Admin New entry Up load All archives

    Tsuruki Jun<鶴木遵>の原風景 《絶対零度》

    鶴木遵の本、新しい挑戦、趣味である競馬、将棋の駒、男の手料理、めだかやミジンコ飼育、犬猫のよもやま話、など四季折々に感じたことを発信していきます。

    巻菱湖三態 

    しばらく振りに、駒いじり。
    今日のテーマは、巻菱湖だ。その書体研究などと銘打って、お勉強の時間にした。

    彫駒と盛上げ駒を並べてみたが、あくまでもそれぞれの駒師がどんなアプローチで巻菱湖に接して挑んでいるのかを考えるだけなので、お許しあれ。


    DSCN1301.jpg
    まずは竹風工房の巻菱湖。工房が菱湖出身の地であることもあって、原書体に最も近いと言われる特徴があるようだ。

    DSCN1303.jpg
    続いて由進(出石)作の龍山形巻菱湖。由進作となると、書体に整然とした凛々しさが漂う。由進の特徴でもある。               

    DSCN1250.jpg
    そして、粋鏡庵にある影水作巻菱湖。多くの駒ファンが、影水独特のある種絵画的な書体に魅了される。没後に残した影響力は、今でも駒師たちを呪縛して止まない。


    こうして並べてみると、どれがどうだとは言えない。人は様々な環境で、様々な趣向や思想を抱いて生きている。当然、何を持って良しとするかという美感も、人それぞれだ。

    作品として世に問うレヴェルに達したアートであるならば、そこから先は受け手の側の好みとなる。好みなら、いい作品と言われるし、そうでなければ見向きもされない。勿論、無知で関心すら抱かないという場合もあるが。

    これが商業主義に染まると、中間権威者を敢えて作り出して、人心の誘導を図るようにもなるが、それはあくまでも売らんがための策略である場合が多い。だから騙されず、きちんと自分で判断する学習が必要になるのだ。

    良い作品の駒を求めて上を向いたらきりがない。下を向いたら後がないが、泣いて泣いてたまるかよの精神で、勉強して自分を磨けば、必ずいつか好みの作品に出会えるものだ。さらに言えば、10年後、20年後に突出するであろう才能を見出して、今から手にしておくことができれば、それは最高の幸せとなるはずだ。今ならかなりの情報に触れ合うこともできる。情報を取捨選択して、自分自身の勉強を照らし合わせ、その作家の未来に賭けてみる醍醐味を楽しむ喜びこそが、受け手が得られる最大の贅沢なのではないだろうか。

    どんな作家でも、駆け出しの頃は純真で一途に自らの作品に賭けているものだ。ただ現実は残酷なことに、プロの扉を開けて地熱を高めていたとしても、そこから先には本当の資質が問われてくる。それは未来に作品が耐えられるか否かということでもある。やがて未来に翔いた名工たちの作品も、駆け出しの頃にはおそらく安価であったろう。まだ海のものとも山のものとも判らない駆け出しの頃から、多少巧いということを頼りに高額な値付けに走る人間は、作家ではなく商売人でしかない。価格というのは、実は受け手が決めていくものである。これだけの作品には、これだけの代価を用意しなければ申し訳ないと。そうなったときから作家の自立が始まっていく。

    私の場合、評価のキーワードは、「凄い」である。「巧い」より「凄い」を好む。「巧い」は時代の消耗品だが、「凄い」は、未来に耐えられる。凄くなければ、時間の重みに負けてしまうのだ・・・。

    ふとそのとき、こんな巻菱湖があることに気づいた。残念ながら、一つは現物ではなく名品の写真で、もう一つは小型の根付けだが。

    奥野作菱湖 R氏所蔵
    R氏所蔵の奥野作菱湖。(R氏には、以前に駒写真を使っても良いとメールで了承していただいている。感謝します)

    DSCN1309.jpg
    小さな根付の彫駒。蜂須賀作巻菱湖。影水形を彫りで決めている。


    いやはやたまには変わったことをやってみるものだ。並べてみると、それぞれの駒師の巻菱湖へのアプローチが少しづつ解き明かされてくるようだ。
    やはりこの後は、自分自身の勉強でどれが好みか決めるしかない。

