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    Tsuruki Jun<鶴木遵>の原風景 《絶対零度》

    鶴木遵の本、新しい挑戦、趣味である競馬、将棋の駒、男の手料理、めだかやミジンコ飼育、犬猫のよもやま話、など四季折々に感じたことを発信していきます。

    水仙の花が咲いた 

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    数日前に、今年もまた水仙の花が咲いた。

    最初に植えてからもうかなりの時間が経つが、毎年少しずつ株を増やしながら、必ずこの時期に花を咲かせてくれる。
    愛らしい花だ。

    そう言えば、今もヒヨドリのペアがやって来ているので、12月からずっと食パンをちぎってやっている。もうしばらくして、山の中に食べ物が溢れてくると姿は見せなくなるのだが、まだ毎朝顔を見せる。夕方も待っていることもある。
    だいぶ慣れてきて、姿を現さないときなど、
    「顔を見せなきゃ、やらないよ」と言うと、そのうち近くの木の枝に止まって、
    「ほら、私ココにいるんだから」と主張もするようになった。
    昨日などは、昼時に犬を散歩させていると、どこで気づいたのか、2羽でこれ見よがしに空から追いかけてきた。
    こうなると毎日パンを用意したくもなってくる。     DSCN0503.jpg

    春を迎えて、花も鳥も元気良く生き抜いていることを楽しんでいるようだ。

    さて私は?と考えると、春1番の訪れとともに新刊書下ろし本「粋狂なる試み~棋道を巡る職人魂」が発行されて、新たな元気を得たが、今は、熱中の後の退屈というか祭りの後の心持ちというか、少しベクトルが下がり加減で、こんなことではいけないなと、戒める毎日である。

    まだ、本でいえば序章から第1章が終わったばかりで、これから意外なクライマックスに向けて第2章や3章が始まって行くという予感が、何となく頭から離れないのだが、頭で解っていても心が颯爽と追いついてはくれないようだ。

    ここはひとつ、皆さんに本へのさらなるご支援をお願いしておこうか。そんな輪が広がれば、もっともっと元気に励めるというものだから。

    まだ手に取っておられない方、棋具や駒の職人魂に興味ある方々、ぜひアマゾンや将棋連盟楽天ショップ、或いは直接にこのブログのコメントメール欄から、お手数でもご一報くださいませ。

    或いは、すでに読まれた方は、ご感想などをお寄せくだされば、この上ない幸せでございます。2度目の読書を堪能された方は、1度目と2度目の読後感の違いなど教えて下されば、励みになります。

    花鳥風月の躍動感を、この私にも甦らせてくださいませ・・・なんちゃって・・・。
    いえいえ、本気のお願いでございますから、ハイ・・・・。     DSCN1800.jpg  DSCN1804.jpg






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    category: 日々流動

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    高松宮記念GI~中京芝1200m 香港王者の躍動 

    埴輪馬

    ああだこうだと日々流れて行くままに身を任せて、ふと気がつけば春3月の末。
    桜も咲き始め、これからが春真っ盛りの季節。
    新入学、新社会人、競馬のクラシックレースやプロ野球開幕・・・。活気に満ちた今が、もう始まろうとしている。

    昨日3月29日。中京でG1高松宮記念が行われた。芝1200m。もはや恒例となった春のスプリンター王者決定戦だ。

    雨模様の馬場が、いろんな意味で事前の検討に邪魔をしたのが悔やまれるが、結果的には、それでもゴール前は激しく闘い合うレースとなったのは、印象的だった。スプリントの絶対王者がいないとされてはいたが、王者は香港から現われ、僅差で競い合った日本馬たちも、きちんとその素質の高さを発揮したのである。

    ゴールまでの3Fが、11秒6、11秒6、11秒3。やや重の馬場での、この揺るぎのない闘いが、この日のレースの格調の高さを照明していた。そう思う。

    9Rの1000万条件の1200m戦で、直線に向いた各馬が、芝の状態の良い外へ外へとバラバラになって向かったのを見たときは、いったい本番高松宮記念はどうなることかと心配するほどだったが、さすがにG1に挑む馬たちは、一団となって進み、そこから強い馬だけがさらに伸びるサバイバル戦を演じて見せたのである。9Rの決着タイムは1分8秒6で、高松宮記念は1分8秒5ではあったが、さすがに中身の濃密度が違ったということである。競馬には、時計の単純比較では語れないレースの密度があるのだ。

