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    Tsuruki Jun<鶴木遵>の原風景 《絶対零度》

    鶴木遵の本、新しい挑戦、趣味である競馬、将棋の駒、男の手料理、めだかやミジンコ飼育、犬猫のよもやま話、など四季折々に感じたことを発信していきます。

    変な光景② 

    埴輪馬
    例年3月の中旬になると、我が家の池に、ここを故郷として生き延びたヒキガエルが、何匹も戻ってきて、騒がしく卵を産みつけていく。運良く大きく成長した数世代に渡るカエルたちが集うのだ。

    やがて千匹以上のオタマジャクシとなって、池の底や壁面の藻や汚れを餌にして、池を掃除してくれながら育ち、雨が降った後の6月の満月の夜に、一斉に巣立っていく。しかし大きくなってまた戻ってくるのは、経験で言えばわずか数匹だ。やはり今の人間社会同様に、生き残るのは厳しい。

    オタマジャクシが池で泳ぎまわるようになると、どこやらか小さな蛇がやってくる。小さな蛇にとって、ミミズやオタマジャクシは貴重な蛋白源なのだ。しかし山の蛇は、水に潜って餌を捕ることはできない。まだ、恨めしそうにじっと池を見つめるだけである。

    家にいる限り毎朝、私はメダカや、以前に金魚すくいで息子がすくって来て数が増えた和金や、タナゴに餌をやるのだが、オタマジャクシが泳ぎまくるようになると、池で蛇に出会うのだ。最初の頃は、驚いてゾッと血の気が引いたが、慣れてくると蛇が襲ってくることはないと知り、怖さは消えた。

    そんな朝、私は茶色ぽい色合いの小さな蛇に出会った。決まって餌をやる場所で、頭を高くしてとぐろを巻いて池を見つめていたから、私は軽く棒で突っついて、
    「あっちへ行きなさい」
    と、諭したのだ。

    すると蛇はすぐに動き始めたのだが、なんと私の方に近づいてきた。
    「いや、こっちじゃない。あっち、あっち」
    と、もう一度軽く棒で突っつくと、驚いたのか蛇は動きを早めて池の中に飛び込んだ。

    「そうじゃないだろうが」
    と、池から引き上げてやろうとして、もう一度棒を使って救い上げようとしたとき、なんと突然、小さな蛇が変身したのだった。

    息を止めて、身体を木の棒のようにまっすぐにして、
    「あたしは蛇じゃないの。枝なの。池に浮かんだまっすぐな木の枝なの。ネッ、お願い、判って」

    ピーンと、本当に蛇の身体はまっすぐに伸びきって、茶色ぽい身体が枝のように見えた。

    しかし普段は蛇の身体は左右にうねっている。そんな自分の身体を、ギュッと硬直させてまっすぐにキープすることは、蛇にとってはまさにウルトラC級の技だったに違いない。

    「やるな、お主」

    この朝、私は、小さな蛇の一世一代の「芸」を見せてもらった。
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    category: 日々流動

    thread: 異化する風景  -  janre: 学問・文化・芸術

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