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    Tsuruki Jun<鶴木遵>の原風景 《絶対零度》

    鶴木遵の本、新しい挑戦、趣味である競馬、将棋の駒、男の手料理、めだかやミジンコ飼育、犬猫のよもやま話、など四季折々に感じたことを発信していきます。

    2016宝塚記念~何と上り3F36秒8!おお想定外!! 

    JT

    土曜までの梅雨の雨の影響が残っていたとは言え、いったいこんな有力メンバーが揃ったG1戦の上り3F(600m)の計時タイムが36秒8もかかるなんて、誰が推理し得ただろうか?

    この1週間、私は、現実とはまるで別物の幻の宝塚記念を、まどろみの中で追っかけていたのかも知れない。

    そう言い切ってしまえるだけの、想定外のホームストレッチの光景だった。

    GCを見始めた午後1時25分。阪神競馬場では、本番宝塚記念と同じ距離の芝2200mの500万条件戦が行われた。オープン馬からすると3階級下の条件戦である。サトノエトワールが勝った決着タイムは、前半5F 63秒ほどのペースで進んで2分15秒1。上り3Fは35秒5だった。やや重発表の馬場だったが、昼頃からは少しづつ雨雲が晴れて陽が射すようになっていたから、この7Rの時点より、本番11Rには、力の必要な馬場であったとしても、もう少し回復することが見込まれた。だから私は、宝塚記念は、2分13秒を切るぐらいの決着タイムで、力がある馬たちはこれまでの実績通りに走り抜くだろうと、安心しながら2時間後の近未来を確かめていたのだった。これなら負けないと。

    だが、あざ笑うかのように現実は、私の推理の網の目をすり抜けて、想定外の結末となったのである。

    宝塚記念の週の始めから、私は「今回は実績ある強い馬が力を見せつけて勝つ」ことを期待して止まなかった。

    だから、トライアル大阪杯で横山典弘がその手腕を見せつけて勝ったアンビシャスや、鳴尾記念で走り過ぎた印象のあるサトノブレスらには、少しも狙いの食指は動かなかった。技は1発勝負であって2番はないと確信を持っていたからだった。
    おまけに雨の影響での渋り目の馬場が予想された。調子を戻しつつあった好きなタイプのトーホウジャッカルらもここで予想から消えた。ヤマカツエースを押さえておこうかとも考えたが、この馬には大外17番枠が嫌で消した。

    残ったのは3頭だった。ドゥラメンテ、ラブリーデイ、キタサンブラック。人気にはなるだろうが、オッズを気にすれば邪念が入ることは長い経験で織り込み済みだから、いつものように強い馬は強いのだと自分自身に言い聞かせた。

    この結論に至ると心は澄みやかになって、かえって強気が増してくるようだった。

    このときも、いや今週ずっと、私は、安田記念であのモーリスでさえ海外遠征後の仕上げが難しかったことを忘れていたようだ。世界に飛翔こうとするドゥラメンテ、昨秋ずっと楽しませてくれたラブリーデイなら何の不安もないだろうと安心しきっていたのだ。それにもう1頭選んだのは、菊花賞以後進化を続けるキタサンブラックで、この馬たちに難クセをつけるのは、馬に失礼だろうとさえ思っていた。そこに落とし穴が待ち受けていたのである。

    7Rの2200m戦の結果を受けて、私は、前半の3Fが61秒ぐらいのペースで、上り3Fは34秒半ば、レースの決着タイムは2分13秒を切るぐらいだろうと予想したが、恥ずかしながら予想通りになったのは決着タイムだけで、流れは期待と大きく隔たるものとなった。

    しかしまだこの時点では、選んだ3頭で決まると信じ切っていたから、余裕を持って宝塚記念の発送のときを迎えようとしていた。

    余裕とは遊び心を忘れないということだった。で、阪神と東京の9Rを「予想して買わない」という戯れをした。この戯れは意外と効果がある。不的中なら「おおやっぱり買わなくてよかった」と、脳内快楽物質がにじみ出てくるし、的中していたなら「今日のオレは冴えてる」と自分自身を誇りながらやはり脳内快楽物質を得られるのだ。自力で得るドーパミン効果によってハイになることは、競馬のみならず勝負事には必要不可欠だと感じている。精神が落ち込んでいるときは、閃きなど浮かぶことはないからだ。