    ただ9Rを見てしまった私には、パドックから各馬がウォーミングアップに入るまで、迷いに迷った。
    雨模様の馬場の開催最終日である芝の状態が正しくは読み取れず、どんなレースになるか明確な私の中の答えが見いだせなかったからだ。

    最後まで迷いながら、結局は、これまで楽しませてくれた馬たちを応援することに決めた。これまで書き記し続けてきたものを読み直せば、私が選んだ馬は明らかだろう。

    ミッキーアイルを軸にして、ダイワマッジョーレ、ハクサンムーン、コパノリチャードを相手に選び、香港から遠征してきたエアロヴェロシティは、いかに香港スプリンター王者と言えど今回は様子見と決めた。(ハイ、愚か者です)

    ミッキーアイルは、前走辺りから先行差しの競馬に対応して新境地を示していたし、そうなれば1200mの基幹距離でスピードに対応したら、やがて完成期にはマイルや2000mまでの距離にも必ず対応できる素質馬であると確信していたし、パドックでのハクサンムーンは好状態が見て取れたし(馬場入り後もいつものムーン回転を2・3度して納得したら自分から馬場に駆けても行った)、ダイワマッジョーレは私の戦力である穴馬だった。

    今日のストレイトガールに見向きもしなかったら、香港スプリントG1でこの馬を負かしたエアロヴェロシティも盲点となってしまったのは止むを得ない。

    しかしエアロヴェロシティは強かった・・・。

    スタートで、ただ1頭ミルコ・デムーロ騎乗のダイワマッジョーレが出遅れて、高松宮記念が始まった。

    宣言通りに逃げたアンバルブライベンを行かせて、直後の外に酒井学ハクサンムーン。その後ろに浜中駿ミッキーアイル。その直後に武豊コパノリチャード。好スタートを切ったザカリー・バートンのエアロベロシティは先行インのポジションだった。

    瞬く間に第4コーナーを廻って、ここから今日最大のクライマックスが訪れた。

    最初に、果敢に先頭に立ったのは酒井学ハクサンムーン。強いときのハクサンムーンの勢いが満ちていた。
    それを目がけて外から迫ろうとした浜中駿ミッキーアイル。インから芝の良い馬場5分処に出してきたのがバートン・エアロベロシティ。

    すでに3頭の競馬になることは明らかだった。この瞬間には、私はミッキーアイルとハクサンムーンでしてやったりと高揚感すら覚えていたのだが・・・。

    それにしてもだ。それにしても、直線半ばで一度は外からミッキーアイルに交わされたエアロベロシティの底力はまさに破壊的だった。

    被せられて交わされた不利な体勢から、最後に追い出されると、そこから伸びて来たのだ。普通ならそこで終わって一丁上がりの状況から、怯まず臆せず豪快に差し返してきたのだ。

    まずミッキーアイルの気力を消沈させ、最終最後の瞬間には、勝利の体勢に入っていたハクサンムーンの願いを断ち切って、自ら覇権を手中にしてしまった。まざまざとその王者の力量を見せつけたのである。

    ゴールイン直後、右腕を観客席に向かって高々と上げたバートンの興奮も当然と思える勝利だった。

    素晴らしいレースだった。私もある種呆然としながら、いいレースを見たと呟かずにはいられなかった・・・。





    category: 競馬

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    「相棒」最終回 

    JT

    日曜の午後、阪神大賞典を見終えてから、どうも、何となく気が重く感じて、脱力感に襲われていた。

    自分自身の感性の鈍さを責めていたのかも知れない。人には、ともすると素晴らしい閃きを、心の中の感情論で打ち消してしまう場合がある。その鈍さが、自己嫌悪となってくるのだ。

    阪神大賞典。GCの録画していた調教VTR番組を見終えて、私は、この阪神大賞典の軸馬は、私の感じた気配からデニムアンドルビーに決めた。馬が走りたいというオーラを発散していると感じたからだった。ラストインパクトとラブリーデイもいい気配に思えたが、よりデニムアンドルビーに魅かれた。

