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    Tsuruki Jun<鶴木遵>の原風景 《絶対零度》

    鶴木遵の本、新しい挑戦、趣味である競馬、将棋の駒、男の手料理、めだかやミジンコ飼育、犬猫のよもやま話、など四季折々に感じたことを発信していきます。

    ささやかなる3回忌~「優駿」4代目編集長福田喜久男 

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    人の噂も75日という。人の記憶も3年も経てば薄れていく。

    でも、人には忘れようにも忘れられない想い出があるのも事実だ。私の場合は、夏が来れば想い出す遥かな尾瀬のような、あの男の想い出である・・・。

    「優駿」4代目編集長を務めた福田喜久男。2年前の8月4日にあちらへと旅立った。となれば、今年は3回忌である。亡くなったときには、独身で家族に恵まれてはいなかった。だから、公式に第3者の誰かが言い出さなかったら、このまま忘れ去られて終わったに違いなかった。

    しかし、お盆が明けても、どこからも音沙汰はなく、私は、さてどうしたものかと何となく落ち着かなかった。ダービーの折りには、JRA関係者との間で「夏の頃にまた中野<廣>で会をやりましょう」などとの声もあったが、どうも立ち消えの気配だった。人それぞれに日々の生活があれば、過去の想い出などは日々薄れていくのも致し方ないのだろう。それが世間でもある。

    でも、本当にそれでいいのかと考えて、せめて私だけでも、一滴の酒をもって献杯しようかと考えたのだ。場所はやはり中野<廣>しか考えられなかったが、若い頃に周囲から福田喜久男と一緒になったらと勧められた経験もあるママさんと、私だけでは、如何にも淋しい。長きに渡って福田喜久男と朋友だった横浜の湯川章に相談すると、「明日は聖路加病院の診察日だから東京に出るから、明日の夕方はどうだい?」との話になって、突然のことだから皆さんには連絡はせず、ささやかにこじんまりと献杯しようかと、すぐに話はまとまった。ママさんを含めて福田喜久男を知る3人の会となった。

    夕方5時。店のカウンターに集った。福田喜久男のグラスも用意して都合4人分のグラスに並々と酒を注いだ。
    このとき、私は飲み手が現れないグラスに向かって言った。「たまにはこっちに化けて出て来ないと忘れられちまいますよ」
    湯川章が言った。「オレはさあ、毎朝仏壇に向かって死んだ女房やみんなの顔を想い出しているんだよ。みんなが笑っているのが不思議だね」

    現役バリバリの頃、福田喜久男の行きつけの酒場(この場所こそ<廣>のママさんの母がやっていた伝説の店だった)で、福田喜久男から言われたことがある。「なあ、鶴木君。酒場ってのは鍛錬の場所なんだよ。酒場で仕事のことを考えるのも鍛錬。大人の飲み方を学ぶのも鍛錬。何よりも、酒場は集う人間たちによって集う人も選ばれるから、そんな人たちと出会えるのも鍛錬さ。ほら、もう一杯飲みなさいよ。ハッハッ・・・」

    そんなことを想い出していると、私と湯川章は、途中から隣り合わせた新しい人物と、如何なる偶然か出会いを得たのである。先生と呼ばれたその人は、本当に先生だった。茗荷谷で《岩瀬クリニック》を開業するお医者さんだったのだ。72歳で亡くなった父、自分、そして息子と3代の医者一家でもあった。

    一度親しく話してしまうと、酒の勢いもあって、いろいろと話題は弾んだ。

    出自を訊ねると、生まれは三河、少年の頃医者だった父と共に東京に出て、その昔私がずっと住みついていた駒場東大前にある駒場東邦高校から日本医科大に進んで、若かりし頃は大学や国立がんセンターで肝臓外科医として手術の腕を振るっていたという。

    同郷ということもあって親近感を覚えたが、私が最も面白く思えたのは、駒場東邦で高校の途中まで、作家浅田次郎と同級生だったいうさわりだった。岩戸康次郎(浅田次郎)少年は、公式には中大杉並高卒だが、4年半駒場東邦生だったのだ。純真なる右翼少年でもあったという。三島事件をきっかけに自衛隊入隊もしたことを想い出すと、何となく一人の作家の精神風土も浮かび上がってくる。鉄道員で直木賞を受賞したときには、駒場東邦での同級生たちは、ブラスバンド部だった岩戸康次郎にトロンボーンを贈ったという。