    まあ、裕福なら全部集めてその日の気分で使い分けるなんてこともできようが、そんな成金趣味的手法は、はっきり言って邪道です。(やっかみかも・・)敢えて、絞りに絞って一組を最良の友とする。そんな美意識でこれからを生き抜いて行こうじゃないか。はて、さて・・・。

    本日は、巻菱湖のお勉強タイムでした。









    スポンサーサイト

    category: 将棋駒

    thread: 極私的将棋駒の快楽  -  janre: 学問・文化・芸術

    CM: 0 TB: 0   

    勝負処の悪夢~ホームストレッチでの落馬 

    042710R後藤落馬(4月27日第10R:騎手がいない馬。馬が無事で良かった)

    午後にGC(グリーンチャンネル)を見た。そう、いつもの如く688チャンネルの競馬中継だ。

    昨日は、京都でマイル戦のマイラーズC、東京ではオークストライアルのフローラSが行われた。G1安田記念とオークスの前哨戦である。見ておかねばならないレースだった。

    マイラーズCは、福永祐一騎乗で2年前の皐月賞2着、ダービーでも1番人気に支持されて4着に敗れたワールドエースが、その後左前脚屈腱炎で1年8か月の放牧休養を経て、今年2月東京の白富士S(2000m)で武豊騎乗によってようやく復帰を果たし、今回はシュタルクの騎乗となって好位からホームストレッチで鮮やかに弾けて完勝した。それもマイル戦で1分31秒4。レコードでの圧勝だった。ダービーで1番人気に支持された本当の理由が、この圧勝によって証明されたと言ってもいいだろう。

    ディープインパクト産駒は、2着フィエロ、3着エキストラエンド、5着オースミナインと上位を独占し、中でもワールドエースがさしあたりの頂点に立った。この後、左前脚に(或いは左前脚をかばって右前脚に)屈腱炎の兆候が表れないことを願っておこう。それにしても屈腱炎から、例え1年8か月かけたとしても現役競走馬として復帰させる現在の獣医学の進化は特筆ものである。さらに、これだけの長い期間を待てるオーナーサイド(クラブ馬であることが幸いしたか)も厩舎も辛抱強かったし、そこにワールドエースの強い運を感じてならない。こうなったら、G1馬としての復活も期待してしまう。それだけ価値ある力強い弾け方だった。

    さて東京である。
    この日、騎手後藤浩輝は、メインのフローラSでマジックタイムに騎乗予定だった。

    自らの提案で、桜花賞を回避してオークスに向けて待機したこともあって、本命に支持されていた。後藤浩輝自身も期するところがあったのだろう。だからこの日は、朝から騎乗に「気」が入っていた。1R 、2Rを連勝し、その後も3着1回。いい流れで特別戦を迎えた。

    そして10R。府中市市制施行60周年記念(芝2000m)。後藤浩輝は、スタートから中団に控えて流れに乗り、いいリズムでホームストレッチを迎えた。そう、悪夢のようなあの瞬間までは。

    直線中程。坂にかかって最後の勝負処。
    前に馬が2頭並んでレースを引っ張っている。その直後に1頭。ゴールに向かってその右側に1頭。その直後にいた後藤浩輝は、直前の2頭の間を突き抜けようとした。この間隙を捉えれば、ゴールが見えてくる。2頭の間には充分に間隙はあった。後藤浩輝は意志を持って抜け出そうとした。

    と、そのときだ。そのとき直前左にいた騎手が激しく左鞭を打って勝負に出た。激しく左鞭を打たれた馬は右に斜行した。この咄嗟の動きが、前方の2頭の間の間隙に首を覗かせようとしていた後藤浩輝の騎乗馬の前脚を払ってしまい、馬は前のめりに転倒。後藤浩輝も落馬して馬場に打ち付けられたのである。時間にして僅か2・3秒の出来事だった。