    そこで6歳となったゴールドシップである。G1実績馬というより、今や気分屋競走馬の問題児となっている愛らしい馬だ。阪神での圧倒的な実績もあり、AJC杯の情けない敗戦を抜きにして、今回は断然の1番人気に押されるのは自明だった。
    そんな眼で、最終追い切りを眺めた。

    それなりの動きではあったが、どうも私の心には、ピーンと響いて来るものがなかったのだ。
    競走馬というよりまるで種牡馬の様な肉体。弾けるというより、どことなくモッサリとした動き。本当に弾けていたときは、坂路での追い切りでは、後肢の蹴っぱりからもっと多くのチップが舞い上がっていた記憶がある。

    だから、出走馬の格だけを考えれば、G1実績馬ゴールドシップとJC2着馬デニムアンドルビーの1点勝負で良かったのに、私は感情的な心情論で、敢えてデニムアンドルビーからラストインパクトとラブリーデイの2点を選んだのだった。

    結果は、浜中駿デニムアンドルビーは直線抜け出したものの岩田康誠ゴールドシップに追いすがれず2着。菱田ラストインパクトはここでは瞬発力で劣り3着。切れタイプのシュタルケ・ラブリーデイは距離適性を露わにして着外だった。

    ゴールドシップは、腐っても鯛。阪神の鬼であることを証明して、阪神大賞典は終わった。
    それにしても今のゴールドシップは、上り3Fが35秒台となるレースでは強い。だからこその阪神の鬼なのだろうが・・。ということは、これから先も京都や東京では、またあのいやいやをするゴールドシップに戻ってしまうのかも知れない・・・。春天皇賞に出てくるのか、宝塚記念に廻るのかは、まだ判らないが・・・。

    で、結局、私は、○か×かの裏表の勝負に、負けたのだ。デニムアンドルビーの好走を予感したのに、相手に格上のゴールドシップを捨て、より高配当となる2頭を選んだからである。それも何となくの感情論でである。そもそも競馬に保険の馬券があるとは考えていないから、3点にしておけばという慰めは、私にはないのだから。むしろ3点にせず、結果的に玉砕したことを、明日の為に誇りに思うしかないのだろう。(これは決して負け惜しみではありません。敢えて言えば勝負の機微なのです)

    で、ここ数日、何となく気が重い毎日を過ごしていたのだった。
    そのとき、yahoo japanのトップページで、「相棒」の最終回が視聴率20%を超えたが、酷評だったというニュースのタイトルを見てしまった。
    何となくどんなものかと見たくなって、無料ドラマのサイトから視聴してみた。

    いやいや、1本のTVドラマとしては、良く書けている脚本だった。が、多くの視聴者はシリーズものとして追っかけてみているから、それなりにキャストへの思い込みもあって、最終回で突如犯罪者「ダークナイト」になってしまった甲斐亨への違和感を抱いてしまったのだろう。でも最終回1本の脚本として見れば、それなりの出来栄えだったと、私は見る。もしシーズン13全体を通して、最初から「ダークナイト」を背負って演じることを要求されたとしたら、演じる成宮寛貴も手に負えなかったかも知れないが、この最終回では、ときにいい表情を出していた。この役者成宮寛貴は、ダークな表情にどこか人生を映し出すものを持っているようだ。陰ある悪役をいずれどこかで演じて欲しいものである。

    成宮寛貴を見ながら、私は感じていた。かつて現役時代に取材をし続けた騎手田原成貴に感じた匂いと同質の雰囲気を。二人には奇妙によく似た匂いがあることが、私には不思議に思えるほどだった。それは他者に対して、特権的に商品価値となる風情なのだろう。

    こんなことを感じながらドラマを見ていると、いつの間にか私の気の重さも消えて行った。
    そうだ。気の重さなんて痛みの様なものだ。より強い刺激が、それまでの刺激を消してしまうのだ。