    次の戯れに、東西の10Rをほんの少しだけ1点で買ってみると、いやはやドーパミン効果か、堅い決着だったこともあってともに的中してしまった。ここで一人ほくそ笑みながら呟いた。「オレは冴えてるぜ!」後は、宝塚記念に集中するだけだ。

    しかし・・・。私の推理した宝塚記念は、レースの前半にもろくも潰え去ったのである。

    何故、武豊キタサンブラックは前半5F59秒1という、この日の馬場を考えるならいかにもハイペースで逃げなければならなかったのだろうか?スタート直後の2ハロン目と3ハロン目が11秒と11秒1。絡んできたのは、結果的には馬群に沈んだアンビシャス、ワンアンドオンリー、トーホウジャッカルだった。これらを先に行かせてしまう選択はなかったのか?それともこんなサバイバル戦でも勝ち抜く自信があったのだろうか?

    それでも直線坂を上り切る地点までは、私の見たいっと思った推理は辛うじて成立していた。逃げるキタサンブラック、勝負処からまくるように差してきたラブリーデイ。このときようやく馬群の外にドゥラメンテが出て進路を確保した。

    が、勝ったのは、残り4F辺りからこれでもかこれでもかと蛯名正義が追いまくったマリアライトだった。この馬は、上り33秒の弾ける脚はないが、上りがかかれば出番がある特筆すべきタフな牝馬だった。

    何でマリアライトが来るんだとの疑問が沸いたが、着順掲示板の上り3Fの36秒8という時計を見たとき、全てが明らかになったのである。

    結局、力のある馬たちは、レース前半の59秒1というハイペースでヘトヘトになっていたのだ。そこに、ただ1頭上りがかかったらへこたれないで伸びるマリアライトが突っ込んできたということなのだった。マリアライトのすばらしさはそこにある。騎手蛯名正義が狙い澄まして勝ったというより、どこまでも追い続けたら勝ってしまったというのが、おそらく正解だろう。

    やはり春に海外遠征して、検疫をはさんで宝塚記念(いや安田記念もである)に参戦するローテーションは、ドゥラメンテやラブリーデイにしても調整は難しいのかも知れない。いつもの弾けるような姿は、少しも見られなかったのである。同時にキタサンブラックは逃げる主張を変えなかったために前半のハイペースに最後の脚を奪われていたということなのだろう。

    ゴールイン後に、ドゥラメンテの騎手M.デムーロが下馬して、何らかのアクシデントが明らかになったが(非常に残念な結果だ)、この事態だって、おそらく馬が完調なら起こり得なかったことだろう。馬の現状からすれば、キツイレースだったと言えるのではないだろうか?

    ともあれ、春からのG1シリーズは、幕を下ろした。いっきに過ぎ去った3ヶ月。気がつけば、2016年はもう半分が過ぎ去っている。
    時の経つのはあまりに早い。

    で、ダービー後からゲンを担いで伸ばしている私の顎ヒゲなのだが、報われなかった宝塚記念だったとしても、何となく踏ん張りが利くいい流れは続いている。宝塚記念だって、映像の画面からマリアライトを消せば、上位3頭は絞って選んだ馬たちだった。そう思う。いや都合のよい自画自賛ではなく、そう思うのであります。

    で、もうしばらくどうなるか伸ばし続けてみようと決めました。伸ばしたままにしておけば、いつでもいい流れとはどういうことかとすぐに想い出すこともできますし、後はそこに呼吸を乗せて行けばいい訳ですから、そうしようと思います。

    それにしても前半のハイペースが嘆かわしくて、ここ2日間ウィスキーのショットグラスをすがるべき心の友としています。でもへこたれませんから・・・。うーん・・・。






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    category: 競馬

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    参議院選挙の夏 

    JT
    昨日、参議院選挙が告示された。7月10日投票だという。

    2年前の衆議院選挙の後の流れを振り返ると、政治というのはかなり(権力を持つ者によって)恣意的な展開が為されるものだということが実感である。
    数を得る為に卑劣なまでに手段を択ばず、それ故、数を得た者が独断専行する国となってしまったのが、おそらく今の日本の現実なのだろう。そこそこに優秀な官僚制度も、人事権を握られてしまえば無力化することまで明らかになってしまった。マスコミの萎縮とへつらいもより深く進み、3年経っても民の期待に応える成果もない明らかに失政の政策さえも、表立っては批判もされないのだ。素晴らしきかな日本の民主主義である。

    今回から、18歳以上の若者にも参政権が認められた。新しい民主主義を考えるにはいい機会となる。

    政治に対して、民主主義を守るために最低限必要なこと。それは、奴隷ではなく主権者である私たちにとって、たぶんたった一つの意志表示なのだと思う。

    前回の国政選挙から今日までの数年間で、あなたは、幸福な生活ができましたか?飢えることなく暮らせましたか?笑い合いながら働ける場所はありますか?