    後続馬が転倒した事態に、後肢を引っかけてしまった騎手は何度も後ろを振り返った。岩田康誠だった。いみじくも2年前の5月にマウントシャスタの斜行によって、後藤浩輝の長期休養の原因を作ってしまった騎手である。どんな因果が2人の間にあるのかは神のみぞ知るところだが、またも後藤浩輝を傷つけてしまったことは間違いなかった。

    馬場に叩きつけられて少しも動けなかった後藤浩輝は、そのまま救急車で病院に搬送され、検査の結果、第5・第6頚椎の棘突起骨折が判明。前回も頚椎を痛めているだけに、心配な事態となった。

    究極で競馬は人馬による格闘技と理解している。勝負態勢に入ったときの騎手の一瞬の狂気も理解している。落馬事故も好き好んで起こさない騎手のしきたりも理解している。命を賭けている現実は、騎手であるなら共通認識として持っている。何かを意図的に起こせば明日は我が身であるからである。

    それでも「気」が入り過ぎた瞬間には、アクシデントは起こるのだ。

    今回の場合、岩田康誠にとっては実に間の悪いことになってしまった。誰もが再犯と理解してしまうだろう。だが、貪欲にゴールを目指していくことで、地方競馬からJRA騎手に転じた岩田康誠は、自分自身を創り上げたのだ。その勝ちに拘る余りにも貪欲な姿に、反面でエゴととらえて批判があるのも事実であるらしいが。

    今はただ、後藤浩輝の不屈の復帰を願い、岩田康誠の今一つの他者他馬への気配りを願うしかないのだろう。
    ドバイでのライアン・ムーアのジェンティルドンナの騎乗を想い出しても、勝負に出る瞬間の騎手は、鬼になって勝負の態勢を創り上げる。今回との違いは、あの斜行には落馬の被害馬がいなかっただけである。強引さは変わらない。ただ世界のトップジョッキーと岩田康誠の違いが、落馬の原因者となるかならないかにあると考えるなら、これからの岩田康誠は、さらに周囲を見回す配慮を初心に帰って身につけるべきだろうことは論を待たない。

    後藤浩輝を心配しながら迎えたフローラS。
                      
                       20140427フローラS サングレア①     

    マジックタイムは杉原誠人に乗り替わったが、6着。勝ったのは、すでにハープスターを擁する松田博資厩舎のサングレアルだった。ブエナビスタの父違いの妹が、3戦目にして姉ブエナビスタのような末脚を発揮して勝利した。ゴール前1F(200m)の弾けた豪脚も、圧巻だった。また1頭、名牝候補生がクラシック最終便で誕生したのである。余談だが、この馬の担当者は、ハープスターの担当者と同じ山口厩務員だという。この人は、ブエナビスタもジョワドヴィーブルも担当した腕利きである。切れ味鋭い牝馬は、この人に託したら持てる資質を完璧に発揮できるように日々の世話をしてくれるのだ。今や牝馬にとっては、日本一の厩務員と言っても良いだろう。
                     
                        20140427フローラS サングレア②


    勝利騎手は、10Rの悪夢を、一瞬忘れるようにレースに集中した岩田康誠だった。しかしこの騎乗が、正攻法のものだったことには、僅かではあったが救われる思いがした。岩田康誠よ、今の君は馬群で無理をしなくてもこんな騎乗が許される騎手になっている。それを心から理解して欲しいと思うのだが、どうだろう・・・。後藤浩輝の痛みを、心底から共有することでしか、今回の岩田康誠には道がないと言わざるを得ないのだ。

                       140427フローラS サングレア③









    category: 競馬

    thread: 演劇的競馬論  -  janre: 学問・文化・芸術

    CM: 0 TB: 0   

    4月20日 皐月賞~中山・2000m 祝イスラボニータ悔トゥザワールド 

                         140420 皐月賞 イスラボニータ

    終わってみれば、話は単純明快だった。
    皐月賞に至るまでに4勝と、最も勝ち星を重ねていた2頭の決着だったのである。

    だからと言って、皐月賞のレースがその通り単純明快だったとは思えない。この私にもそれ相応の、絶えず考え、迷い、惑う時間が流れていたし、或いは関係者や騎手にも、大丈夫と自己説得する時間や、こうしたらどうかと決断する時間が、錯綜して絡み合っていたことだろう。だからこそ、2014年皐月賞も素晴らしいレースになったと言えるのではないだろうか。

