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    Tsuruki Jun<鶴木遵>の原風景 《絶対零度》

    鶴木遵の本、新しい挑戦、趣味である競馬、将棋の駒、男の手料理、めだかやミジンコ飼育、犬猫のよもやま話、など四季折々に感じたことを発信していきます。

    オークスそして日本ダービー 2012 

    埴輪馬

    5月20日。東京競馬場でオークスが行われた。

    オークスでの重要なファクターは、いっきに高速仕様と変わった馬場にあった。

    5月初旬のトライアル戦とは、明らかに馬場が違っていた。

    そしてトライアル戦を普通の時計で勝ち上がっていた馬たちが、印象度を強めて人気となり、オークスを迎えたのである。

    桜花賞馬ジェンティルドンナは、これまでマイル戦しか使われたこともなく、2400mのオークス向きとは評価されず、G1馬でありながらも、ファンの支持は3番人気に過ぎなかった。

    しかしである。主戦騎手岩田康誠の、この日までの騎乗停止もあって乗り替わった川田将雅は、中段後方からの堂々たる騎乗で、期待された役目を果たしてジェンティルドンナを2冠馬へと導いたのである。

    残り1F地点から先頭に立ち、最後の200mで他馬に5馬身の決定的な差をつけた。それは桜花賞以上の強さであり、
    それどころか、秋に3冠馬誕生の大きな期待を抱かせる勝利となった。

    弾けた川田ジェンティルドンナに、それでも追いすがろうとした内田ヴィルシーナだったが、もう余力はなかった。喘いでいるのが見て取れた。それほど、この日のジェンティルドンナは強かった。

    圧勝のジェンティルドンナが刻んだ時計は、2分23秒6。それは、従来のレースレコードを1秒7上回るものとなった・・・

    私たちは今、ジェンティルドンナだけでなく、代役を完璧なる騎乗で果たした騎手川田将雅を得た。かねてから馬を追えると定評のある川田だが、この勝利でこれまで以上に翔くだろう。また一人信頼にたる騎手を、勝利の女神は誕生させたと言えよう。

    秋には、川田自身がジェンティルドンナを別の馬で負かしに行くのかも知れない。そうなれば、より激しく心打たれる劇を、私たちは楽しめることになるのだ。



    そして1週間が経った。週の前半に雨が降り、芝は春の水と陽光を浴びていっきに伸びて、東京の馬場もAコースから外のCコースへと様変わりして、日本ダービーを迎えた。

    大レースの前にコースや芝の状態をいじる事に、私は反対なのだが、開催を担うJRAの馬場に対する基本方針は明らかにされてはいない。

    したがってファンが独自に解釈するしかないのだ。オークスの高速馬場から、1週間でどう変わったのかを判断できるほど、一般ファンは競馬漬けの生活を送っていないし、広い庭の芝の管理もしてはいないだろう。それを斟酌せよというのは、無責任である。ファンサービスに逆行した態度でではないのか?

    この時期は、一雨で芝は逞しく伸びきって行くものだ。成長の勢いは止まらない。とすれば、単に高速馬場というだけでなく、伸びた芝の影響で、力も必要な馬場になる筈だ。おそらくオークスのレコードタイムは、ダービーでも破られることはない。

    では、そのとき力を発揮して走りきる馬はどの馬か?というのが、ダービーの最大の謎だった。

    そこにトライアル戦で活躍した馬たちのオークス惨敗というファクターも入り込む。オークスは、桜花賞の1・2着馬が、力通り1・2着だった。

    ファンは、皐月賞上位馬と、前哨戦の上位馬を支持し、中でも皐月賞1・2着馬を手厚く支えた。

    ゲートが開くまでは、その見解は正しかったろう。

    前半5F 59秒1のほぼ平均ペース。

    となれば、中段より前に行った馬たちの、残り5F~4F地点の勝負処からのサヴァイヴァル戦となることは、もはや誰の眼にも明らかだった。

    しかし皐月賞1・2着馬の内田ゴールドシップと福永ワールドエースは、中段より後方のポジションで互いにマークし合っている。活きたレースにまるで参加してはいない。それでも勝つと二人は思っていたのだろうか?