    だから日々、止まることなくより刺激的なもの、より良いものを見て行く必要があるのだろう。
    少なくとも、いい加減なものを、最高品と錯覚しないようにである。その鑑賞眼は、いつも己に刃として突きつけられているのだから・・・・。
    いつのときも、頭は柔軟に、態度は謙虚に、そして心は明朗に、学び続けること。それしか自らを切り開く方法はない・・・。




    category: 日々流動

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    習志野のTさんからの読書感想文 

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    今朝、出石作新「古流水無瀬」を所有する習志野のTさんから、「粋狂なる試み~棋道を巡る職人魂」を読んだ感想が送られてきた。なかなかの長文で、気を使っていただいたなと感謝感激したが、同時にその昔小学生の頃の夏休みに宿題で書かされた読書感想文をふと想い出して、思わず微笑んでしまった。

    でもこれだけの長文の批評を、そのまま眠らせてしまうのは申し訳ないので、ここに掲載することに決めたのである。Tさんお許しあれ。

    『鶴木さん渾身の書き下ろし作ですのでこちらも襟を正して熟読せねばならないと思い、まずはさらっと、次にじっくり、最後に自分なりにいろいろ考えながらの計3回、あとは気になったところを部分的に何度も読み返していました。

    非常にためになりましたし、いろいろと物を考えさせられる本でした。
    ありがとうございました。

    一級品と言われる棋具を生み出すために世代を重ねて熟成された匠の技、職人が何世代にもわたって磨きをかけ、やっとの想いで築き上げてきたこの技も、その良さを分かってくれる受け手が居なくなれば一瞬にして廃れてしまい二度と復活できない。
    そんな竹井さんの危機感が伝わってきました。

    私は経済原理とは人間の自然な行動原理のことだと思っています。
    自分にとって価値の高いものをできるだけ安く購入したいというモチベーションは普遍的だ考えます。
    本来は経済原則に任せていても将棋文化が自然に次世代に継承されていく状況が理想なのでしょうが、現状ではなかなか難しいですね。
    そもそもの問題は、
    「景気悪化により高級棋具に価格相応の価値を見出す人が減ってしまうと、 匠の技が継承できなくなるくらい元々の市場が小さ過ぎること」
    ではないかと思います。
    世の中の皆さまが言われる通り将棋市場そのものの拡大が急務だとは思います。
    とはいうものの一朝一夕に将棋市場が巨大化するはずもなく、当面匠の技を次世代に継承のためには、何らかの手を打つ必要があると思うのですが、その打ち手は何かという問いに対する竹井さんの答えが粋鏡庵ということなのだと思いました。

    次世代へ将棋文化を継承するという大事業のために、粋鏡庵から投げ込まれる一石から起こったさざ波が徐々に大波になっていく様を思い浮かべています。
    「佐藤/飯塚将棋教室」、「粋鏡なる試みの本」、「乙未の駒八部作」、「棋士への将棋文化講座」、これらの苗木たちがいったいどのような大木に育って行くのか、今後の進展が楽しみでなりません。
    様々な施策を口で言うだけなら簡単なのですが、実際に行動を起こすとなるとその労力は大変なものであろうことは容易に想像できます。
    さしあたって私にできること言えば、さまざまな棋具に興味を持って、観察し鑑賞眼を養うこと、出石駒で棋友を誘惑すること(?)くらいでしょうか。
    もし何かありましたらおっしゃってください。
    竹井さんを始めとして粋鏡庵に集う人々の今後のご活躍をお祈りしております。みなさまにもよろしくお伝えくださいませ。
                                     
                                            習志野のTより』

    日々仕事に励んでいるTさんが、思わずこんな文章を書いてみる気持ちになったということは、おそらく気に入って読んでくれたのだろうと少しだけ安心した。だから「3度と言わず、4度でも5度でも読み返してください。毎回新しい発見があるはずですから」と、メールを返信しておいた。そうなれば本望なのだが・・・。