    いつもの通りGC(グリーンチャンネル)の最終追い切りを見て、出馬表を確かめたとき、私は即座に3つの判断をした。
    まず上位人気の5~6頭ほどの馬と、そうでない馬との間には、深くて暗い河があり、それは力の境界線となっているということ。
    もう一つは、その境界線のこちら側にいる馬であっても、それぞれが勝ち抜いたレースのレヴェルを考えれば、自ずと結論は絞られてくるはずだと。このとき私が重視したのは、昨秋の東スポ杯2歳S、朝日杯、弥生賞である。
    最後に、それらに私の感じた最終追い切りの気配を重ね合わせた。

    すると次の馬たちが残った。

    トゥザワールド~若駒Sで示した33秒6の末脚。弥生賞の粘り。騎手川田将雅の魅力。2着を外さないのはこの馬だ。
    イスラボニータ~何と言っても東スポ杯2歳Sのレコードタイム勝利。共同通信杯の上り33秒2の楽勝。
    ワンアンドオンリー~弥生賞ハナ差2着で示した弾ける末脚。常に1発を秘めた騎手横山典弘の魅力。
    アジアエクスプレス~朝日杯の覇者。早い時計決着に不安があるが、戸崎圭太が手の内に入れてどんなレースをするか。
    ウィンフルブルーム~先行の魅力。実績の割に人気薄。柴田大知の逃げが決まれば、意外に粘るのではないか。
    トーセンスターダム~きさらぎ賞のレヴェルは?だが、如何にもディープ産駒らしい好馬体と追い切り時点の好気配。

    木曜の夜、私はここまでの結論に至っていた。だから枠連で買うなら、1-8、8-8、4-8でほぼ完璧だと確信していた。

    だが、ここからレースまでが迷い惑う時間である。

    もっと絞りたかった。後2頭消せれば、馬連3点の勝負馬券となる。

    消したいのは、ワンアンドオンリーとトーセンスターダムだった。この2頭は、4コーナーがゴチャつく小回りの中山よりも、本当に狙ってくるのは東京のダービーではないかと思えてならなかったのである。

    でも絞り切れなかった。金曜は終日、頭の何処かで考えていた。
    土曜は、中山グランドジャンプのアポロマーベリックの圧勝劇を楽しみながらも、考えていた。

    日曜は、朝8時半のレッドアローに乗って池袋、丸の内線で大手町、東西線で西船橋。ここから専用バスで競馬場と、武州から江戸廻りで下総の国へと駆けつけたが、まだ決められなかった。でも枠連なら3点で決まる確信はいささかも崩れなかった。

    昼前にカメラマン石山勝敏と会ってコーヒーを飲んでも、M広報新部長やT副部長に挨拶しても、O新「優駿」担当上席調査役と初対面しても、古井由吉、矢野誠一、山野浩一、吉川良、大内九段らの大先生方とジョークを交わしながら挨拶しても、まだ決めかねていた。それでも枠連なら1-8、8-8、4-8で決まるという囁きが、両耳の奥深くで聞こえていた。

    パドック中継で馬の状態を確かめる。選んだ馬たちはどれも溌剌としていた。

    ゴンドラ席で出走馬を眺めている私の眼の前を、ウォーミングアップに入る馬たちが駆け抜けていく。横山典弘ワンアンドオンリーも武豊トーセンスターダムも、消すまでもなく良く見えた。

    さてどうする?