    この日、内田博幸の手綱も、福永祐一の手綱にも、ダービーという大勝負に挑む気構えと冴えがなかった。

    何を成そうとしたか判らぬこんな騎乗では、馬に申し訳ないと、心からの謝罪が必要だろう。

    最後に伸びて来ただけに、つまらない騎乗といわざるを得ないのだ。

    私自身は、4コーナーからままよと攻めきったC・ウィリアムズのトーセンホマレボシ、きちんとレースの流れに乗って勝負を賭けた蛯名正義フェノーメノ、それにもまして、まるで自己破壊を起こしたように、脇目も振らず狂って馬を追い続けた岩田康誠ディープブリランテの騎乗に圧倒的な色気を感じてならなかった。

    勝ったから、上位に来たから言うのではない。何をしたら馬の個性を引き出せるかを意識化して、その通り手綱を導いてやるその日の騎手の技量に、色香を感じるのだ。

    もっとも色香を発散しているからこそ、上位に来ているのだろうが・・・

    騎手は、曲がりなりにも馬上の表現者だと、私は最初から言い続けている。

    かつて野平祐二師も語り続けた。「騎手はアーティストたれ」と。

    私は、その野平祐二師の晩年に、取材を重ねて教えを受け続けていた。ひとつのレース、一人の騎手のあるべき姿を。野平祐二師は丁寧にしかし熱く語ってくれたし、私も遠慮なく私の思いをぶつけもした。
    夏のカリフォルニア・デルマーで一緒に過ごしたこともあったし、慶応病院にお見舞いに伺ったこともあった。「騎手はアーティストたれ」は、彼の残した最高の遺言だと、今でも信じている。

    つまり、表現のない表現者、表現を意識できない表現者など、この場を去って、どこかへ消えてなくなれということなのだ。

    これは、どのジャンルでも言える厳粛な掟である。

    今、その人が他者に伝えられる表現を、全身全霊を込めて発揮することで、感動が形となって伝わるのだ。

    間違ってはならないのは、表現というのは、決して小賢しいごまかしではないことだろう。

    挑んで負けることを怖れるな。負けるなら美しく負けるんだ。勝つときは不様であってもいい。

    そんな思いで、血圧を高くして、私の2012年日本ダービーは終わった・・・

    騎手岩田康誠よ、君はゴール前でいかにも不様だった。ハナ差の2着に敗れた蛯名正義より狂っていた。でも、それが美しかった・・・私は、君から、これから先10年いやそれ以上の長きに渡って語り続けられる人生の想い出を貰ったような気がする。ありがとう・・・
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    category: 競馬

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    [優駿]編集長福田喜久男のこと 

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    JRA発行誌「優駿」の4代目編集長(ただしJRA内部にこの役職はなく、いわゆる通称であるが)として、一筋に40年以上の長きに渡って「優駿」と共に生きてきたのが、福田喜久男である。

    3年前にすい臓癌で、13時間に渡る手術を順天堂大学病院で受け、何とか生還した。

    2年前に私は、まだ顔色も優れなかった福田喜久男から個人的に相談を受け、1冊の本創りを陰から手伝うことにした。

    私自身が大病の体験があり、病と闘う人間の頼みは無視できなかったのだ。命がかかる病を経ると、人は謙虚になって、生かされている人生の時間を考えるようになる。そのとき本当の魅力が現れてくる。丈夫な健康は、実は人を傲慢にするとも言えるのだ。その後は、同じ患い者同士、実に充実したコラボの時間を共有できたのだった。

    それから1年半かけて、このたび1冊の本が出版される運びとなった。

    タイトルは写真の通りである。

    『遠くて近きは人馬の仲 優駿4代目編集長の競馬放談記』福田喜久男著~ベストブック社~定価1470円

    「優駿」に係わった人たち、「優駿」を取り巻いた歴史的時間、毎月の「優駿」がどのように生まれたのか・・・
    など、昭和から平成そして今に至る競馬史が、福田喜久男の眼を通して、世相を踏まえながらまとめられている。

    出版社や担当編集者には、完成した今でもいろいろと注文があるのだが、しかし内容に関しては、読んでみると、これがなかなか面白くて、元気が出る内容になっている。

    そもそも私を競馬の読み物の世界に引き入れたのは、福田喜久男その人なのだ。いわば罪深い師匠筋となる。まあ
    陰のお手伝いなら、ご恩返しも良いことだろう。

    出来上がるまでには、それこそいろいろなことがあったが、それもこれもが面白さの源泉となっている。詳しい話は追々していくつもりである。

    興味のある方がいらっしゃったら、ぜひ御一読下さいます様、おん願い奉ります。

    今週には書店に並びます。アマゾンでも入手できますので、どうかよろしく。

    何と私自身の若かりし頃の写真もあります。本邦初公開です。

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    期待する若き手腕~住谷の駒 

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    実は、2年ほど前に私は、住谷の駒を入手した。

    彼のHPを見て、即座にその手腕に舌を巻いたからだった。

    まだ20歳にもならぬ年齢なのに、彫の確かさは見事と思えたのだ。

    2ヵ月後、影水風字母紙によって作られた巻菱湖が届いた。

    あっ、今思い出した。あのときは、千葉で唐突に急ブレーキをかけた前の車を避けきれず、軽く追突したんだったっけ。こちらの車は何事もなかったが、前の車から降りてきたのは、薬指と小指が第1関節からない男で、それをチラチラ誇らしげに見せつけられて、ちょっと大変だったなあ・・・

