後藤様
    お褒め頂いて恐縮です。
    これからも、微力ですが書き綴っていきたいと思ってます。
    ご要望などあれば、メールでお知らせください。(非公開ですから)

    Jun.Tsuruki #- | URL | 2013/05/08 00:29 - edit

    コメントの投稿

    Secret

    トラックバック

    トラックバックURL
    →http://0417jun.blog.fc2.com/tb.php/264-72c968b2
    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)