    10年前の私なら無理もしただろうが(当時の私を知る人はこの無理が大胆な攻撃となって何度も成功したことを知っていて今でも語られるほどの伝説となっている)、でも最近は極力原稿以外の事では無理はしないようにしている。体力が無理に追いつかないからだ。だからこのときも、10年前ならこれをこうして買っただろうが、今はそうしないよなと、自分に言い聞かせた。勝負事の集中力には、本当に体力が不可欠なのだ。

    締切時間が迫って、結局私は、木曜の夜に直感した枠連だけを買った。ただ8-8を、中でも勝負馬券にしてしまったのは、その昔を想い出してしまった影響だったのかも知れない。つい粋がってみたのだろう。冷静な結論は、トゥザワールドとイスラボニータの2頭が大本線だったのに。このブログにも、この2頭はそう書き綴ってきたのに・・・。

    2014皐月賞の最初の勝負処は、第1コーナー地点での位置取りだった。

    柴田大知ウィンフルブルームは、大外枠から行き脚をつけて逃げ、芝3戦目の戸崎圭太アジアエクスプレスは、いつもより前目の3番手に押し上げていた。前半に多少でも行き脚をつけた影響がゴール前に出なければいいな、いや耐えて欲しいと、私は願った。

    このとき、川田将雅トゥザワールドは、他馬の壁のない外目の3番手で、ほんの僅かだがより前に行きたいような素振りを見せていた。引き換え、蛯名正義イスラボニータは中団の馬群の中で折り合っていた。武豊トーセンスターダムはイスラボニータの直前の馬群の中にいたが、何故かそこにいるというオーラも発せず、馬群にもまれているように私には思えた。横山典弘ワンアンドオンリーは、大胆にも最後方につけた。横山典弘は、勝負するポイントは任せておけというように主張していたのだ。まるで皐月賞の舞台を来たるダービーの予行演習にして脚を測ろうとしていた。やはり糞度胸が据わっていた。

    残り5F標(1000m)を過ぎた辺りから、後方待機の横山典弘ワンアンドオンリーが動いた。しかし中山では、馬群を縫うことはできず、馬群の外を捲り上げるしかない。

    馬群が詰まって第4コーナー。ウィンフルブルームもアジアエクスプレスもトゥザワールドも先行したまま粘ろうとしていた。私は8-8の読み筋が的中したかと、一瞬夢を見た。

    そのときだ。そのとき蛯名正義は、インからイスラボニータを外に出した。蛯名正義にとっては、それが第1コーナーのポジション取りに続く第2の勝負だった。

    外に出た瞬間から、イスラボニータはトップギアにシフトチェンジして、いっきに弾けた。

    最後の急坂を登り切った辺りから、食い下がる川田将雅トゥザワールドを交わして先頭に立ち、皐月賞馬となった・・・。

                        140420 皐月賞 ゴール前

    柴田大知ウィンフルブルームは3着に粘って善戦した。
    横山典弘ワンアンドオンリーは最後に伸びてきた。もし皐月賞があと100mあったならと思わせる追い込みだった。推定上り34秒3。これはレース最速の上りタイムであり、広い東京コースのダービーならと他の人馬に畏怖感を刻みつけたろう。そう、父ハーツクライの天才的狂気、或いは狂惜しさを秘める競走馬として。
    武豊トーセンスターダムのだらしのない敗戦は理由が思いつかない。せめてダービーに備えて脚を測ったと言えればいいのだが、それすらもなく見せ場のない敗戦をしてしまった。個人的には、馬脚を現したとは言いたくはないのだが・・。

    イスラボニータには素晴らしい勝利だったと思う。幻のダービー馬フジキセキ産駒の初めてのクラシック制覇。毛色にしても、何となく父を偲ばせるし、懐かしさを覚えてしまったほどだった。

                       140420 皐月賞 イスラボニータ②



    ただ、騎手蛯名正義のゴール直前100mほどの騎乗フォームには、敢えて一言憎まれ口を叩いて置こう。

    そう、あの遠慮がちなケツ振りダンスフォームだ。私の周囲の口さがない連中は、すでにあのフォームを「野良犬ファックフォーム」と言って笑っている。川田将雅のフォームとは違い、蛯名の場合は上半身が起きてしまっているから、ぎこちなく思えるのだ。何故、従来の蛯名正義フォームを変えようとするのだろうか?あの騎乗で世界に通用してきた騎手なのに。