    Yesなら現政権を支持すればいい。Noだったなら遠慮なく野党勢力に1票を投じればいいのだ。

    我慢することはない。誰かに義理立てをすることもない。あなた自身や、あなたの家族を守るために、あなた自身がきちんと意志表示しておくことが大事なのだ。

    あなたを守るためには、あなた自身の判断した意志表示と行動しか守り抜く術はないのだから。それが民主主義の基本である。

    もしあなたが、「どうせ私の1票なんて無力なんだから」と、そう考えただけで、あなた自身の幸福の追求は、誰かも判らぬ他人任せになってしまうのだ。

    民主主義においては、主権者である私たちは卑屈になることなく我儘を貫けばいい。1票欲しさに頭を下げるべきなのは、政治を託される者たちの義務でもあるのだから。

    だから、みんなで、みんな揃って、7月10日には、YesでもNoであっても、我儘を言いに投票所に向かいましょう。
    それが、あなたの生きるこの先数年間の日本を良くして、同時に何よりもあなた自身を幸せにする最初のステップになるんです。






    category: 異化する風景

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    6月の忙(せわ)しさ 

    kamennnowatasi②ex
    安田記念を終えてからというもの、何となく気ぜわしい日が続いている。

    妙に時間の流れが変わってきたようなのだ。

    実は、ダービーを終えた日から、ちょっと自分を具体的に変えようかと、無精ひげをそのまま伸ばしっ放しにしてみた。とりわけ深い理由があった訳ではなく、ただただ気分のままにだった。

    2週間も経つと、約1㎝ほどに伸びてきた。イメージとしては、チヤリオ君の火野正平や散歩の高田純次やメジャー3000本安打に挑むイチローのひげだったが、彼らと違って私がやると、どうも精悍な野性味というよりは、笑いの種となってしまうのが、まあ、悔しいと言えば悔しいのだが・・・。それも織り込み済みである。

    無精ひげのように見えるが、だんだん伸びてくると、微妙に剃刀を当てて整えてやる必要もあって、結構気を遣う。もみあげから顎にかけての部分や、下唇の下は、鏡を見ながら手を入れるのだ。

    ただ先週末に、鼻ひげが唇を動かすたびに、フニャフニャ、モニャモニャと鼻にあたるようになってくすぐったく、我慢できずに剃り落としてしまったから、今は顎ひげだけになっている。顎に手をやって、親指と人差し指でひげをはさむ仕種が癖にもなってきた。

    馬子にも衣裳なんて言葉があるが、ひげの装いで、知らぬ間にだんだんと私自身の雰囲気も変わってきたようだ。そうなると私を取り巻く流れも、これまでとは少しづつ変わってきた気がする。日々出会う人たちの対応も、危ない奴かもと見抜かれてか妙に優しく変わってきたし、私自身もひげに合わせて、ゆっくりと話すようにもなった。ほんの少しづつの変化の兆しが、気がつくと大きな変化となっているような気がしてならない。

    ひげ伸ばしが続いた最大の理由は、安田記念からのゲン担ぎだったというのが本音だが、いいリズムは保たれているのが不思議だ。
    6月11日(土)は、東京競馬場で「本村会」(私たちの間では、狂ってみよう会と囁かれている)で、ダービールーム招待が催されたが、この日は、堅い本命サイドの結果と荒れれば大万馬券という流れと、不思議に外国人騎手の不在もあって、私には変な競馬が続き、帰路定例の飲み会代を含めて散財したが、翌日疲れを取って挑んだマーメイドSを枠連で3点的中(馬連にしなかったのは前日の敗退が原因である)、そこで弾みをつけて本命サイドのエプソムCは、馬連1点で仕留め、原点に戻してホッとした。