    ほぼ3時間、新しい出会いを楽しんだ私たちは、次の再会を約束して別れた。たぶんこの偶然の出会いこそ、あの世にいる福田喜久男が私たちに贈ってくれた今日のプレゼントだったのだ。そう思えてならない。

    こんな予期せぬハプニングがあるからこそ、生きるということが面白くなるのだ。またひとつ、私は不思議な日を過ごしたことに大いに満足して、酔ってふらつく脚を引きずりながら、最終のレッドアローに乗り込んだのだった・・・。







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    category: 日々流動

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    初めての盛上げ駒到着~習志野のTさんからのメール 

    20140818 新「古流水無瀬」

    昨夜遅く、習志野のTさんからメールが届いていた。

    出石作新「古流水無瀬」が手元に到着したのである。さりげない文章の中に、興奮と感動が込められていた。1日24時間の連続するTさんの日常に、一組の駒が心への破壊力を持って非日常的な時空間をもたらしたのだろう。ときめくようなワクワク感、つい何度も手にしたくなってしまうようなソワソワ感・・・それらは、おそらくTさんがその昔の初恋のとき以来、ずっと忘れかけていた心の躍動だったのかも知れない。

    (Tさんのメールより)
    鶴木さん

    古流水無瀬到着しました。
    私にとっては初めての盛り上げ駒です。
    いままでお店で見るだけだった盛り上げ駒がとうとう私の手元にやってきました。
    彫埋め駒にはないこの漆の質感が堪りません。これが盛り上げ駒か~。

    古流水無瀬の書体が最高。じっと見ているとそのまま吸い込まれて行きそうです。
    木地もいいです。適度な斑なので書を邪魔するほどでもない、ちょっとしたアクセント。
    暫く堪能したらもう少しまともな感想を書きます。

                                          T生

    今朝、メールに気づいた私は、こんな返信を出しておいた。
    Tさん

    ついに、念願の、そして初めての盛上げ駒の到着、お喜び申し上げます。
    今「古流水無瀬」を、平箱を開けて覗く度に、笑みがこぼれ、それでも何となく落ち着かず、すぐにまた思わず閉じた平箱を開けて、ニヤニヤとしてしまう状態でしょう。初めての盛上げ駒はそんな力を持っている筈です。特に、出石=由進の手抜きのない丁寧な仕上げなら、手に取る者の心を弾ませます。
    斑入り根柾の味わいは、これからどんどんと深みを帯びてくるはずです。手入れが楽しくなります。
    人の触覚と視覚は、彫埋めではなく盛上げによってより刺激が増すものだと知ると、駒そのものへの観方も今後変わってくるでしょう。
    Tさんの弾む気持ちが込められた写真を、まずは待ってます。落ち着いた頃、実際に見せてください。

                                            鶴木

    やはり作品というものは、手に取る側の心に働きかけての価値である。
    心を打たないものは、どんな作者の手によるものであっても、作品とは呼べない。
    出石作新「古流水無瀬」は、Tさんにとっては充分に作品だったのだろう。
    やがてTさんから詳細な駒写真が届いたら、改めて皆さんにご紹介します、ハイ。



    category: 将棋駒

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    札幌記念G2 

    埴輪馬

    ようやく待っていた札幌記念ウイークとなった先週。3歳牝馬ハープスターの負担重量が52Kg、古豪ゴールドシップやロゴタイプが57Kgと知ってからは、3歳にしてフランス凱旋門賞を目指すハープスターが走らない理由がないと思っていた。

    同じく凱旋門賞に向かう予定の横山典弘ゴールドシップにも魅力は覚えたが、落鉄して蹄鉄をぶら下げたままであっても僅差の2着に追い上げたハープスターを想い起せば、真夏の風物詩札幌記念の私自身の本命は、この馬以外にはありえなかった。勿論、相手は、横山典弘の自在な手綱に任せられるゴールドシップと、朝日杯や皐月賞の一瞬の瞬発力が今も鮮烈な記憶となっているロゴタイプだった。ドバイ戦以来の休養で、ロゴタイプの畏怖感ある瞬発力がどれだけ戻っているかということは、とりわけ大きな関心だった。M.デムーロのような馬を弾けさす騎乗を村田一誠に期待していた。