    確か英国人騎手パット・エデリーが80年代の終わりか90年代初頭頃に初めて日本に持ち込んだ騎乗姿勢であるが、当時は誰も真似をしなかった。それを、時代が巡って、地方出身騎手岩田康誠がJRA競馬に持ち込んで大成功を収め、同時期に川田将雅も取り入れたのだが、では何故、日本の競馬を支えている武豊や横山典弘が採用しようとはしないのだろうか?

    それは彼らが、今の騎乗フォームで通用すると自信とプライドを持っているからである。フジヤマケンザンやエルコンドルパサーで世界に羽ばたいた蛯名正義も、従前の騎乗フォームでプライドを持って欲しいと願うのだ。百歩譲って、騎乗フォームの革命的変化を求めてさらに高みに昇ろうとするなら、せめて私たちの前に公開するのは、ほぼ完成したものを見せて欲しい。そうでなければ、競馬を支える無数のファンに対しても礼を失することになるではないか。それがプロフェッショナルの意地というものではないのか?今のような遠慮がちなケツ振りはもどかしくてならない。これは騎手の威厳にも関わることである。このことは心してもらいたいと願うのだが・・果たして・・・?

    最後に安全策を取ってしまった私の皐月賞は、イスラボニータとトゥザワールドへの賞賛、ワンアンドオンリーへのダービーへの期待で幕を閉じた。収支トントンの結果以上に楽しめた。

    さてさて、それにしてもハープスターのダービー参戦はあるのか?もし3歳牝馬53Kgでの凱旋門賞出走が実現するのなら、ここはオークス楽勝の選択の方がいいに違いない。でもこんな話題に触れることができるだけでも、それは実に幸せなことなのだ。競馬がまた面白くなっている。こんな面白いものを放って置くことはないのだ。

    そう思いませんか、皆さん?







    category: 競馬

    thread: 演劇的競馬論  -  janre: 学問・文化・芸術

    CM: 0 TB: 0   

    4月13日 桜花賞(阪神1600m)~剛毅・豪快・怒濤の追い込み 

                   2014桜花賞②

    ハープスターが強いことは、誰もが判っていたことだ。

    最終追い切りの気配も、堂々と歩くパドックの様子も、レース前のウォーミングアップの行き出しも、どこにも不安を抱える様子はなかった。「ああ、いい馬だな。やはり今日勝つのはこの馬だ!」と、ごく自然に信じられた。

    でも、果たしてどこまで強いのかということを、正確に読み切っていた人は少数ではなかったろうか?いや、ほとんどいなかったのかも知れない。

    「後方から追い込む」ハープスターの戦法は予想できた。それにしても、ここまで凄まじい能力であったとは・・・。

    ゲートが開いて、川田将雅ハープスターはゆっくりとターフに出た。そのまま最後方待機策。残り4Fの勝負処から馬群にとりつき、ホームストレッチで追い込めば充分に間に合う。それは、川田将雅が騎手として愛馬の能力を信じ切った判断だった。ハープスターは、思うがままに心地良く走り抜いたなら、その信頼に応えるだけの力を秘めていた。結果的に両者は、相互信頼を築き上げていたのだ。

    川田将雅ハープスターが自らの戦法である後方からの競馬の態勢を創ったとき、馬群の先頭では先行争いが激化していた。スタートが少し遅れた横山和生フクノドリームが、いっきにスピードを加速させ先頭を奪った。結果、レースは、最初の3F(600m)が33秒8、5Fはおよそ57秒のハイペースとなった。こうなると先行馬は最後に苦しくなり、差し追い込み馬が台頭するのが競馬である。大外枠から後方で自らのペースとリズムを守って進むハープスターにとっては、願ったりかなったりの展開となったのは間違いない。