    そのとき、数日前にコメントを下さったnishiさんのブログに、同じく読後の感想が載っていることに気づいたのだ。
    大きな本の写真がUPされ、熱心に呼んでいただいたことが解る感想が書かれていた。
    nishiさんのブログは、「桜堤団地に桜咲く」http://blog.goo.ne.jp/nishi1958で、実は私は以前に覗いたことがあり、鮨やウナギ料理の紹介に、この人とはたぶん食の好みが一致しているなと感じてもいたし、20組ほどの盛上げ所有駒のレベルの高さも存じ上げていた。そもそも最初は、初代竹風の駒を調べていたときに、たまたま出会ったという記憶がある。
    まあ、詳しい内容は「桜堤団地に桜咲く」を覗いてくださいませ。

    何よりもこうした皆さんの反応が次第に明らかになって伝わってくると、いろんな意味で励みになるということである。

    改めてこの場で、ありがとうございますと書き記しておこうか。







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    熾烈な勝負の鉄則~電王戦第2局 

    由進作 勝運駒

    3月21日夕方。
    中京の3歳芝1400mの重賞ファルコンSが、私の想定外の思いもよらぬレースになり、阪神の皐月賞トライアル若葉Sも2着川田ワンダーアツレッタから武豊ポルトドートウィユと和田竜二アダムスブリッジを応援して、シュタルケ騎乗のレッドソロモンの好走の前に2着3着4着。挙句の果ては、2着は外さないと信じたM.デムーロ・ディアマイダーリンが、ゴール寸前に三浦アースライズにハナ差差されて3着。逃げ切った柴山雄一アルビアーノとの馬連が勝負馬券だったので、微妙な勝負の決着を思い知らされていた。

    そう言えば、先週の桜花賞トライアル阪神フィリーズレビュー芝1400mも、-20Kgの馬体減を嫌って大外から捲って勝利したM.デニーロ騎乗のクィーンズリングを消し、シュタルケ・ラッフォルツァートを軸にして、勝負の機微を思い知らされてもいた。

    これまでの取材体験から、プロの勝負は、厳しく相手の弱点を突くことが、自らの勝利には最大の有効手段だと理解していたが、最近の競馬の勝負は、騎手の知略による駆け引きというよりも、馬の力任せの淡白な結果が多く、こんな基本の勝負観さえも、一瞬忘れていたのである。
    それぞれのジャンルでプロとして生き抜いている者にとっては、誰もが毎日そのことを反復訓練しているのだから、舞台に登場しての最後の勝負は、知略戦略の闘いになるのは当然の結末であり、相手の意表を突ける柔軟な感性と頭の良さが最大の武器となるのだ。

    ハナ差の決着で幸運を逃した私は、憂鬱な時間を埋めようとして、試しに将棋電王戦の立見席に寄ってみた。
    人とCPUの力のねじり合いのような対局が映し出されていた。面白そうな勝負が演じられていたのである。

    1筋2筋の攻防で、永瀬拓矢6段がいかに詰み筋に寄せて行くか、その力量が問われた88手目。2七同じく角成らず。

    この1手が、実はCPUソフトの弱点を突く意表の手であった。角ならずに対応力がインプットされていなかったSeleneは、混乱して投了信号を流してしまっていたという。そしてSelene が指した次の1手は王手を無視した2二銀。将棋のルール上、この手は反則の禁じ手だった。

    棋士同士の対局なら、即座に判定される反則負けだから、その後の時間をかけたドタバタ劇には、笑うしかなかった。密室で協議することすら、本来おかしいことであることを、会場の高知城に集った誰もが慌てて忘れていたことが情けなかった。
    やはりこの電王戦は、名人戦の開幕を前にした興行なのだろう。

    それにしてもだ。事前の研究で、Selene の弱点を把握していた永瀬拓矢6段はさすがである。これまで表に表われなかったCPUソフトの弱点を、見事に突き切ったのだから。

    相手の弱点を、知略で突いて自らの勝利にしていく勝負の鉄則を、改めて教えてくれたような感じがする。

    この結果で、おそらく永瀬拓矢6段は、これまでの千日手王から、今度はCPUソフトクラッシャーという新たな伝説的な称号を得るだろう。あらゆる意味で、今回の教訓は大きい。

    そうなのだ。プロの勝負というのは、「ただ強い」ということより、「どう強い」ということの方が重要なのだ。「どう強い」かを問うとき、そこには人の狂惜しいまでの情念が浮かび上がってくるのである。





    category: 異化する風景

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