    前日の土曜日夕刻。かねて約束していた私は、神楽坂で粋鏡氏と合流し、大内9段宅を訪問。この日は、競馬は封印して、名盤名駒を3時間も堪能(特に大正6年に製作され、昭和25年に木谷實、7段高川格らが揮毫した日向綾産の碁盤は圧巻の存在感だった)し、その後は神楽坂の中華料理で紹興酒を味わいながら様々な話題に興じて過ごして、最終電車で自宅に戻ったのは午前0時を過ぎていた。

    粋鏡氏からは、ホテル粋鏡庵に泊まっていけばと、好意あるお誘いを受けた。グラッと気持ちは傾いたが、好メンバーが揃った翌日の札幌記念を考えて、フラフラになりながらも最終電車に乗ったのだった。

    昼までウトウトしながら体の疲れを取って、気持ちがスタンバイしたのは2時過ぎ。昨夜、電車の中でゆっくりと新聞に眼を通していたから、当初からの結論を変えることはなかった。レースの見極めの結論は変えなかったが、駒作りに励んでしばらく競馬から意識が離れていたために、レース勘を確かめようと10Rのエアグルーブカップを枠連で6-6、3-6、6-7と3点購入すると、6-6で的中してしまったために、逆に欲が出て、パドックで軸1頭に絞って馬連2点を厚く買おうと考え直してしまった。まあ、この辺が、勝負運に勢いのあるときはプラスに出るが、勢いのないときには裏目に出る勝負の分かれ目となるのだが・・・。

    パドックを見て、ハープスターの気配の良さと、休養から復帰したロゴタイプの気が入ったような雰囲気に眼が行った。ゴールドシップは、まあこんなものというような印象に思えた。

    さて、どうする?

    6-6の的中は20倍だった。これを原資の軍資金にすれば、つまりは、メイン札幌記念をどのように買っても、今日の負けはないということだ。だったら・・・。

    こんなときには、眼線がオッズに向かってしまうのである。気持ちでは5Kg差のハンデを与えられた52Kgのハープスターと判っていても、ロゴタイプからの配当の方が数段魅力的に思えてしまったのだった。昨夜の午前様の帰宅で、まだ疲れが抜け切っていなかったのだろう。配当勝負にダラッと流れてしまったのだ。勝負の集中力は体力がなければ支え切れないのに、体の芯がどうにも言うことをきかないと、早く楽になろうと欲に走ってしまうのだ。人間の愚かさである。いやいや、私の愚かさに決まっている。

    で、結局、オッズに走ってロゴタイプからの2点勝負にしてしまった。厚めはハープスターとの組み合わせで、抑えにゴールドシップと。

    ハッハッ・・・。当初の予定通り、選んだ3点を均等買いにしておけば・・・と、ものすごく悔やんだのは、第3コーナー辺りから、川田将雅ハープスターと横山典弘ゴールドシップが馬群の外から豪快に捲り上げて来た瞬間だった。

    逃げた四位洋文トウケイヘイローの前半5Fのペースは58秒4のいささかハイペース。2番手のインを進んだ村田一誠ロゴタイプは、結果的に脚をためることはできずに、あのすばらしい瞬発力を少しも発揮することはできなかった。ロゴタイプ自身がもはやそんな馬に成り下がってしまったのか、それとも騎手の手腕や厩舎の育成方針に誤算があるのか、まだ本当の処は判らないのだが・・・・。スパッと弾けようにも、力の<ため>が無くて、弓が絞れてないのだ・・・・。

    第4コーナーを廻ってからは、ハープスターとゴールドシップのマッチレースとなった。最強馬同士の鬩ぎ合いは、やはり見応えがあった。格の違いが見せつけられるようだった。さすがであった。