    その週は、山の生活では必需品の車のよもやまなことを片付け、ついでに気がかりだった車置き場のセメント張りの修理もやってのけ、怠け者なのに面倒だと逃げなかった。そう言えば、途中で蛇様の写真も撮ったし・・・。タウリン3000やマカなどを飲まなくても、実に前向きだった。

    これで、後少し予定している原稿書きの作業が進めば、何の不満もないのだが、さすがにそこまでの体力は病んだ体には残ってはいない。でもまあ、やるべきときには、瀬戸際まで追い込んでやり抜く方法は、すでに経験的に解っているので、今はいい流れを見失わないことがもっと大切だと居直っている。

    で、先週末。シュウジ本命の函館スプリントSは、ソルヴェイグを軽視して無念だったが、川田将雅ゴールドドリームからストロングバローズと、少しだけピットボスを抑えての2点に馬連で流したユニコーンSは、オッズはともかくきちんとモノにしてマイナスはなかった。ダービー騎手川田将雅は、現在の日本人騎手の中で、考え抜いて1発勝負ができる今となっては希少価値の勝負師的存在の男である。このことは記憶にとどめておいた方がいい。

    ともあれ無精ひげから始まったゲン担ぎは今のところ功を奏しているようだ。

    多少なりとも自分を具体的に変えてみることは、実は見えてくる景色をも変えることになるのかも知れない。

    ほんの少しの景色の変わりが、別の人生を歩み出す契機になるのかも知れない。

    とすれば、全てはやはり自分自身に起因することになる。

    このことを本当に証明するのは、さしあたり私には、今週末の宝塚記念ということになる。まあ、それも良しとしておこうか。




    category: 日々流動

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    オタマジャクシとメダカと珍客? 

    裏庭の小さな池に、毎年蛙が卵を産みに来る。3月の終わり頃から、遅くても4月中のことだ。

    もう何年も春の恒例行事になっているから、この池を故郷にする蛙なのだろう。ただ生まれて無事に巣立った蛙たちだが、翌年少し大きくなって帰って来るのは、何百匹の中でほんの数匹。自然の中で生きながらえるのは、奇跡的なことだと教えられる。

    今年のオタマジャクシもこんなに大きくなった。  DSCN2141.jpg
    池の中の岩に積もったヌルヌルした苔や汚泥などをきれいに食べて、掃除もしてくれるので、役に立ってくれてもいる。ただここ2・3年、生む卵の量が何故か多くて、気を許すと酸欠状態に近くなるので困ってもいる。去年などは、この時期、同居していた20cmを超えようかという金魚たちが、酸欠状態に見舞われて死んでしまったほどなのだ。20匹ほどいたのに生き残ったのは3匹。だから今年は、オタマジャクシが孵化した瞬間に別場所に移して、メダカと同居させた。

    そう言えば、今年生まれたメダカの子供たちも順調に育っている。 DSCN2143.jpg
    産卵期に雌のメダカは尾びれの付け根あたりに、卵をまとわりつけるようになるが、それはすでに受精卵なので、網ですくって傷つけないように卵を取って別に用意した専用の盥や器の中に移しておくと、数日後には次々に孵化してくる。後は、適量のメダカの餌を指先で磨り潰して与えてやればいい。卵から接していると、それなりに愛着さえ湧いてくるから不思議だ。

    4月に生まれたオタマジャクシは、だいたい6月下旬辺りの満月の夜に巣立っていく。これまでの経験からしても、何故か満月の夜なのだ。彼らにとってDNAに刻まれた習性なのかも知れない。

    5月の下旬頃になると、だんだんと大きくなってきたオタマジャクシを目ざとく見つけて、池には珍客が現れる。
    この珍客に慣れないときは、びっくりして心臓音もドキドキと高まったが、何度も見て慣れてくると、この珍客が決して自ら人間を攻撃してくることはないと知って、それほど驚くことはなくなった。とは言え、池に近づくときは、それなりに慎重にはなるのだが・・・。

    今年は、3匹の珍客である。写真は通い続けてもう5年になる珍客。以前に少し突っついたら、池に飛び込んで棒に変身した愛すべき珍客だ。(11年10月のブログを参照してください。この子の凄さが判りますから)色合いが、薄い茶色で特徴的なので、同じ相手だと知ることができる。山には餌が少ないのか、それほど大きくなってはいない。そんな種類なのだろうか?他には、今年生まれたばかりのような20cmほどの大きさの山かかしが2匹。これは首元が紅く特徴的なのですぐに判る。
                     DSCN2147.jpg   DSCN2148.jpg