    第4コーナー。川田将雅ハープスターは大外から馬群にとりついた。追い込み馬ハープスターにとっては、ここからが豪快に全馬を差し切る第2のスタート地点だった。だからこそなのか、大観衆の発する大歓声が桜咲くターフの空に響いた。

    だが同時に大観衆の間に一抹の不安が過ぎったことも事実だった。それは逃げた横山和生フクノドリームの意外な奮起にあった。ハイペースでレースの流れを作ったフクノドリームは、ゴール前200m地点でも他馬を3馬身離して、ハープスターの遥か前方で頑張っていたのである。

    だがハープスターは川田将雅の信頼を裏切らなかった。いっきにギアを上げて凄まじい加速力を発揮した。それはF1車の加速以上のロケットの推進力のようだった。「よし、伸びろ!追い込め!!」といつもなら声を発するのだが、そんな言葉を思わず飲み込んで見守ってしまうようなハープスターのパフォーマンスだった。

    残り200mを過ぎた地点で、戸崎圭太レッドリヴェールに外から並びかけ、腰を入れた川田将雅独特の騎乗フォームが決められると、もう一伸びしたハープスターは、直線だけで出走全馬を交わし切って、栄えあるG1馬となって頂点に立った。

                    2014桜花賞ハープスター①


    マイルの桜花賞で、最後の直線だけで最後方から追い込んだ桜花賞馬を私は知らない。好位から他馬に大差をつけて突き抜けたマックスビューティのような例はあるが、この日のハープスターのレースは、おそらく歴史的記念碑となるものだったろう。

    すでに秋の凱旋門賞に登録したと聞く。ハープスターの次走は、果たしてオークスなのかダービーなのか?今週末の皐月賞に挑む牡馬たちが甘いレースをするようなら、私自身はぜひダービーにどうぞと、声を大にして叫びたい。素晴らしい弾ける牝馬の出現を、今心から喜んでいる。

    走破タイムは、1分33秒3。ハープスターの上り3Fは推定32秒9。レッドリヴェールの推計33秒4ですら例年なら桜花賞馬に相応しいものなのに、それでも2着だったのは運が悪かったとしか言いようがない。

    管理する調教師松田博資は、ベガ(93)ブエナビスタ(09)マルセリーナ(11年)に続き桜花賞4勝。G1通算19勝。かつては牝馬の伊藤雄二と言われたが、桜花賞4勝を決めた今は、牝馬の松田博資と呼ばれるべきなのかも知れない。二人共に障害騎手出身だった事実は興味深い。

    それにしても、ハープスターは、確か前脚が外向していた2冠牝馬ベガの孫であり、父はディープインパクト。日本の競馬に確かな足跡を残した馬たちの結晶とも言うべき血筋である。そのことが、ファンの心に何か大切なものを訴えかけてくるような気がする。だからこそ、改めて言っておこう。ハープスターよ、世界は君を待っていると・・・。

                    2014413桜花賞ハープスター③

      




    category: 競馬

    thread: 演劇的競馬論  -  janre: 学問・文化・芸術

    CM: 0 TB: 0   

    旅の終わり~大内九段訪問 

    無事に今回の上京の最大イベントであるTV対局を終えた翌朝、由進と私は連れ立って神楽坂の大内九段を訪ねた。

    遅くまで飲み明かした前夜は、結局、東京の最高級ホテルと噂される(?)粋鏡庵ホテルの和室で熟睡させていただいた。フルコースの朝食までも御馳走になった。ありがたきかなである。

    朝、粋鏡庵ホテルを出発した直後、問題が発覚した。由進は、昨日の対局に全神経を取られていたのか、何とこの日届ける予定の一組の「怒濤流」の駒を、横浜の実兄宅に置いた旅行バッグの中にうっかり忘れてしまっていたのである。

    さてどうする?