    ともあれ、それから2ヶ月、使いながらじっと駒を見続けたのだが、私には不満が湧いたのだった。

    勿論、巧いのである。でもそれ以上の何かが、私の心に沸き起こっては来ない。

    使っていると、おそらく急いで作ってくれたからだろうが、飛車や角や銀将の漆が少しはげてもきたし、また字母が、住谷自身が工夫したものではなく影水風であったこともあり、じっと見続けていると、少し飽きてしまったのだった。

    人の心には、人生の時間に刻まれた襞がある。襞の陰影によって、他者に伝わる味わいが醸し出されるのだ。駒の大きな魅力も、そんな味わいが浮き上がってくることにあると、私は信じている。

    だからその後は、この駒を自分の中で封印していた。そこまで見とれなかった自分を恥じてもいたからだった。

    しかし今でもときおり、住谷のHPは見ている。

    もしこれからさき、彼が切ない恋を体験したり、巧さを超えるアートの本質に気づいたりしたら、いや何よりも、誰かのものではない自分自身の字母に目覚めたとしたら、その若さとその手腕があれば、いっきに変わる可能性を捨てきれなかったからだ。

    そうなって欲しいものである。

    京都の学校を卒業した今、おそらく住谷は、アーティストたるか或いは一介のアルティザンに終わるか、その岐路に立っている。そう思う。私は、その彫の腕を持って(過去にこの若さでここまで彫れた駒師がいったい何人いるのだろうか?)ぜひ世を圧倒するアーティストの道を歩むことを期待したい。

    ときめくような恋をしてください。そして振られてください。それだけでも、作品を創る心は豊かになります。私も、薬指と小指の欠けた相手に追突して、人間が大きく変わりましたから・・・

    《注》  この駒は、もともとは彫駒でしたが、どういう訳か(私の手入れが悪かったのか)すぐに漆が剥げてきたこともあって、ちょっと感情的になった私自身が昨年サビ漆で埋めてしまいました。本来お見せしてはいけない駒かもしれませんが、そこのところはご寛容下さい。
    なお、作者の名誉のために申し添えますが、埋める前の彫は、もっとシャープで光っていました。第32作です。




    category: 将棋駒

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    ダービーの季節~石山写真館その③2011年回顧 

    110529T11KI030.jpg 110529T11KI035.jpg若さゆえの不敵な笑みに、喜びが満ちています。池添謙一はダービー史に、その名を刻印したのです。3冠馬への最も大きな関門を越えた瞬間です。



    思えば、雨の馬場をものともせず、豪快に突き抜けたオルフェーブルでした。

    あの時、小賢しい耳覆いの覆面など、装着してはいませんでした。

    泥にまみれて激走する姿は、神々しく異彩を放っていました。

    そこにサラブレッドの美が存在していました。

    今年、栄光の中に浮かび上がるのは、果たしてどの馬となるのでしょうか?

    5月27日。勝負の瞬間が訪れます。

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    category: サラブレッド美の世界~by石山写真館

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    春クラシックシーズンですので~石山勝敏写真館2011春回顧 

    今日の午後、カメラマン石山勝敏から追加の写真が届きました。

    去年2011年、春G1戦でした。

    今、競馬はピークの季節を迎えています。そこで考えました。2011年春G1を回顧してみようと。

    で、本日石山写真館のオープニングデイとします。不定期ですが、今後とも続けていきますから、皆さん、ぜひ競馬の面白さに触れてみて下さい。

    臨場感溢れる写真は、命を賭けてゴールへと駆け抜けるサラブレッドの、気高い息づかいを描き出しています。この機会に、ぜひご堪能下さいませ。


    (1)桜花賞~マルセリーナ 騎手安藤勝巳

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    (2)皐月賞~オルフェーヴル 騎手池添謙一

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    (3)春天皇賞~ヒルノダムール 騎手藤田伸二

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    (4)NHKマイル~グランプリボス 騎手C.ウィリアムズ

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    (5)ヴィクトリアマイル~アパパネ 騎手蛯名正義

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    (6)オークス~エリンコート 騎手後藤浩輝

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    いかがでしたか?

    私のブログが始まったのが、昨年9月末からでしたので、春クラシック戦は空白でしたから、この機会と思って石山写真館開店に乗じた訳です。

    血管が浮き出るような競走馬の激走を、お楽しみいただけたでしょうか?

    次回からも石山写真館に乞うご期待です。








    category: サラブレッド美の世界~by石山写真館

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