    写真に撮ると、目が反射してグロテスクに見えるが、実物はマムシとは違って、目もきれいで、慣れてくるとそれなりに美しさもあるのだ。蛇の口の大きさよりも、もうオタマジャクシの方がだいぶ大きいので、たぶん餌にしたくてもなかなか大変なんじゃないかと心配してもいる。もうこの子とは、5年ほどの知り合いなので、
    「hallo、how are you?」などと、声を掛けてもいるのだが、なかなか遠慮がちで、まだ向こうから答えはない。が、ほぼ毎日顔を合わせているのだから、この子も私が敵じゃないことぐらいは理解しているはずだ。

    都会の生活の方が、どちらかと言えば好きなのだが、こんな交流も捨てがたい魅力がある。たぶん、すごく我儘な性格なのだろう。人間というのは、いつのときも度し難いものなのかも知れない・・・。






    category: 自然

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    2016 安田記念・オーッ!ロゴタイプ復活!!~東京芝1600m 

    埴輪馬

    終わってみれば、行った行ったの決着だったが、G1マイル戦の東京コースのホームストレッチは、さすがに長く感じられて、決して前残りの単純な結末とは思えなかった。

    ゴールイン後に、「そうか、前を行った2頭で決まったのか・・」と、ようやく気づいたのだった。

    思えば、私の安田記念は、ダービーデイの帰り道から始まっていた。競馬場から大レース後の定例の府中三松での飲み会に向かう途中に、文春の編集者Fから「次は安田記念ですね。良いメンバーが揃うようですよ」と言われ、そう言えばと、古馬マイラー路線の出走馬を思い浮かべて、「そうか。軸は世界のモーリスだし、相手は好きなイスラボニータとロゴタイプなら面白いんだけど・・」と軽口を叩いていたのだ。

    ドバイで、おそらくはR.ムーアに全力で走らされてしまっただろうリアルスティールや、前走のトライアル京王杯SCを圧勝してしまったサトノアラジンには、何となく勝負気配のベクトルの下降が感じられて気乗りがしなかったし、何よりもサトノアラジンはその前のダービー卿チャレンジTで、斤量が1Kg重かったロゴタイプに追いつけずに負けていた。ならば、この日やはりダービーを勝てなかった蛯名正義の騎乗するイスラボニータや、田辺裕信の騎乗3戦目となるロゴタイプに食指が動いたのである。

    それからの1週間は、その瞬間をただただ待っている身としては長かった。ひたすら静かにじっと時間の過ぎるのを、耐えるように待っていた気がする。

    最終追い切りからパドックまでの時間が、特にいつもより長く感じられてならなかった。時間には、正確に刻まれる機械的な時間と、感情や意識が織りなす時間がある。当然、このふたつの時間は、感じ取る側の都合で長くなったり短くなったりするものなのだ。

    でも、やがてそのときは来る。

    土曜の夜に競馬新聞を買う。私は、「研究ニュース」を選んでいるが、この新聞は以前の「競馬研究」がリニューアルされたものだ。調教欄が見やすくて、私はずっと「競馬研究」の読者だった。何よりも「競馬研究」はある種独特な知性を発揮している編集で特化していた面があったが、「研究ニュース」になってからは、この独特な要素が極力排除されて、普通の競馬専門紙になってしまっているのが残念に思えてならない。時流に合わせようとすると、予想における予想者の思想哲学も消えてしまうのに・・・。

    と、ブツブツ呟いているうちに日曜日。競馬場には行かず、午前中は、居間の水槽を覗いて今年生まれたミナミヌマエビの子供(まだ2mmほどだが髭も目玉も足もちゃんとそれらしい姿でピクピクと跳ねている)を眺めたり、外のメダカに餌をやったりして過ごした。

    午後になって机の前に座り、GCを視聴しながら、安田記念の最終チェック。新たに何かを見つけるのではなく、心に決めている結論を、何とか自分に対して正当化するのだ。

    10Rハンデ戦1400mの由比ガ浜特別を迎えて出走馬を眺めていると、何となく閃いて気が向いて、4頭の馬を選び出した。メイショウメイゲツ、シルヴァーグレイス、クレアドール、ショウナンライズ。様子見だからと、何とか馬連3点にしたくて導き出した結論は、武豊メイショウメイゲツから馬連3点。しかし・・・。