    「宅急便で送れば明日にはつきますよねぇ・・」
    「でも、せっかくですから今朝持っていった方が・・これから横浜に回ってから神楽坂に行きましょうか?」
    「いやそれも・・ちょっと待って下さいよ」
    と、由進は携帯電話を手にして、
    「あっ、兄貴。あのさぁ、今日何か予定がある?・・うん、そう。じゃあ、オレと一緒にスカイツリーに行かないか?兄貴、まだ行ってなかったろ?」
    電話から届く実兄の答えを聞くと、
    「オレ、神楽坂にいるからそこまで来てよ。ついでにバッグの中にある駒を持って来てくれない?そう、それ。じゃあ、神楽坂で待ってるから」
    と、電話を切った。
    隣にいた私は、由進の顔を見てニヤリと笑みを浮かべながら言った。「お上手ですねぇ」

    由進の三歳上の実兄は、現役の頃は横浜の消防士で、趣味は落語。好きが高じて、定年退職して時間ができた今では、高座着を身にまとって、ボランティアで老人ホームなどを訪問して落語を一席演じてもいるのだという。「笑えば、人は元気になる」と断言する男らしい。最近、肺の調子を悪くして、元気バリバリには歩けないが、楽しいことなら何でもやってみる意欲は失ってはいない。だから初めてのスカイツリー行きの言葉に乗ってきたのだ。

    10時に大内九段宅に着くと、
    「やあやあ、遠路遥々よくいらっしゃいました」
    と、明るい笑顔で迎えてくれた。
    挨拶もそこそこに、昨日の対局の話になった。棋譜を手にした大内九段は、フンフンと呟きながら頭の中で駒を動かした。全てに目を通して、
    「由進さん、なかなかやるじゃない。いやぁ、ここまで指すとは、正直思ってなかったなぁ」
    「54桂は見えたんですけど、42龍が見えなかったんで・・・」
    「いや、結果はともかく、たいしたもんです。相手は佐藤九段でしょ?」
    「ハイ」
    「控室は大騒ぎでしたよ」と、私が報告した。
    それを機に話題が変わり、
    「で、駒は?」
    「あと30分ぐらいで届きます」
    大内九段が怪訝そうな顔をした。由進が説明した。
    「いえ、横浜から兄貴が持って来てくれることになって・・」
    そのとき由進の携帯が鳴った。
    道順を伝えると、何と大内九段が席を立って迎えに出てくれた。

    初めて会った由進の実兄は、落語好きが顔にも表れていて、どことなく面白そうな雰囲気を持っていた。
    じっと駒を見て、大内九段が言った。
    「いやいや、作る度に良くなってますねぇ、由進さん」
    「ありがとうございます」
    「将棋世界に載った駒も良かったし・・これは稽古用に使わせていただきます」
    そのとき、チラッと大内九段の手にある駒を見ながら、実兄が言った。
    「家にも弟の駒があるんです。確か5作目の駒だったかな。それとこの駒を見比べると、なんか別の人が作ったような感じがしますよ」
    全員の口から笑いが漏れた。

    それから話は盛り上がって、実兄は小噺を披露した。喋る植え木に声を掛けると、植え木が応える。でも、中に何も答えない植え木があった。よくよく訳を確かめると、それは、くちなしの植木だったとさという小噺だった。

    これに刺激を受けたのか、大内九段が得意の詩吟を披露した。「宝船」。響き良く心地良い詩吟が奏でられた。

                  DSCN1292.jpg

    やはり楽しい時間はすぐに過ぎていく。昼前に大内宅を出て、駅で私は、スカイツリーに行く由進兄弟と別れた。
    由進は、この後横浜に滞在して12日に八幡浜に帰る予定である。
    5日からの1週間の上京。多くの人と会い、多くの人に愛された1週間。飲み干した酒もほぼ日本酒5升に達したろう。
    今回、私は改めて由進の別の顔を見ることもできた。4日間も行動を共にしたからだ。明日からは、少しは仕事に戻らねばならない。それにしても、面白く楽しい日々だった・・・。

                     チ 由進 怒濤流(由進=出石作怒濤流)






    category: 将棋駒

    thread: 極私的将棋駒の快楽  -  janre: 学問・文化・芸術

    CM: 0 TB: 0