    そして札幌記念を勝ったのは、川田将雅ハープスター。3/4馬身差でゴールドシップが続いた。共にこの秋仏凱旋門賞に遠征する。

    遠く5馬身離された3着は、蛯名正義ホエールキャプチャ。この馬もG1馬であったことは微笑ましい事実だった。

    私が欲目で応援した(と言っても、父ローエングリンからのファンなのだからどうしようもないのだが)G1馬ロゴタイプだけが8着に敗れ去ったのだった。

    いや、負けは、それはそれでいいのだが、持ち味を示して見せてくれなかったことに不満は大きい。

    それにしても、ハープスターである。また1頭の世界レヴェルの牝馬が、フランスで誕生するのかも知れない。楽しみだ。

    そしてゴールドシップ。オルフェーブルに続くステイゴールド産駒の牡馬を、彼の地のファンはどのように迎えてくれるだろうか?これもまた楽しみである。

    そして私は?うん、今週末こそ、地に足を踏ん張って、欲に走らず、集中力を発揮しようと、反省しております。偉大な馬たちの爪の垢でも飲まないと、体勢立て直しはできないかも知れません・・・ハイ・・・・。





    category: 競馬

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    私の一字彫り水無瀬駒の今 

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    一応の完成をみてから、しばらくの間紫外線に当てていました一字彫りの今です。

    少しづつ色合いが出てきました。いろいろと不備な部分はありますが、それは生涯2作目ということで、ご寛容あれば幸いです。

    初作の「巻菱湖」は、思うところがあって、もう一度盛上げにトライしてみようと決めました。また砥ぎ直してしまいましたので、今は彫埋め状態に戻っています。いずれ再チャレンジの結果はご報告します。

    この夏にやってみて解ったことは、彫りが上手くなったら彫埋めが楽になり、彫埋めが上手くいけば盛上げが楽になるということでした。初心者の身では、粗の部分をなかなか技でしのぐことはできませんから、結局は丁寧にそれぞれをこなすしかないのです。

    でも、まあ、この一字彫りが何とかまだ夏の間にできただけでも、良しとします。私としては、これがこの夏の私自身の「古流水無瀬」と思ってます。もうまもなく出石新作の「古流水無瀬」盛上げ駒を手にする習志野のTさんの幸福感を想像しながら、私は私のささやかな満足感に浸っています。

    明日は夕方から、神楽坂に行く予定。どんな出会いがありますやら、少し楽しみにしています・・・。





    category: 将棋駒

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    将棋駒尽くしの夏~再び、蕎麦を食べに行きます。 

    6月の末、そもそも柄に似合わず自作駒作りに挑戦してしまったことに始まった2014年夏。

    お盆が過ぎたら落ち着きを取り戻そうと決めていたのだが、どうもそうはならないらしい。

    今日、秩父の蕎麦を食べに珍客が訪れた。それも赤柾の盛上げ駒を持ってである。

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    先月、1年待ってようやく手にした出石作「江戸安清」赤柾の盛上げ駒。群馬のIさんの所有駒である。正当な赤柾の魅力(木地師杉亨二の仕立てである)と相まって、実に魅力的な駒となっている。Iさんが、恐い奥さん以外の誰かに見せたくなってくる理由は、現物を見ると納得できるというものだ。群馬のIさんの地元から私の元には、車で1時間半あれば到着するから、自慢がてら見せたくてしょうがなかったのだろう。確かに欲しくなる作品である。

    2時間を超える時間を、いろいろと話しながら過ごして、お別れした。1年後に完成する新作の、出石作「古流水無瀬」を実は注文をしたらしい。かなり本気で、出石作品を追いかけるファンとなったようである。

    家に帰って、出石のブログを見てみると、新「古流水無瀬」が発表されていた。

    先月に盛上げる前の「古流水無瀬」は、DSCN1373.jpgこうだったが、最終的に盛上げを終えて、20140818 新「古流水無瀬」完成した。

    この駒は、習志野のTさんがオーダーした、根柾木地の新「古流水無瀬」である。

    Tさんが手にしたときには、私が持つ旧「古流水無瀬」と比較できるように写真を送ってくれるそうで、ずっと楽しみにしていたが、それだけの魅力ある新作となっている。1年後の完成を待って、Tさんの後を追うように群馬のIさんも注文した理由が理解できる。由進=出石が「古流水無瀬」の決定版を生み出したようである。

    新作を最初に手にする習志野のTさんの感想がどんなものになるか?それを訊くのも楽しみだ。









    category: 将棋駒

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