    結果は、ショウナンライズ、シルヴァーグレイスで決まり、ロングショット。クレアドールは4着で、メイショウメイゲツは惨敗だった。アーッ・・・。でも、とりわけ思い入れて買った訳ではないので、これもまた競馬と、すぐに気を取り直して安田記念の私の結論は何も変えなかった。

    私にとって、この安田記念の最大の謎は、どの馬が先手を取るのか?ということに尽きた。選んだ3頭は、力通りに走ったならどの馬も好位からスパッと差す馬だった。スパッと差し切るには、ある程度レースが流れて、それでも底力を発揮して伸びてくる必要がある。では、先導役はどの馬なのかと考えると、安田記念の12頭の出走馬の中で、これだ、この馬がペースを創る!という馬がはっきりとはしてこなかった。それだけが不安だった。近走を見ていると、2番手3番手のレースが多かったロゴタイプが、あるいはとも浮かんだが、3・4年前に朝日杯や皐月賞を勝ったときの切れまくった瞬発力を想い出すと、いやまさかと否定せざるを得なかった。

    しかし、しかしである。そのロゴタイプが好スタートを決めて先頭に立った武豊ディサイファを外から交わして、スタート直後の200mの間に逃げの体制を築いたのである。

    オーッと、心が騒いだ。ロゴタイプ初めての逃亡劇。さてその結末や如何に?

    すでにこの時点で、T.ベリー騎乗のモーリスが2番手を確保。ドバイでムーアに栄冠を取られた福永祐一のリアルスティールが外から3番手を進んだ。

    前半3F35秒。マイル戦としては平均ペースで、田辺裕信ロゴタイプが逃げる。しかしモーリスから後の馬たちは、折り合いに苦労している馬たちばかりだった。特にT.ベリーの上下動が大きかった。

    4コーナー。たまらず蛯名正義イスラボニータが外から先団に並びかけてくる。しかしこの馬は、馬群の中から闘志をむき出しにして伸ばしてやった方がいいタイプなのだが・・・。

    インコースを逃げる田辺裕信ロゴタイプは、最短距離を上り33秒9の脚で決めた。最後の坂の辺りの200mでは10秒台の逃亡だった。これでは他馬は追いつけない。皐月賞以来の3年2か月振りの勝利を、ロゴタイプは自身3度目のG1制覇で決めたのである。

    あれだけ騎手の上下動の激しかったモーリスが辛うじての貫禄を見せて2着を確保。ハナ差で直前に骨折のC.ルメールから乗り替わった内田博幸フィエロが3着。ダービージョッキー川田将雅のサトノアラジンが4着、結果的に馬群を抜け出すのではなく外から正攻法の競馬をせざるを得なかったイスラボニータは5着だった。

    ロゴタイプの3年2か月ぶりの勝因は、今回は騎手田辺裕信の手腕に寄るところが多いだろう。調教師は不満だったらしいが初めて最終追い切りを軽めにしたこと、そしてメンバーを見据えたうえでこれもまた初めて逃げてレースの主導権を確保したこと、それらがおそらく複合的な要因となってロゴタイプ自身の競走馬としての血を再び滾らせたのではないだろうか?気分が乗って血が滾れば、G1戦の2勝馬は、4勝のモーリス以外にはこの馬しかいなかったのである。

    モーリスの敗因は、香港遠征から帰って、着地検疫をこなしながら1か月後に安田記念を迎えるという調整過程で、馬が精神的にストレスを抱えていたとしか考えられない。ムーアやモレイラが騎乗したときのレースでの折り合いと、この日の安田記念の折り合いはまるで別の馬のようだった。ベリーの手腕に原因を見るのはおそらく誤りだ。これだけ日本馬が海外遠征をする時代になった今、改めて検疫の方法方策が議論されなければならなくなっているということではないだろうか?

    今朝は寝覚めも良く、元気に早起きできた。絞って狙って的中する快感は、たとえ馬連であっても、あるいは少ない額であっても、心地が良いものだ。まあ、よそ様から憎まれないように、めったにないことだからと、言っておこうか。

    本当は、ロゴタイプとモーリスとイスラボニータ3頭の3連単ボックスも少々抑えておいたから、いやはや最後の直線の攻防は、実は手に汗握る思いでドキドキしてました。やはりこのドキドキ感が明日への糧となります、ハイ・・・・。









    category: 競馬

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